自分のせいで婚約破棄。あたしはそう思い込まされていました。

柚木ゆず

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第6話 反撃その3(2)

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「ば、ばつ……。それは、一体……」
「内容は、今は秘密です。明後日ある、婚約の発表の場で――大好きな家族の晴れ舞台で色々と行う羽目になるので、全て終わった際にご自分で確認してくださいね。事が済んだら、正気に戻るようにしておきますから」
「おっ、俺にも催眠術をかけるつもりなのか……っ。たっ、頼むっ! やめてくれ!!」

 催眠術の怖さ恐ろしさは、熟知していますもんね。血相を変えて、顔の前で両手を強く合わせました。

「金でもなんでも、欲しいものをやろうっ! 望むものを望むだけやろうっ! だからどうかっ! それだけはやめてくれ!!」
「お母様との約束を反故にした人のお願いなど、聞くつもりはありません。大事な家族の命が惜しければ、このコインを見つめてくださいね」
「……妻と娘の命には、代えられん……。お前に従う……っ」

 取り乱していたセドリックさんは、すぐに頷きを返しました。
 相手によって、ここまで態度が違うだなんて。相手が違えば、こんなにも必死に想えるだなんて。
 せめてちょっぴりでも、その優しさをお母様に注いでくれていたら――。つい、そう思ってしまいます。

「…………本当に、身勝手な人ですね。…………貴方もフェリクス様も、どうして相手がいるのに他所を見てしまうのでしょう……」
「み、ミーナ……? ブツブツ、何を言っているんだ――いやっ。言っているん、ですか?」
「…………独り言、です。それでは行いますね」

 彼の前でコインを垂らし、1、2、3、4、5。そうしてボーっとなった彼にいくつか刷り込み、こちらの仕込みも無事終わりました。

「………………ふぅ。これで明後日、まとめてお返しをできますね」

 ラーティアさん。ララ。お父様。そして、フェリクス様。楽しみに、していてくださいね。
 貴方達が用意した最高の舞台で、とても面白い事が起きますから。
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