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幕間 離別の日。奇跡が生まれた日。

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「ミーナ、ごめんなさいね。お母さんはもう、貴方と暮らせないの……」

 雪が舞う、冬の日。ラナラ邸の中。美しく優しさに溢れた一人の女性が、赤ん坊を抱きながら涙していた。
 ファフィナ――ミーナの母親は旦那だった男と交渉し、娘の将来を守るため家を去る道を選んだのだ。

 本当は、大事な娘と一緒に暮らしたい。
 本当は、大事な娘と話しをしたかった。

 けれどこのまま自分が抵抗してしまえば、娘の居場所さえもなくなってしまう。
 苦渋の決断、だった。

「セドリック・ラナラ様。この子は、まだ物心がついていません。新たな奥様を本物の母親と教え、大事に育ててくださいね」

 こうすればせめてミーナだけは、幸せに暮らせる――。
 ファフィナは敢えて、自分の存在を消す選択をした。

「うむ、約束する。この子だけは、きちんと育てよう」
「……お願い、します。…………ミーナ、さようなら。お母さんは遠くから、貴方を見守っているわ」

 ファフィナは最後にミーナを優しく強く抱き締め、セドリックに託して椅子から立ち上がる。


 娘の幸せを祈る際に、彼女が座っていた椅子。
 これがのちに、愛する娘の人生を大きく変えることになるのだが――。
 それは、偶然なのだろうか? あれは、偶々起きた出来事なのだろうか?
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