俺はお前ではなく、彼女を一生涯愛し護り続けると決めたんだ! そう仰られた元婚約者様へ。貴方が愛する人が、夜会で大問題を起こしたようですよ?

柚木ゆず

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第11話 その後 ジェラールSide ~これから発生する、2つの出来事~ ジェラール視点(3)

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「ふ、ふふふふふ。ふふふふふっ。そうか……! その手があった……!!」
「じぇ、ジェラールよ……? どうした、のだ……?」

 父上が時間をかけて体を起こし、困惑混じりで瞬きを行った。
 それはそうだっ! 尤もだっ! つい数秒前まで絶望していた男が、飛び起き喉を鳴らし始めたのだからなっ!

「大きなダメージを負ってしまうものの、最悪を防ぐ方法が降りてきたんだよ。父上、ソレを聞きたいかな?」
「もっ、勿論だともっ!! 聞きたいに決まっているっ! 教えてくれっ!! 一体なんなのだっ!?」
「……奇跡的に、俺の中に生まれた作戦。それは、『逃げ出す』だ!!」

 とにかく金になるものをかき集めて馬車に詰め込み、この屋敷を出る。そうして俺達は移動中に起きた事故で死亡したことにして、身分を捨てて遠くへ――隣国へと移動し、新たな名を使って生まれ変わる。
 こいつが、

『……………………もう、いやだ……。こんな状況、いやだ……。逃げ出し、たい……』

 という呟きにより降りてきた、妙案だ!!

「名を捨てるは、貴族籍を失うを意味する。それは深いダメージを負うものだが、どうせマリエットのせいで評判は地に落ちていく。どんどん肩身が狭くなっていってしまい、挙句には被害者の婚約者――ハネットス侯爵家の反感も買うんだ。悪影響の量は、さして変わらない」
「う、うむ……。その通りだ……っ」
「対して俺の案を実行した場合は、リセットできる。詰め込んだものを換金すれば大金となり、新生活の土台をしっかりと作れて、ちゃんと再起を図れるんだ!」

 身分を放棄するのだから、親族の目を気にする必要はない。代々伝わっている高価な品でも持ち出せて、間違いなく大きな『資金』が手に入るのだ……!

「おまけに俺はマリエットとの縁を切れて自由に恋をできる上に、父上はゴミ子爵家如きにペコペコしなくてもよくなる。現状では一番の手段とは思えないか?」
「ああっ! 最高の手段だっ!!」

 問いかけると言下絶賛が返ってきて、決まり。この作戦の決行が、決まった。

「国内で行方をくらませてしまったら、国境を越えられなくなってしまう。父上、他国に移動する予定はなかったか?」
「あるぞ。5日後に、会談を行う予定が入っている」
「なら次期当主として俺も同席するようにして、実行はその日で決まりだな。……その間マリエットとここで過ごすのは苦痛だが、成功のためだ。我慢するか」

 そうして俺達は準備を始め、どうにか忌々しい時間を乗り越え、隣国へと向けて出発。そうして越境した俺達は馬車を降りて谷へと落とし、ジュラ―ルとケヴィンという名を捨てたのだった。

 よーしっ、よしっ! 上手くいったぞ!!
 新しい人生っ。幸せに満ちた人生の、始まりだ……!!

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