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3話(5)

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「お前はミファに、危害を加えたな? ただちに謝罪をするか俺の魔術で死ぬか、どちらかを選べ」
「ぇ……。ぁ、いや……。今のは、ちょっと突き飛ばしただけで――」
「程度は問題じゃない。やった事が問題なんだ。さあどうする?」

 殺気の籠った冷たい声が、容赦なく男性に向けられる。
 ティルは昔から私を大切にしてくれていて、いつも大事にしてくれた。それに『ミファがノルスに突き飛ばされた時に、自分は何もできなかった』って、すっごく悔やんでくれてたから……。私を二度とあんな目に遭わせないように、こうしてくれているんだよね……。

「最後の、問いかけだ。どうする?」
「ひ、ひぃぃぃ……」
「聞こえないのか? どうする?」
「ティル、もういいよ。私は全然平気で、私のためにありがとうね」

 長髪の男性は圧倒されてしまっているから、ティルの前にいって杖を持つ右手をポンポンと叩いた。

「この人はノルスと違って、そこまで悪意はないからさ。この辺にしよ?」
「……………………分かった。お前――お前達もだ。不問に付す代わりに、今すぐこの場から消えろ」

 ティルの殺気は尋常じゃなかったため、お姉さんも勧誘活動をすぐに中止。3人は逃げるように走り、ギルドをあとにした。

「ふぅ、これで解決、ね。ティルのおかげで助かったわ」
「……いや、助かったのは俺の方だ。少々ムキになってしまっていたからな」

 臨戦態勢を解きながら、ティルは少し強めに髪の毛を掻いた。

「どうもあの日以来、ミファに何かあると歯止めが利かなくなる。止めてくれてありがとうな」
「ううん、こっちこそありがとう。今度から私ももう少し、立ち回りには気を付けるわ」

 こういう時でも、不必要に隙を見せちゃいけない。次からは要注意ね。

「こちらも必要な時は、強引にでも話を終わらせるべきだと学んだ。同じく、次からは気を付けるとしよう」
「んっ、お互い勉強になってよかったわね。それじゃあ受付に行って、初めてのクエストを始めましょっ」

 いつまでも真面目とか暗めの雰囲気だったら、幸せなんて寄ってこない。なので私は大きめに柏手を打って空気を変え、ティルの手を引っ張って走り出したのでした。
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