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プロローグ(3)
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『僕には、もっと高い身分の人間――第一王女がふさわしい。第四という低身分のお前との婚約は、破棄しよう』
『ノルスっ、落ち着いてっ! 今のアナタは周りが見えなくなってるわっ!』
『ふん、なにを言うんだい? 周りならこの通り、ちゃんと見えているさ』
『そういう、視覚的な意味じゃないわよっ! 一度冷静になって! 冷静になりなさいよっ、このバカっっ!!』
『…………は? バカ?』
冷たい目。氷のような冷えきった眼で、彼は私を見下ろした。
『今……。バカと、言ったのかい? この僕に、バカと言ったのかい?』
『ええそうよっ! 権力に呑まれたら、ロクなことにならないわっ。絶対に破滅へと進むようになって、アナタの人生が台無しに――きゃあっ!?』
私は乱暴に突き飛ばされ、地面に尻餅をついてしまう。
『ミファっ! ……ノルス、貴様はあの日の恩を忘れてしまったのか……っ? お前はあの日ミファが助けてくれなかったら、死んでいたんだぞ!』
『ああ、あの時の事は感謝しているよ。でも僕は、助けてとは言っていない。ミファが勝手に助けて、勝手にここに招き入れただけさ』
『貴様……っ。あの時の自分の言葉を、もう忘れてしま――』
『ティル、お前もうるさいよ。……お前達は勇者様に生意気を言ったから、そうだな。この国から追放するか』
王族の追放は身分の剥奪を意味するため、そんな理由での追放は実現不可能なこと。しかしながらお父様とお母様は勇者に媚を売り、ご機嫌取りのためにそれを受諾。私とティルは一か月後に、この地から最も離れた場所に転移されられる羽目になってしまった。
――そして今日、ついにその日がやってきて――。私達は城内にある、お兄様が能力で作り出した転移用魔法陣の上に立たされている。
「ミファ、ティルも。お別れの時が来たな」
背後にお父様を従え、左右には妻となったお姉様と第二夫人である隣国の第一王女を侍らせ、ノルスがほくそ笑む。
今やどの国の王も勇者にお近づきになろうと必死だし、王女達は『勇者』の肩書を持つ美少年にメロメロ。その結果来月には第三夫人、再来月には第四夫人が誕生する予定となっていて、その後も毎月のように各国の第一王女が嫁いでくるらしい。
「一応は幼馴染の二人と会えなくなるのは、寂しいよ。お前達も、偉大な勇者様と会えなくなるのは寂しいだろう?」
「…………はい。ノルス様と会えなくなるのは、寂しいです」
ノルスに対しては『様付け』と『敬語』にしないと、私達の傍にいる兵士が私達を串刺しにする。だから私もティルも、大人しく頷く。
「本当はこんな真似をしたくはなかったんだけど、僕に楯突く事は重罪だからね。死刑にならなかっただけ感謝してほしいね」
「まったくですわ。愚妹とその従者に自衛の剣と服を与えただけでも、ノルス様はお優しい方ですわね」
「あたしも、そう思いますわ。あたしたちは素敵な人のモノになれて、ホントに幸せ」
お姉様と第二夫人が嘲笑し、ノルスの頬に左右から口づけをする。
「それに引き替えミファは、これから身分を剥奪されて追放される。最悪な人生のスタートね」
「残りの人生は、ノルス様に歯向かったことを後悔しながら生きるといいわ。バイバイ、元婚約者さん」
お姉様と第二夫人は口角を吊り上げ、私の顔に唾を吐きかける。
そんな酷い行為が目の前で行われても、誰も文句ひとつ言わない。それどころか三十七人いる人達はクスクスと笑い、私達を哀れみ見下す視線を注いでくる。
「ノルス様、愚妹の姿を長時間見るのは不愉快ですわ。そろそろ実行しませんか?」
「そうだね。じゃあ最後に、ミファ」
促されたノルスが一人で一歩前に出て、私達の顔を交互に眺める。
「これから転移させるのは、ここから一番離れた国・ナルセイ。ナルセイは優しい人が多いそうだから、二人で慎ましくも幸せに暮らしておくれ」
「……はい。配慮くださり、ありがとうございます……」
「いいんだよ、ミファ。うっかり行き先が、魔物が多く生息する人気(ひとけ)のない森になるかもしれないけど、頑張って生きてね」
ノルスは口角を吊り上げ、大笑い。私が心配して言った『バカ』を根に持っていた彼は、故意に私達を危険な場所に飛ばしたのだった――。
『ノルスっ、落ち着いてっ! 今のアナタは周りが見えなくなってるわっ!』
『ふん、なにを言うんだい? 周りならこの通り、ちゃんと見えているさ』
『そういう、視覚的な意味じゃないわよっ! 一度冷静になって! 冷静になりなさいよっ、このバカっっ!!』
『…………は? バカ?』
冷たい目。氷のような冷えきった眼で、彼は私を見下ろした。
『今……。バカと、言ったのかい? この僕に、バカと言ったのかい?』
『ええそうよっ! 権力に呑まれたら、ロクなことにならないわっ。絶対に破滅へと進むようになって、アナタの人生が台無しに――きゃあっ!?』
私は乱暴に突き飛ばされ、地面に尻餅をついてしまう。
『ミファっ! ……ノルス、貴様はあの日の恩を忘れてしまったのか……っ? お前はあの日ミファが助けてくれなかったら、死んでいたんだぞ!』
『ああ、あの時の事は感謝しているよ。でも僕は、助けてとは言っていない。ミファが勝手に助けて、勝手にここに招き入れただけさ』
『貴様……っ。あの時の自分の言葉を、もう忘れてしま――』
『ティル、お前もうるさいよ。……お前達は勇者様に生意気を言ったから、そうだな。この国から追放するか』
王族の追放は身分の剥奪を意味するため、そんな理由での追放は実現不可能なこと。しかしながらお父様とお母様は勇者に媚を売り、ご機嫌取りのためにそれを受諾。私とティルは一か月後に、この地から最も離れた場所に転移されられる羽目になってしまった。
――そして今日、ついにその日がやってきて――。私達は城内にある、お兄様が能力で作り出した転移用魔法陣の上に立たされている。
「ミファ、ティルも。お別れの時が来たな」
背後にお父様を従え、左右には妻となったお姉様と第二夫人である隣国の第一王女を侍らせ、ノルスがほくそ笑む。
今やどの国の王も勇者にお近づきになろうと必死だし、王女達は『勇者』の肩書を持つ美少年にメロメロ。その結果来月には第三夫人、再来月には第四夫人が誕生する予定となっていて、その後も毎月のように各国の第一王女が嫁いでくるらしい。
「一応は幼馴染の二人と会えなくなるのは、寂しいよ。お前達も、偉大な勇者様と会えなくなるのは寂しいだろう?」
「…………はい。ノルス様と会えなくなるのは、寂しいです」
ノルスに対しては『様付け』と『敬語』にしないと、私達の傍にいる兵士が私達を串刺しにする。だから私もティルも、大人しく頷く。
「本当はこんな真似をしたくはなかったんだけど、僕に楯突く事は重罪だからね。死刑にならなかっただけ感謝してほしいね」
「まったくですわ。愚妹とその従者に自衛の剣と服を与えただけでも、ノルス様はお優しい方ですわね」
「あたしも、そう思いますわ。あたしたちは素敵な人のモノになれて、ホントに幸せ」
お姉様と第二夫人が嘲笑し、ノルスの頬に左右から口づけをする。
「それに引き替えミファは、これから身分を剥奪されて追放される。最悪な人生のスタートね」
「残りの人生は、ノルス様に歯向かったことを後悔しながら生きるといいわ。バイバイ、元婚約者さん」
お姉様と第二夫人は口角を吊り上げ、私の顔に唾を吐きかける。
そんな酷い行為が目の前で行われても、誰も文句ひとつ言わない。それどころか三十七人いる人達はクスクスと笑い、私達を哀れみ見下す視線を注いでくる。
「ノルス様、愚妹の姿を長時間見るのは不愉快ですわ。そろそろ実行しませんか?」
「そうだね。じゃあ最後に、ミファ」
促されたノルスが一人で一歩前に出て、私達の顔を交互に眺める。
「これから転移させるのは、ここから一番離れた国・ナルセイ。ナルセイは優しい人が多いそうだから、二人で慎ましくも幸せに暮らしておくれ」
「……はい。配慮くださり、ありがとうございます……」
「いいんだよ、ミファ。うっかり行き先が、魔物が多く生息する人気(ひとけ)のない森になるかもしれないけど、頑張って生きてね」
ノルスは口角を吊り上げ、大笑い。私が心配して言った『バカ』を根に持っていた彼は、故意に私達を危険な場所に飛ばしたのだった――。
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