unison~元婚約者様へ。私は決して、復縁はいたしません~

柚木ゆず

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第2話 ステラ・回想~予想外の反応な理由~ ステラ視点(2)

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「厳密に言うと『リッダジア侯爵家』がタチの悪い嘘を広め、それをマーティン・リッダジア様が否定し始め、そのタイミングに合わせて工作をやめた。調査の結果、そういった図が浮かび上がってきました」

 昨日、お屋敷を去られたあとのこと。以前から気になっていた点を徹底的に調べ、そこで得た情報をもとにして、そう結論付けられたそうです。

「評判の良い方が――これまで悪評のなかったステラ様が、突然根も葉もない噂を広範囲でばら撒かれ始められたこと。僕が私用で一週間、他国に行っている間に解決してしまっていたこと――規模に対して解決に要する時間が短く、やけにスムーズだったこと。それらが腑に落ちず、僕はずっと疑問を持っておりました」
「……そう、だったのですね……」
「とはいえ帰国後すでに、リッダジア様との仲が深まっておりました。そのためそんな方を調べるのは失礼にあたると思い、自重していたのですよ」

 申し訳ございません。僕の判断ミスでした――。ヴィクター様はそう続けられ、私は慌てて否定しました。
 あの頃の私はマーティン様に大きな御恩を感じ、慕っていて、ことあるごとに絶賛していました。私がそんな空気を作ってしまっていたので、責任は私にしかありません。

「…………ステラ様、痛み入ります。……そのためアレは、自作自演。意中の人を振り向かせるために、自ら問題を起こし自ら問題を解決していただけだったのですよ」
「……あの噂が立ち始めるしばらく前に、私は一度マーティン様からのお誘いを断っていました。そういうこと、だったのですね……」

 あの頃まで私はピアノにばかり関心が向いていて、お父様達に心配されてしまう程に、恋愛には関心がありませんでした。そのためマーティン様は、あのような手段を使用していたのですね……。

「ステラ様がマーティン・リッダジアに対して抱いていた、全ての感情。それは、マーティン・リッダジアによって作られた偽物だったのです」
「慕っていたのも、愛していたのも、未練があったのも……。今までの幸せも悲しみも、全てが思惑による結果だったのですね」

 そう認識した瞬間、でした。私の中で、パンッという音が鳴ったような気がしました。
 これはきっと、幻想が消え去った音。マーティン様によって絡められていた糸が、弾け飛んだ音です。

「……スッキリとしたお顔に、なりましたね。よかったです」
「ヴィクター様のおかげで、私は目を覚ますことができました。ありがとうございます」
「ステラ様のお役に立てて、僕も幸せですよ。その笑顔を見ることができて、こちらも嬉しいです」

 ヴィクター様は本心でそう仰ってくださり、そうされたあと――。「よろしければ」と、窓の外を一瞥されました。
 ?? どう、されたのでしょうか?

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