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第7話 元婚約者の来訪 クラリス視点(2)
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「マリエットの愚行は、お前も知っているはずだ。あんな真似をした、実はまったく俺に相応しくなかった女。アレとの縁を切るために、どうしても1億が必要なんだ」
世間体、なにより自分の幸せのために、婚約破棄をするつもりだった。けれどルアール家に騙されてしまっていて、そうするには1億ギルが必要。でもどうやっても自力では工面ができないため、わたしに――ティレア家に目をつけた。
相変わらずの上から目線によって、ここに来るまでの経緯を知ることができました。
「そうでしたか、ルアール様との婚約を破棄されたいのですね。……あの日口にされたあの言葉は、嘘だったのですね」
「あの言葉? お前は何を言っているんだ……?」
「『俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ!』、そう仰ったではありませんか。あの御意志は、この程度のことで消えるものだったのですね」
あれほど熱弁して散々持ち上げていたのに、今は悪口のオンパレード。ソレは、飴細工のように脆い決意だったのね。
「『この程度』だと!? 有力な侯爵家の関係者にっ! 侯爵夫人となる女にっっ‼ 平手打ちをしたのだぞ!? これのどこがこの程度なんだっ!?」
「貴方はあの日、どんなことがあっても愛し護り続けると誓っていました。『どんなことがあっても』なのですから、この程度なのですよ」
平手打ち。それは大問題です。
けれどこの方は、ハードルを高く設定していましたので。そうなるのです。
「『真の貴族は約束を違えない』などとも仰っていましたが、あっさりと違えてしまいましたね。ということは、貴方様は真の貴族ではなかったようですね」
「っっ! うるさいっ!! 黙れっ!! お前に何が分かるんだ!! 分かったことを言うなっっ!! 黙れっっ!!」
クレランズ様は私達の間にあったテーブルに拳を落とし、「話を戻すぞ!」と睨みつけてきた。
これまでもそうだったけれど、これまで以上に、頼む側の態度じゃないわね。ということは、恐らくこの人は――
「とにかく、明日までに1億ギルが必要なんだ! お前達は商会で荒稼ぎをしていて、1億ぐらいポンと用意できるだろうっ! 元婚約者のよしみで貸せ!!」
「元婚約者、そちらはプラスではなくマイナスな効果をもたらすものですよ。散々バカにして、あんな形で婚約を解消した人。そんな人間に、手を差し伸べるとお思いですか?」
「いや、思わない。だから、お願いなんてものはしない」
――言動から推測していたら、思った通り。彼は腹黒く犬歯を覗かせ、今度は予想通りのことを口にしたのだった。
「これは、命令だ。……商会や家、お前が愛する家族に大きな悪影響を及ぼされたくないのであれば、大人しく1億ギルを出せ」
世間体、なにより自分の幸せのために、婚約破棄をするつもりだった。けれどルアール家に騙されてしまっていて、そうするには1億ギルが必要。でもどうやっても自力では工面ができないため、わたしに――ティレア家に目をつけた。
相変わらずの上から目線によって、ここに来るまでの経緯を知ることができました。
「そうでしたか、ルアール様との婚約を破棄されたいのですね。……あの日口にされたあの言葉は、嘘だったのですね」
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「『俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ!』、そう仰ったではありませんか。あの御意志は、この程度のことで消えるものだったのですね」
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平手打ち。それは大問題です。
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「っっ! うるさいっ!! 黙れっ!! お前に何が分かるんだ!! 分かったことを言うなっっ!! 黙れっっ!!」
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これまでもそうだったけれど、これまで以上に、頼む側の態度じゃないわね。ということは、恐らくこの人は――
「とにかく、明日までに1億ギルが必要なんだ! お前達は商会で荒稼ぎをしていて、1億ぐらいポンと用意できるだろうっ! 元婚約者のよしみで貸せ!!」
「元婚約者、そちらはプラスではなくマイナスな効果をもたらすものですよ。散々バカにして、あんな形で婚約を解消した人。そんな人間に、手を差し伸べるとお思いですか?」
「いや、思わない。だから、お願いなんてものはしない」
――言動から推測していたら、思った通り。彼は腹黒く犬歯を覗かせ、今度は予想通りのことを口にしたのだった。
「これは、命令だ。……商会や家、お前が愛する家族に大きな悪影響を及ぼされたくないのであれば、大人しく1億ギルを出せ」
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