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第7話 元婚約者の来訪 クラリス視点(3)
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「お前も知っているだろう? あの女のせいで立場は悪くなってきてはいるものの、ウチは顔が広い。こんな状況下でも、容易に大ダメージを与えられるんだよ」
お前がいつも『尊敬している』『愛している』と言っていた、父親や母親。大切な人が自分のせいで苦しむのは嫌だろう?
そうなりたくなければ、貸せ。
思った通り彼は、あの頃のように脅迫を行ってきた。
「商会は信頼第一で、そこを失えば崩壊はあっという間だ。瞬く間に全てが『無』と化してしまうが、それでもいいのか? よくないよな?」
ここも、あの日と同じ。下卑た勝ち誇った顔で、醜い言葉を紡いでゆく。
「クラリス。最悪を招きたくなければ、従え。速やかに、父親に『1億出して』と伝えろ。いいな?」
あの日、1年半前。わたしはこの表情、声に屈し、このあと悔し涙を零して頷いた。
でも。
ここからは、あの日と同じじゃない。
「お断りします。そちらの要求は呑めませんよ」
わたしの瞳から悔し涙が零れることはなく、かつて縦に動かした首は横方向へと振った。
「ははっ、冗談だと思っているのか? この脅しは本物で――」
「ちゃんと、本気だと思っていますよ。……クレランズ様。今のわたし達は、あの頃のわたし達とは違うのですよ」
頭の悪そうな笑い声を遮り、続ける。
「現会頭のお父様、現副会頭のお母様、次期会頭となるわたし。そして、スタッフの方々。一丸となって更に商会を成長させ、その結果確固たる地盤が生まれております。ですので外部からの攻撃では、ビクともしません。仰られていたような、『無』となる未来は起こり得ないのですよ」
あの脅迫を、解消の真相を、わたしはお父様達に伏せていた。だけどきっと、想像以上に悔しかったのだと思う。ある夜うなされた際のうわごとで無意識的に発し、お父様とお母様は気付かれた。
そしてお二人は自分達の力不足を嘆いてくれて、悲劇が二度と起きないように必死になってくれた。更にはスタッフの皆さんも続いてくれて、だから、わたしも頑張らないと立ち直れた。
だから全員で前へと走り続けて、何ランクものステップアップが実現したのです。
「傍目には収益以外に変化がないように見えるでしょうが、何段階も進化をしているのですよ。ですのでそういった脅しは恐ろしくはありませんし、もう一つ。こうして跳ね返せる理由があります」
事前にお約束をしていたから。わたしは「お願い致します」と声を出し、合図をお送りする。
そうしたら、応接室の扉がゆっくりと開いて――
お前がいつも『尊敬している』『愛している』と言っていた、父親や母親。大切な人が自分のせいで苦しむのは嫌だろう?
そうなりたくなければ、貸せ。
思った通り彼は、あの頃のように脅迫を行ってきた。
「商会は信頼第一で、そこを失えば崩壊はあっという間だ。瞬く間に全てが『無』と化してしまうが、それでもいいのか? よくないよな?」
ここも、あの日と同じ。下卑た勝ち誇った顔で、醜い言葉を紡いでゆく。
「クラリス。最悪を招きたくなければ、従え。速やかに、父親に『1億出して』と伝えろ。いいな?」
あの日、1年半前。わたしはこの表情、声に屈し、このあと悔し涙を零して頷いた。
でも。
ここからは、あの日と同じじゃない。
「お断りします。そちらの要求は呑めませんよ」
わたしの瞳から悔し涙が零れることはなく、かつて縦に動かした首は横方向へと振った。
「ははっ、冗談だと思っているのか? この脅しは本物で――」
「ちゃんと、本気だと思っていますよ。……クレランズ様。今のわたし達は、あの頃のわたし達とは違うのですよ」
頭の悪そうな笑い声を遮り、続ける。
「現会頭のお父様、現副会頭のお母様、次期会頭となるわたし。そして、スタッフの方々。一丸となって更に商会を成長させ、その結果確固たる地盤が生まれております。ですので外部からの攻撃では、ビクともしません。仰られていたような、『無』となる未来は起こり得ないのですよ」
あの脅迫を、解消の真相を、わたしはお父様達に伏せていた。だけどきっと、想像以上に悔しかったのだと思う。ある夜うなされた際のうわごとで無意識的に発し、お父様とお母様は気付かれた。
そしてお二人は自分達の力不足を嘆いてくれて、悲劇が二度と起きないように必死になってくれた。更にはスタッフの皆さんも続いてくれて、だから、わたしも頑張らないと立ち直れた。
だから全員で前へと走り続けて、何ランクものステップアップが実現したのです。
「傍目には収益以外に変化がないように見えるでしょうが、何段階も進化をしているのですよ。ですのでそういった脅しは恐ろしくはありませんし、もう一つ。こうして跳ね返せる理由があります」
事前にお約束をしていたから。わたしは「お願い致します」と声を出し、合図をお送りする。
そうしたら、応接室の扉がゆっくりと開いて――
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