自分のせいで婚約破棄。あたしはそう思い込まされていました。

柚木ゆず

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第6話 反撃その3(1)

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「なっ!? ミーナっ!! 今のお前に、ノックなしで入る資格は――」
「貴方に、偉そうに喋る資格はありません。逆らうと貴方の大切な本物の家族が自殺をしてしまうので、素直に従ってくださいね」

 顔を真っ赤にして怒鳴っていた父は――セドリックさんは、背後にいる二人を見るや態度が激変。トマトのような色をしていた顔は、絵の具の青のようになってしまいました。

「ミーナ……。お前、まさか……」
「はい、催眠術を使いました。実は約三週間前に偶然解けて、ずっとお芝居をしていたのですよ」

 折角、ですからね。毎晩ソールさんに教わっていたことやララとラーティアさんにしたこと、過去を全て知得したことなどを細説しました。

「……バカな……。状況を理解した上で、あの日々を過ごしていたなんて……」
「今まで散々虐げられていたのですから、そんな苦痛は今更、ですよ。さて、セドリックさん。これから一つ質問をするので、正直に答えてくださいね」

 もう一度ラーティアさんとララを一歩前に動かし、改めて人質の存在を強調して続けます。

「あたしの、本物のお母様。あの方がどこへ行き、その後どうなったかを知ってはいませんか?」

 あたしを守るために自分を犠牲にしてくれた、本当の親。今は何よりも、その情報が欲しいのです。

「まさか。野盗などの仕業にして、殺害してはいませんよね?」
「しっ、してはいない! その計画はあったが、当時は父上と母上――お前の祖父母が健在で、あれ以上は目を盗んで動けなかったんだ」

 なるほど。おじい様とおばあ様がいなかったら、即反故にするつもりだったのですね。
 予想通り、悪魔のような生き物です。

「アイツ――ファフィナがどこへ向かいその後どうしているかは、全く分からない。すでに興味がなかったからな」
「そう、ですか。お母様の実家、ご両親や御兄弟などはどうされているのですか?」
「……ヤツの両親は結婚前に他界していて、兄や妹はいなかった。親族は確か五人いたはずだが、追放の際に全員俺が買収をした。そのため完全に縁が切れていて、彼らを当たっても手掛かりはない」

 そんな人達と、関係を戻すはずがありませんもんね。残念ながら、手掛かりを得られるものはないようです。

「でしたら……。もう、このお話は構いませんね」
「そ、そうか。ならばこれからお前は、どうするつもりなんだ……?」
「そんなの、決まっています。これからあたしは、貴方に罰を与えるのですよ」

 どうしてお母様を捨てたのですか!?
 貴方は何も感じなかったのですか!?
 愛とは、そんなにも簡単に消えてしまうものなのですか!?
 なぜお母様との最後の約束を守ってくれなかったのですか!?

 問いただしたいことは多々ありますが、どうせ返ってくるのはしょうもない台詞だけ。無意味にストレスを溜める趣味はありませんので、その怒りは全て『お返し』に注ぎます。
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