前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず

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第9話 出発して3日後~到着~ エレーヌ視点(2)

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「え、エレーヌお嬢様? いかがなされましたか?」
「……お顔の色。青ざめていて、心配です」
「い、いえ、なんでもありませんよ。少し疲れただけでして、ちょっとだけそちらでお休みしますね」

 メイルとミアに微苦笑を浮かべた後、私は傍にあったベンチに腰を下ろしました。そしてこれ以上二人に心配をさせないように、心の中だけで眉を寄せます。

((4日前に感じた、あの衝撃は……。ノエルの…………前世の部分を、震わせたのですよね……?))

 改めてあの日に起きた出来事を、思い返してみます。

 あの資料に――紙に触れた瞬間、これまで感じたことのない――強烈な静電気のようなものが発生して、それは指、腕を通って、胸の奥まで走り抜けました。

 …………やっぱり、間違いありません。アレは前世であるノエルの記憶を、揺さぶりました。

((あの資料は、ロッピアンヌ湖についてのもの。他のことは、なにも記載されていなかったので……))

 何かがあるのは、ココ。それしかあり得ません。

((…………。けれど……))

 実際に調べてみたら、ロッピアンヌ湖には何もなかった。
 南エリア、東エリア、北エリア、西エリア。どこにも見落としている場所はなく、四区画全てを歩いて回ったので、何もないのだと断言できます。

((でも……))

 それは、納得はできません。
 なにもないのであれば、あのような不思議な出来事が起きるはずがないのですから。

((っっ! 何なのよもうっ!! ハッキリしないなんてっ、イライラするわっ!!))

 以前の私ノエルは、良くも悪くも直情的な一面があります。
 欠点の1つ、意外と気が短い。前世の問題点がついつい出てしまい、両方の手のひらに爪を食い込ませてしまいます。

((ああもうっ、どうなっているのっ!? なによこれっ⁉ ロッピアンヌ湖に何かしらがあるはずなのにっ、なんにもないってどういうことよ!?))

 前世ではこの性質で数回、侍女に迷惑をかけたり失敗をしたりした経験があるのですが――。今は『わたくし』に加えて、『私』の性格もあります。そのため深呼吸であらぶった心を落ち着かせ、私は自分自身に対して苦笑いを向けました。

((ああして心の中で叫んだことで、頭の中がスッキリしました。怒った自分を落ち着かせるのはヘンテコですが、役に立ちますね))

 おかげで混乱も収まり、それによって、あることに気が付きました。

((絶対にあるはずなのに、可能性がある場所を全部調べても見つからなかった。それは、大間違いです))

 私にはまだ、調べていない場所がありました。
 ロッピアンヌ湖の、中。キラキラと輝いていた、ブルーの水の中。
 そちらは未確認で、もしかするとそこに手がかりがあって――

「失礼。お話しをしても、よろしいでしょうか?」

 ――新たに気付いた場所を、どうにかして調べよう。そう思って、ベンチから立ち上がっていた時でした。
 右手側の方向から不意に、ハープを奏でたような心地の良い声が響いてきました。

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