勇者になった幼馴染に婚約破棄された上に追放されたので、英雄になってざまぁしようと思います

柚木ゆず

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2話(7)

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「ソーラさんにレイルさん。ここがアンタらの部屋だ!」

 一階にある食堂でシチューとパンを頂き、大浴場で汗を流させてもらったあと。私達はサーゼルさん――例の男性に案内され、2階の一番奥にある部屋にやってきた。
 ちなみにサーゼルさんが経営するのは、全30室もある結構な大きさの宿・『ターゲル亭(てい)』。外も中も清潔でお料理も美味しい、私達が最初に目をつけていた優良宿でした。

「他の部屋と同じように、ベッドと机、明かりを完備してる。明かりの使い方は、説明しなくてもいいよな?」
「はい。知っているので大丈夫ですよ」

 部屋の壁に描かれている魔法陣に触れると、天井にある魔法陣が光って部屋全体が明るくなる。反対にその状態で壁の魔法陣に触れると、光がなくなって暗くなる。
 これはジョブ『発明家(はつめいか)』と『魔術師』が共同で開発した技術で、これを応用した設備はいろいろな場所で大活躍中。大浴場にある『触れると水やお湯が出る魔法陣』や調理場にある『触れると火が出る魔法陣』など、今ではなくてはならないものなんだよね。

「なら、紹介は以上で終わりだ。ゆっくり寛いでくれ――おっとそうそう。言い忘れていた」

 部屋を去ろうとしていたサーゼルさんが、ポンと手のひらを打った。

「ウチで飯を食う場合は、朝食は午前6時~9時。昼食は午前11時30分~午後2時30分。夕食は午後6時30分~午後9時30分。こういう時間割りになってるんで、注意しておいてくれ。それとメニューは朝昼晩ともに700Eの『日替わり』のみで、献立は食堂前に張り出してるから確認してくれ」
「「はい」」
「そんで大浴場は24間開放で、利用料はタダ。最後に、宿泊料金なんだが……。財政の関係で、終日無料は無理なんだ。明日からは部屋代と食事代を払ってもらうことになる」
「それは、当然です。お気にならないでください」

 食事700Eと1泊1人2000Eは、この辺りだと破格の設定。ギリギリ頑張ってくれているのだから当たり前で、私達は場所を設けてもらっただけで大満足なんだよね。

「だがその分ご飯とおかずの大盛などでサービスするから、期待しててくれ。それじゃあオレは、これで失礼する。何かあったらオレか妻が『管理人室』にいるから、遠慮なく声をかけてくれよ」
「「分かりました。どうもありがとうございます」」

 私達は揃って頭を下げ、パタン、ボスッ。木の扉を閉めると私はベッドに飛び込み、お行儀悪く大の字になった。

「はぁー、やっと寝っ転がれたぁ。こんなに歩き回ったのは久しぶりだわ」
「一か月間軟禁状態だった上に、ミファは以前から行動に制限が多かった。疲れるのは至当だな」

 偉大なるノルス勇者様のおかげで部屋暮らしだったし、かつては表向きは『第四王女様だから』、実態は『第四王女如きに警備を増やすのは勿体ない』という理由で、私はお城から遠くに出られなかった。
 そのおかげでこうして、顔を出していても全然バレないんだけど――。そんな理由で遠出できないのは納得いかなくって、ずっと不満だったんだよね。

「でもこの疲れは、気持ちの良い疲れよ。無事拠点も見つけられたし…………ふぁ~…………。ダメだわ。ベッドの誘惑に負けて、このまま眠っちゃいそう」

 前代未聞の心身の疲れプラス久しぶりのまともな寝具のコンボは、強い。瞼がどんどん降りてきて、睡魔が眠りの世界へ連れて行こうとする。

「……もうちょっと起きて…………今日を振り返ったり、明日の相談をしたりしようと思ってたのに……。ふぁぁ~…………。ごめん、もう無理……」
「そのようだな。俺は机でいいから、ミファはそこでゆっくり休むといい」
「……ばーか、そしたら罪悪感で眠れなくなるでしょ。もう私は王女でティルは従者じゃないんだから、今まで以上に平等にいくわよ」

 私は睡魔に抵抗して起き上がり、ティルをベッドに引っ張り込む。
 私達は物心ついた時からずっと一緒で、血のつながらない兄妹のような関係。こんな風に一つのベッドで眠っても、なんともないのよね。

「ティルがベッドから出ようとしたら、私は絶対に床で寝る。さてどうしますか?」
「分かった分かった。俺も、ベッドで眠ればいいんだろ?」
「夜中にこっそり抜け出して私に譲るのも、ダメだからね? それをやったら、次の日から床で眠るからね?」
「ミファの性格は重々把握済みで、そんな真似はしない。朝まで俺もベッドにいるから、安心して眠ってくれ」

 確かにこの人は、私を知り尽くしている。ここまで念を押しておいたら、大丈夫ね。

「ふぁぁぁ……。ん、じゃあ眠るわ……。おやすみ、ティル」
「ああ。お休み、ミファ」

 私は真横に笑いかけて、それを済ますともう限界。独りでに両目が閉じちゃって、あっという間に眠りの世界に落ちたのでした――。
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