unison~元婚約者様へ。私は決して、復縁はいたしません~

柚木ゆず

文字の大きさ
20 / 51

第8話 決定と、2度目の大問題発生 マーティン視点

しおりを挟む
「父上。どう思いますか?」
「わたしも同意見だ。これが最も効果的な案だと、考えている」
「…………では、決まりですね。これから実行する作戦は、プランBとする!」

 3つのアイディアが出てから、およそ27時間後の午前11時過ぎ。ようやく結論が出た。
 ミゲイル考案の、プランB。その内容は――

 身を挺してステラを窮地から救う。

 ――というもの。
 忌々しく腹立たしいことだが、ステラが提示した証拠の否定は不可能だった。そこで大きく方針を変え、『再び強い好意を抱かせる』という方向で話を進めることにしたのだ。
 そうしてブレインに必死で考えさせ、出てきたのはコレ。

 ステップ1。ステラの成功を嫉妬した同業者が、逆上してステラの手を切りつけようと襲い掛かる。

 ステップ2。その際傍にいた俺が咄嗟に盾になり、ナイフが当たって負傷するもステラを守り切る。

 ステップ3。その姿を目にしたステラは俺を恩人だと思い、再び強い感情が芽生える。

 こいつが全容で、今回のものはかつて成功したモノの強化版のような策。信憑性を出すため実際に怪我をしてしまう大きなデメリットがありはするが、あの状態のステラを――。俺に強い不信感を抱いているアイツと復縁するには、これくらいしなければならないと判断した。

「父上。そうと決まれば、」
「うむ。条件に合う協力者を、急いで探そう」

 この作戦の完遂には、『嫉妬しそうな同業者』であり『言うことを聞く同業者』が必要だ。そのため父上はすぐ臣下を呼び、その捜索を命じた。

「ははははっ。どの業界にも、嫉妬深く金にがめついヤツはいる。ピッタリな者を見つけられれば、もうこちらものだな」

 そういう輩は甘い囁きに弱い。どの道捨て駒なのだから――報酬を渡しはしないのだから、破格の条件を提示すれば飛びついてくる。
 万一ソレができなければ嫉妬心を煽って襲わせてもいいし、ウチの力で脅して動かしてもいい。どの道行動は口封じをする『捨て駒』なのだから、どうとでもできる。

「ま、マーティン様。マーティン様に喜んでいただけて、何よりでございますっ!」
「ミゲイルよ、昨日は怒鳴って悪かったな。クビの件はなしで、今後も俺達のために役立ってくれ――ん? なんだ?」

 大笑いしながらミゲイルの肩を叩いていたら、作戦会議室に家令ダンゼルが飛び込んできた。
 ヤツはマナーを弁えていて、普段こんな真似はしない。今度はいったい、何があったんだ……!?

しおりを挟む
感想 74

あなたにおすすめの小説

婚約破棄を申し入れたのは、父です ― 王子様、あなたの企みはお見通しです!

みかぼう。
恋愛
公爵令嬢クラリッサ・エインズワースは、王太子ルーファスの婚約者。 幼い日に「共に国を守ろう」と誓い合ったはずの彼は、 いま、別の令嬢マリアンヌに微笑んでいた。 そして――年末の舞踏会の夜。 「――この婚約、我らエインズワース家の名において、破棄させていただきます!」 エインズワース公爵が力強く宣言した瞬間、 王国の均衡は揺らぎ始める。 誇りを捨てず、誠実を貫く娘。 政の闇に挑む父。 陰謀を暴かんと手を伸ばす宰相の子。 そして――再び立ち上がる若き王女。 ――沈黙は逃げではなく、力の証。 公爵令嬢の誇りが、王国の未来を変える。 ――荘厳で静謐な政略ロマンス。 (本作品は小説家になろうにも掲載中です)

【完結】ひとつだけ、ご褒美いただけますか?――没落令嬢、氷の王子にお願いしたら溺愛されました。

猫屋敷 むぎ
恋愛
没落伯爵家の娘の私、ノエル・カスティーユにとっては少し眩しすぎる学院の舞踏会で―― 私の願いは一瞬にして踏みにじられました。 母が苦労して買ってくれた唯一の白いドレスは赤ワインに染められ、 婚約者ジルベールは私を見下ろしてこう言ったのです。 「君は、僕に恥をかかせたいのかい?」 まさか――あの優しい彼が? そんなはずはない。そう信じていた私に、現実は冷たく突きつけられました。 子爵令嬢カトリーヌの冷笑と取り巻きの嘲笑。 でも、私には、味方など誰もいませんでした。 ただ一人、“氷の王子”カスパル殿下だけが。 白いハンカチを差し出し――その瞬間、止まっていた時間が静かに動き出したのです。 「……ひとつだけ、ご褒美いただけますか?」 やがて、勇気を振り絞って願った、小さな言葉。 それは、水底に沈んでいた私の人生をすくい上げ、 冷たい王子の心をそっと溶かしていく――最初の奇跡でした。 没落令嬢ノエルと、孤独な氷の王子カスパル。 これは、そんなじれじれなふたりが“本当の幸せを掴むまで”のお話です。 ※全10話+番外編・約2.5万字の短編。一気読みもどうぞ ※わんこが繋ぐ恋物語です ※因果応報ざまぁ。最後は甘く、後味スッキリ

王妃様は死にました~今さら後悔しても遅いです~

由良
恋愛
クリスティーナは四歳の頃、王子だったラファエルと婚約を結んだ。 両親が事故に遭い亡くなったあとも、国王が大病を患い隠居したときも、ラファエルはクリスティーナだけが自分の妻になるのだと言って、彼女を守ってきた。 そんなラファエルをクリスティーナは愛し、生涯を共にすると誓った。 王妃となったあとも、ただラファエルのためだけに生きていた。 ――彼が愛する女性を連れてくるまでは。

逆行転生、一度目の人生で婚姻を誓い合った王子は私を陥れた双子の妹を選んだので、二度目は最初から妹へ王子を譲りたいと思います。

みゅー
恋愛
アリエルは幼い頃に婚姻の約束をした王太子殿下に舞踏会で会えることを誰よりも待ち望んでいた。 ところが久しぶりに会った王太子殿下はなぜかアリエルを邪険に扱った挙げ句、双子の妹であるアラベルを選んだのだった。 失意のうちに過ごしているアリエルをさらに災難が襲う。思いもよらぬ人物に陥れられ国宝である『ティアドロップ・オブ・ザ・ムーン』の窃盗の罪を着せられアリエルは疑いを晴らすことができずに処刑されてしまうのだった。 ところが、気がつけば自分の部屋のベッドの上にいた。 こうして逆行転生したアリエルは、自身の処刑回避のため王太子殿下との婚約を避けることに決めたのだが、なぜか王太子殿下はアリエルに関心をよせ……。 二人が一度は失った信頼を取り戻し、心を近づけてゆく恋愛ストーリー。

断罪される前に市井で暮らそうとした悪役令嬢は幸せに酔いしれる

葉柚
恋愛
侯爵令嬢であるアマリアは、男爵家の養女であるアンナライラに婚約者のユースフェリア王子を盗られそうになる。 アンナライラに呪いをかけたのはアマリアだと言いアマリアを追い詰める。 アマリアは断罪される前に市井に溶け込み侯爵令嬢ではなく一市民として生きようとする。 市井ではどこかの王子が呪いにより猫になってしまったという噂がまことしやかに流れており……。

平民の方が好きと言われた私は、あなたを愛することをやめました

天宮有
恋愛
公爵令嬢の私ルーナは、婚約者ラドン王子に「お前より平民の方が好きだ」と言われてしまう。 平民を新しい婚約者にするため、ラドン王子は私から婚約破棄を言い渡して欲しいようだ。 家族もラドン王子の酷さから納得して、言うとおり私の方から婚約を破棄した。 愛することをやめた結果、ラドン王子は後悔することとなる。

心の傷は癒えるもの?ええ。簡単に。

しゃーりん
恋愛
侯爵令嬢セラヴィは婚約者のトレッドから婚約を解消してほしいと言われた。 理由は他の女性を好きになってしまったから。 10年も婚約してきたのに、セラヴィよりもその女性を選ぶという。 意志の固いトレッドを見て、婚約解消を認めた。 ちょうど長期休暇に入ったことで学園でトレッドと顔を合わせずに済み、休暇明けまでに失恋の傷を癒しておくべきだと考えた友人ミンディーナが領地に誘ってくれた。 セラヴィと同じく婚約を解消した経験があるミンディーナの兄ライガーに話を聞いてもらっているうちに段々と心の傷は癒えていったというお話です。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...