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第7話 ビアンカが目覚めた後に起きていた出来事 俯瞰視点

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「父上、僕の伝書鳩が帰って来ているそうですね。なんと記されていましたか?」

 ビアンカが意識を取り戻し、沢山の幸せの涙を流し、再び眠りについたあとのことでした。サイモンは城内にある『王の間』へと向かい、そこにいる父に――王に、進捗を確認していました。

「現在国境を越え、現在道程の3分の2を過ぎたそうだ。時間を鑑みると、目的地に到着しているだろうな」
「そうでしたか。では近々、大切な家族と再会できそうですね」

 ――みんなのために、この髪の毛を届けたい――。
 ――……みんな、ごめんなさい……――。
 ――頑張ったけど……。無理、だったよ……――。

 など。サイモンはビアンカのうわごとを聞き、

 孤児院は困窮し、苦しい生活を強いられていたこと。
 家族は国で唯一の味方で、ビアンカを庇い続けたため白い目で見られるようになっていたこと。
 お互いに、追放による別れを酷く悲しんでいたこと。

 これらを知りました。ですので父や母――王や王妃と相談し、『家族』の救出作戦を遂行していたのです。

「うむ。秘密裏・・・の大移動故に以降の進みはゆっくりとなるだろうが、遅くとも4日後には会えるだろう」
「ええ、来週――次の月曜日には、いくつもの笑顔が咲きそうですね。でしたら僕はその間に、新たな住居を用意しておきましょうか」

 今日ビアンカと共に移動をしようとしていた、新たな家。あれは、ビアンカだけのものではありませんでした。
 こうしてその日から4日後に、無事この国へとたどり着いていたビアンカの家族達――後続の7台に乗っている42人を含めた、計43人の『一家』が過ごせる場所を――新たな孤児院を、目指していたのです。
 そのため、

『……これだ……! これだ……!! 間違いないっ‼ こいつを出せば、ビアンカは100パーセント首を縦に振る!! どんなに俺たちを忌み嫌い、新たな人生に満足していたとしても、だ! 縦に振らざるを、得なくなるぞ……‼』

 そんな考えは、大間違い。祖国だった場所に家族はもう居ないため、その脅しはまったく意味を持たないのでした――。

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