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第2話 ステラ・回想~予想外の反応な理由~ ステラ視点(1)
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「ぅぅぅ……。ぅぅぅぅぅ……。マーティン様……」
8日前の私は――マーティン様に婚約を解消された私は、自分の部屋で泣いていました。
『ステラ、お前はピアノしか取り柄がない。よくよく考えてみたら、一芸しかない女は俺に相応しくなかった』
『それに比べてオリーヴは、絵画とフルートの才に恵まれた美しい女性。……わざわざ二流と関係を持つ、そんな酔狂な人間はいないんだよ』
マーティン様は、あんなことを平然と口にした人。
でも……。かつて根も葉もない噂を懸命に止めてくださった、恩人だから……。大切な人だから……。それでも、離れたくなくて……。
「ぅぅぅ……。まーてぃんさま、と……。いっしょに、いたい……」
あれから3時間経っても、まだ涙が止まらない。収まってゆくどころか、もっと零れるようになっていって……。体も心も、ボロボロになっていました。
――あの時、までは――。
「ステラ様!? 何があったのですか!?」
私の心に変化が起き始めたのは、泣き始めてから5時間後のこと。お屋敷に、ヴィクター・ジュテレン様が――専属調律師のヴィクター様が、ピアノの調律を行いにいらっしゃったことが切っ掛けでした。
「このままでは、貴方の心が壊れてしまいそうだ。……僕が、何かお役に立てるかもしれません。ステラ様さえよろしければ、お話をお聞かせください」
「…………ヴィクター、様……。あ、の……。今日……。さっき……。婚約のお話が、なくなってしまったのです……」
ヴィクター様は2年前から私のサポートをしてくださっている、22歳男性。そのため私の中では『頼りになる優しいお兄さん』という存在で、仰る通り壊れてしまいそうだったから……。縋るように、一部始終をお伝えした。
「…………そう、でしたか……。リッダジア様が、そのようなことを……」
「あんな風に言われたので、嫌いになっているんです……。なのに、あの方を求めている自分がいて……。嫌いより、好きが、多くて……。関係を戻してもらいたいと、強く思っている自分がいて……。頭の中が、ぐちゃぐちゃになっていて……。どうすれば、いいのでしょうか……」
こんなことを聞かれても困る、それは分かっていました。だけど、そう言わずにはいられなくって……。品が漂う中性的なお顔の中にある、サファイヤのような瞳を覗き込みました。
そうしたら――
(あの一件は、気になっている点があった。…………こうなった以上、あの男に敬意を払う必要はない。急いで調べてみるか)
――ヴィクター様は小声で何かを仰り、
「1日程度、お待ちください。そうすればステラ様に、平穏をもたらせるかもしれません」
今度は私にも聞こえるお声で、そう仰ってくださったのです。そしてそんなヴィクター様は3時間もお喋りをして私を落ち着けてくださり、それから22時間後のことでした。再びヴィクター様がいらっしゃって、すぐに私は大声を出してしまったのでした。
「ええっ!? あの時広まった噂は、マーティン様が広めていたのですかっ!?」
8日前の私は――マーティン様に婚約を解消された私は、自分の部屋で泣いていました。
『ステラ、お前はピアノしか取り柄がない。よくよく考えてみたら、一芸しかない女は俺に相応しくなかった』
『それに比べてオリーヴは、絵画とフルートの才に恵まれた美しい女性。……わざわざ二流と関係を持つ、そんな酔狂な人間はいないんだよ』
マーティン様は、あんなことを平然と口にした人。
でも……。かつて根も葉もない噂を懸命に止めてくださった、恩人だから……。大切な人だから……。それでも、離れたくなくて……。
「ぅぅぅ……。まーてぃんさま、と……。いっしょに、いたい……」
あれから3時間経っても、まだ涙が止まらない。収まってゆくどころか、もっと零れるようになっていって……。体も心も、ボロボロになっていました。
――あの時、までは――。
「ステラ様!? 何があったのですか!?」
私の心に変化が起き始めたのは、泣き始めてから5時間後のこと。お屋敷に、ヴィクター・ジュテレン様が――専属調律師のヴィクター様が、ピアノの調律を行いにいらっしゃったことが切っ掛けでした。
「このままでは、貴方の心が壊れてしまいそうだ。……僕が、何かお役に立てるかもしれません。ステラ様さえよろしければ、お話をお聞かせください」
「…………ヴィクター、様……。あ、の……。今日……。さっき……。婚約のお話が、なくなってしまったのです……」
ヴィクター様は2年前から私のサポートをしてくださっている、22歳男性。そのため私の中では『頼りになる優しいお兄さん』という存在で、仰る通り壊れてしまいそうだったから……。縋るように、一部始終をお伝えした。
「…………そう、でしたか……。リッダジア様が、そのようなことを……」
「あんな風に言われたので、嫌いになっているんです……。なのに、あの方を求めている自分がいて……。嫌いより、好きが、多くて……。関係を戻してもらいたいと、強く思っている自分がいて……。頭の中が、ぐちゃぐちゃになっていて……。どうすれば、いいのでしょうか……」
こんなことを聞かれても困る、それは分かっていました。だけど、そう言わずにはいられなくって……。品が漂う中性的なお顔の中にある、サファイヤのような瞳を覗き込みました。
そうしたら――
(あの一件は、気になっている点があった。…………こうなった以上、あの男に敬意を払う必要はない。急いで調べてみるか)
――ヴィクター様は小声で何かを仰り、
「1日程度、お待ちください。そうすればステラ様に、平穏をもたらせるかもしれません」
今度は私にも聞こえるお声で、そう仰ってくださったのです。そしてそんなヴィクター様は3時間もお喋りをして私を落ち着けてくださり、それから22時間後のことでした。再びヴィクター様がいらっしゃって、すぐに私は大声を出してしまったのでした。
「ええっ!? あの時広まった噂は、マーティン様が広めていたのですかっ!?」
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