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第6話 蹴落としてまで侯爵夫人になろうとした、その結果 俯瞰視点(1)

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「……………………」

 ベルスレール伯爵家の一人娘、オリーヴ。そんな彼女は自室にあるベッド、その縁に腰を掛け、抜け殻のようになって天井を見上げていました。
 いつも自信に満ちていた、オリーヴ。彼女がこんな姿になってしまったのは、前日マーティンという名の交際相手に捨てられてしまったからです。


((知らなかったわ。マーティン様って、こんなにも操りやすい人おバカな人だったのね))

((こんな人と結婚すれば、筆頭侯爵家を間接的に操れるわね。……婚約してるみたいだけれど、こんな優良物件を見逃すなんてあり得ませんもの。相手はつまらない女なのだし、もっと仕掛けて――絶対に、わたくしのものにしますわ))


 オリーヴはとにかく、地位権力金、この3つが好きな人間。そのためマーティンを理解した――持ち上げると簡単に操れると認識するや、行動開始。積極的にアプローチをしてゆき、あっという間に心変わりを実現させたのでした。


『ステラ、お前はピアノしか取り柄がない。よくよく考えてみたら、一芸しかない女は俺に相応しくなかった』

『それに比べてオリーヴは、絵画とフルートの才に恵まれた美しい女性。……わざわざ二流と関係を持つ、そんな酔狂な人間はいないんだよ』


 そうしてマーティンはステラにそう言い放ち、婚約を解消。オリーヴとマーティンの交際が、正式に始まったのでした。


((ふふふふ。まずは第一段階達成、ですわね))

((邪魔者は消えたから、あとは楽ですわね。筆頭侯爵家を掌握できる日は、もうすぐですわ……!))


 そのためオリーヴは確信していましたが、ステラが最高金賞および文化勲章を得たことで状況が一変。マーティンは再びステラに興味を持ち始め、こうしてあっさりと捨てられてしまったのでした。

「…………さいあく……。最悪……。最悪だわ……」

 ソレによりすっかりこの言葉が口癖となってしまい、今日もまた力なく繰り返していました。
 ですが彼女はこれから、知ることになってしまいます。
 捨てられたことは、『最悪』ではなかったと。真の『最悪』は、他にあったのだと――。


「オリーヴっ、急いで応接室に来てくれ!! マーティン様がいらっしゃったんだ!! しかもっ、たいそうお怒りになられた状態でっ!!」

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