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第5話 楽団を呼んだ、2つの意図 俯瞰視点(2)
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「へぇ。アリシアの最後のデートは、ボヌール管弦楽団のオーケストラ、なんですのね」
それは今からおよそ、6日前のこと。アリシアに追い打ちをかけようとしていたヴァイオレットは、臣下による――弱みを握り言いなりにしている臣下による報告書を眺め、ニヤリとしました。
「最後のデートで、あの有名な『蒼海』に浸った。だとしたら『蒼海』は、最大級に嫌な思い出として焼き付いていますわね」
「……お嬢様。いかがなさいますか?」
「決まっているでしょう。あのパーティーに、サプライズを追加するわ。お父様に頼んで、ボヌール管弦楽団に『蒼海』を演奏してもらいますわ」
そんな理由でヴァイオレットは計画をし、それはあまりにも急なことで父レオンは即座に首を横に振りましたが――
「お父様。実は今度のパーティーに、アリシア・サーディアル様も御招待しようと考えておりまして……」
「アリシア嬢を? 彼女は現在、少々有名になっているはずだ。にもかかわらず、呼びたいというのか?」
「わたくしはアリシア様と同級生でして、お人柄をよく存じ上げております。あの噂は間違いなのだと、確信しております」
「………………ふむ……」
「とはいえ証拠がないため、表立っての否定であり擁護はできませんが……。せめて……。傷付いてしまった心を、あの方が大好きな音楽で、僅かでも癒してさし上げたいんですの」
「……………………なるほどな。分かった、そういうことならば尽力しようじゃないか」
――父レオンは、ヴァイオレットとは正反対の性格。パーティーの意図を把握していなかった上に、『弱っている善良な者は支える』が彼の信条であるため、関係者に頭を下げて実現させていたのです。
そうしてアリシアに更なるダメージを与えるサプライズが完成しましたが、ヴァイオレットは知りませんでした。
((ヴァイオレット様は、なにを考えているの……? あの時間は、なんだったの……?))
それはロイスが婚約解消を正当化させるための、嘘の一つだということを――実際は起きてもいない出来事だということを。アリシアにとっては意味不明な行動で、多くの感動をもたらし貴重な思い出を作らせてしまうだけだということを。
そのためヴァイオレットは上機嫌でほくそ笑み、そして――
それは今からおよそ、6日前のこと。アリシアに追い打ちをかけようとしていたヴァイオレットは、臣下による――弱みを握り言いなりにしている臣下による報告書を眺め、ニヤリとしました。
「最後のデートで、あの有名な『蒼海』に浸った。だとしたら『蒼海』は、最大級に嫌な思い出として焼き付いていますわね」
「……お嬢様。いかがなさいますか?」
「決まっているでしょう。あのパーティーに、サプライズを追加するわ。お父様に頼んで、ボヌール管弦楽団に『蒼海』を演奏してもらいますわ」
そんな理由でヴァイオレットは計画をし、それはあまりにも急なことで父レオンは即座に首を横に振りましたが――
「お父様。実は今度のパーティーに、アリシア・サーディアル様も御招待しようと考えておりまして……」
「アリシア嬢を? 彼女は現在、少々有名になっているはずだ。にもかかわらず、呼びたいというのか?」
「わたくしはアリシア様と同級生でして、お人柄をよく存じ上げております。あの噂は間違いなのだと、確信しております」
「………………ふむ……」
「とはいえ証拠がないため、表立っての否定であり擁護はできませんが……。せめて……。傷付いてしまった心を、あの方が大好きな音楽で、僅かでも癒してさし上げたいんですの」
「……………………なるほどな。分かった、そういうことならば尽力しようじゃないか」
――父レオンは、ヴァイオレットとは正反対の性格。パーティーの意図を把握していなかった上に、『弱っている善良な者は支える』が彼の信条であるため、関係者に頭を下げて実現させていたのです。
そうしてアリシアに更なるダメージを与えるサプライズが完成しましたが、ヴァイオレットは知りませんでした。
((ヴァイオレット様は、なにを考えているの……? あの時間は、なんだったの……?))
それはロイスが婚約解消を正当化させるための、嘘の一つだということを――実際は起きてもいない出来事だということを。アリシアにとっては意味不明な行動で、多くの感動をもたらし貴重な思い出を作らせてしまうだけだということを。
そのためヴァイオレットは上機嫌でほくそ笑み、そして――
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