勇者になった幼馴染に婚約破棄された上に追放されたので、英雄になってざまぁしようと思います

柚木ゆず

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3話(9)

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「手持ちが少ない今、武器への『祝福』多用は厳禁で、奴らの相手は俺がしなければならない。接近戦を不得意とする魔術師にとって、この状況でこの数を相手にするのは面倒なんだぞ?」
「ごめんごめん、反省してます。だけどそれは『普通の魔術師なら』で、ティルなら問題ないんでしょ?」
「……まあ、そうだな。問題は、何一つない」

 ティルは杖を握った右手を突き出し、左から右へと素早く右腕を薙ぐ。そうすると杖の先端から雷が4つ飛び出し、それらは全て魔物に直撃した。

「「「「げごごごごごごごご…………!」」」」」
「この程度のスピードであれば、十匹いてもまとめて照準を定められる。俺を倒しミファに手を出したいのであれば、今の三倍の速さで来い」

 魔物を感電させて魔石にした幼馴染は、杖を下ろしつつ平然と言い放つ。
 敵が猛スピードで迫っていても全然慌てず、正確に魔術を当てる。全ての技術が軟禁前より遥かに上がっていて、やっぱり私の幼馴染は一味違う。

「今日もお見事でした。相変わらず頼もしいよね、ティルは」
「だからといって、あまり無茶ぶりはするなよ? 俺も人で、失敗をする時はあるのだからな」
「はいはい。そんなことをするとは思えないんだけど、無茶ぶりしすぎないようにしますします」

 私は悪戯っぽく笑って、落ちている魔石を回収する。
 今回はクエストを受けているから、まずはこれをギルドに持っていて『倒したよ』と証明しないといけない。この魔石を拾い忘れたら、もしくは先に売ってしまったらクエスト失敗になっちゃうので、要注意だ。

「それと一応、さっき投げた短剣も回収してっと。これで討伐と回収完了で、二つ目のクエストもひとまず完了。残るは一つね」
「この先にあるレミス川、そこにいる漁師に保存食を渡せば完遂だ。最後は非戦闘系クエストで、こちらは行くだけで達成となる――ん? 珍しい光景だな」

 ティルの視線の先にあるのは空で、そこには大勢の鳥が飛んでいた。
 その数は100匹以上で、大群。しかもいろんな種類の鳥が一斉に飛んでいて、私もこんなのを見たのは初めてだ。

「レミス川の方から、しかも急いで飛んで来てるわね。何かあったのかしら?」
「安全な場所を漁場としているため、何も起こらないはずなのだが……。この鳥の慌て方は、異常だな。どうする、ミファ」

 レミス川を目指すか? ここで暫く様子を見るか? 引き返すか?
 ティルの『どうする』は、この問いかけだ。

「このパーティーのリーダーはミファで、重要な時はお前に判断を任せ、俺はそれに従う。ミファはどうしたいと考えているんだ?」
「運搬クエストを受けているし、それにね。もしもこの先に何かあって死んじゃうくらいなら、ノルスにお返しなんて絶対にできない。進みましょ」
「……分かった。レミス川を目指そう」

 私がニンと笑うと同様の表情が返ってきて、私達は揃って地面を蹴る。
 私とティルの最終目標は、自惚れ勇者への復讐なんだもん。このくらいでしっぽ巻いてたら、なんもできないのよねっ!
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