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第6話 蹴落としてまで侯爵夫人になろうとした、その結果 俯瞰視点(2)

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「ま、マーティン様……? なにを仰っているのですか……?」

 よくもやってくれたな――。お前のせいで冷や汗をかいてしまっただろうが――。よくも作戦会議の邪魔をしてくれたな――。などなど。マーティンの怒声を浴びたオリーヴは、呆然となって目を瞬かせていました。
 なぜならオリーヴには――当主である彼女の父・ロレックにも、身に覚えがないから。行ってもいないことを行ったと断言されていたため、親子揃って当惑していたのでした。

「ふん、しらを切っても無駄だ。我が家(いえ)の人間が調査を行い、お前達の目撃情報を入手しているのだからな」
「目撃……!? わたくしはマーティン様のもとを去ってから、ずっと部屋に籠っておりましたわ……」
「わたしはそんな娘を案じ、ずっと邸内におりました。わたし達は一度も、この屋敷から出ておりません……!」

 あの噂を広めたのも偽りの目撃情報を流したのも、ヴィクター。つまりオリーヴもロレックも、真実だけを口にしていました。
 ですが――

「まだとぼけるのか。……まあいい、そうしたければそうするといい。どうせ認めようが認めまいが、命令の内容に変わりはないのだからな」

 ――マーティンはステラの傍に強大な力を持つ者がいると知らず、そんな偽装が可能だと思ってはいません。そのため一切信用せず、戸惑う二人は鋭い視線に射貫かれました。

「『マーティン様にまったく振り向いてもらえなかったから、悔しくて嘘を広めようとした』『ステラが有名になったから、それを利用しようとしただけ。そんな事実はありませんでした』。無残な形で殺されたくなければ、これから各地を走り回ってその口で訂正と謝罪を行え。いいな?」
「「そっ、そんなっ! そんなことをしたら――」」
「貴族界に居られなくなるだろうな。だがそれでも、死にはしない。良い選択肢だとは思わないか?」

 それが、良い選択肢なはずがありません。けれどマーティンは激しく怒っており、2人は『話は通じない』『必ず実行されてしまう』と確信していました。そのため――

「「しょ、承知……。致しました……」」

 オリーヴとロレックは身体を震わせながら頷き、命じられた動いた2人を待っているのは、2人の予想通りの未来でした。

「見てくださいまし。オリーヴ様ですわよ……」
「酷い方ですわね……」
「とんでもない方ですわ……」
「関わってしまったら、なにをされるか分かりませんわ……」

 どこにいっても、やってくるのは白眼視だけ。
 その影響で2人は一切表舞台に出られなくなってしまい、やがては『家』の将来を案じた叔父や叔母によって追放。2人は貴族として持っていたもの全てを失い、以後は僻地でひっそりと暮らす羽目になってしまったのでした――。


 〇〇〇


「よし、これで沈静化は確定だ。落ち着いて作戦を練れるし、堂々と夜会に参加できるな」

 今日は、公爵主催の――格上から招待されている席があり、どうしても欠席できませんでした。そのため安堵していたマーティンですが、それは大間違いでした。
 彼はその夜――










 ※次のお話では、再びステラへと視点が移ります。
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