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第2章
4話(15)
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「よ、よかった……っ。ぼくら、助かったんだ……っ」
「奇跡だ。奇跡が、起きた……!」
「ありがたやありがたや……! 命の恩人ですじゃ……っ!」
建物の隅で肩を寄せ合っていた13人の老若男女は、安堵と感謝を口にしながら駆け寄ってきた。
ティルの言葉通りいたのは人間だけで、しかも人数もぴったり。驚異の聴力と分析力で、さっきから私は驚いてばっかりになっちゃってる。
「人型魔物に放り込まれた時は、ここにいる全員が死を覚悟しました……。少女さんに少年さん、まことにありがとうございます」
「いえ、我々は当然のことをしたまでです。ところで監禁について、なのですが。人型魔物はどういう目的でこのような行動を起こしたか、御存じありませんか?」
「……ヤツらは僕達をここに閉じ込める際に、『お前達の村は、明日の朝までの命だ。故郷と一緒に最期を迎えるといい』『魔王ゲーラン様のお役に立てる事を光栄に思うがいい』と口にしていました。よく分かりませんが何かをするために村を必要としていて、僕らは人型の気まぐれで連れてこられたようです」
なるほどね。ここに置いていたのは、絶望と共に殺すためだったのね。
「……そうでしたか。その際――その前後も含めてなのですが、皆さんは人型魔物に何かされませんでした? 身体に触れられた、などはありませんか?」
「この場にいる者は誰も、一度も触られていません。全員が現れた魔物に誘導され、こうして閉じ込められました」
「そうですか。……ならば魔物の発言は事実で、用があるのは本当にこの村。ゲーランがここを訪れ、なにかしらするという事か……」
広い土地を使ってやる、何か。絶対に、ロクなもんじゃないわよね。
「お兄さんお姉さん、ここにいたら危ないよっ! はやく逃げよーよっ!」
「魔王って、とっても強い魔物なんでしょっ? 強い人が沢山いる街に逃げよっ!」
「僕らも、子供たちに賛成です。ただちに逃げましょう」
「…………いえ、我々はここに残ります。ゲーランと対峙するいい機会ですからね」
この国に招待したくせに、一向に姿を現さないもんね。そろそろ会って、そろそろ片を付けたい。
「お、お二人だけで、ですか……!? 失礼ですが、無謀です、よ……」
「我々も命は惜しく、勝算がないなら戦いはしません。皆さんは安心して街に避難してください」
「そうよね。そう、なんだけど、ティル。ここにいる人達の避難は難しいんじゃないの?」
村で馬車を持っている人はまずいないし、お年寄りがいらっしゃるし、もう陽は落ちている。この条件で数キロを歩くのは、無理よね。
「それなら、問題はない。恐らくはもうすぐ、避難の支援を頼めるようになるはずだからな」
「??? 頼める? 誰に?」
「それはその時になっての、お楽しみにだ。その時まで子供達に童話でも話して、時間を潰すとしよう」
小さな子はホッとしつつも、瞳には恐怖の色が残っている。だからそれを少しでも減らすためにティルは子供達を集め、私も一緒になってお話をすることにした。
トラウマが残っちゃったら大変だし、幼馴染曰く『待ってれば分かる』だもんね。暫くのんびりとした、あったかい時間を過ごすようにしたのでした。
「奇跡だ。奇跡が、起きた……!」
「ありがたやありがたや……! 命の恩人ですじゃ……っ!」
建物の隅で肩を寄せ合っていた13人の老若男女は、安堵と感謝を口にしながら駆け寄ってきた。
ティルの言葉通りいたのは人間だけで、しかも人数もぴったり。驚異の聴力と分析力で、さっきから私は驚いてばっかりになっちゃってる。
「人型魔物に放り込まれた時は、ここにいる全員が死を覚悟しました……。少女さんに少年さん、まことにありがとうございます」
「いえ、我々は当然のことをしたまでです。ところで監禁について、なのですが。人型魔物はどういう目的でこのような行動を起こしたか、御存じありませんか?」
「……ヤツらは僕達をここに閉じ込める際に、『お前達の村は、明日の朝までの命だ。故郷と一緒に最期を迎えるといい』『魔王ゲーラン様のお役に立てる事を光栄に思うがいい』と口にしていました。よく分かりませんが何かをするために村を必要としていて、僕らは人型の気まぐれで連れてこられたようです」
なるほどね。ここに置いていたのは、絶望と共に殺すためだったのね。
「……そうでしたか。その際――その前後も含めてなのですが、皆さんは人型魔物に何かされませんでした? 身体に触れられた、などはありませんか?」
「この場にいる者は誰も、一度も触られていません。全員が現れた魔物に誘導され、こうして閉じ込められました」
「そうですか。……ならば魔物の発言は事実で、用があるのは本当にこの村。ゲーランがここを訪れ、なにかしらするという事か……」
広い土地を使ってやる、何か。絶対に、ロクなもんじゃないわよね。
「お兄さんお姉さん、ここにいたら危ないよっ! はやく逃げよーよっ!」
「魔王って、とっても強い魔物なんでしょっ? 強い人が沢山いる街に逃げよっ!」
「僕らも、子供たちに賛成です。ただちに逃げましょう」
「…………いえ、我々はここに残ります。ゲーランと対峙するいい機会ですからね」
この国に招待したくせに、一向に姿を現さないもんね。そろそろ会って、そろそろ片を付けたい。
「お、お二人だけで、ですか……!? 失礼ですが、無謀です、よ……」
「我々も命は惜しく、勝算がないなら戦いはしません。皆さんは安心して街に避難してください」
「そうよね。そう、なんだけど、ティル。ここにいる人達の避難は難しいんじゃないの?」
村で馬車を持っている人はまずいないし、お年寄りがいらっしゃるし、もう陽は落ちている。この条件で数キロを歩くのは、無理よね。
「それなら、問題はない。恐らくはもうすぐ、避難の支援を頼めるようになるはずだからな」
「??? 頼める? 誰に?」
「それはその時になっての、お楽しみにだ。その時まで子供達に童話でも話して、時間を潰すとしよう」
小さな子はホッとしつつも、瞳には恐怖の色が残っている。だからそれを少しでも減らすためにティルは子供達を集め、私も一緒になってお話をすることにした。
トラウマが残っちゃったら大変だし、幼馴染曰く『待ってれば分かる』だもんね。暫くのんびりとした、あったかい時間を過ごすようにしたのでした。
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