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第13話 同時刻~接触~ マーティン視点(2)

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「君はこの作戦のキーマン。要となる存在だ。そこで協力金としてまずは100万。無事目的が達成された際は、更に5000万ゲルオル(1ゲルオル=1円)の支払いおよび演奏の場の提供を約束しよう」

 俺はテーブルの上に札束を一つ置き、続けてその50倍の額と垂涎のものを提示した。

「筆頭侯爵家のツテを使い、有名ピアニストとの共演を実現させようじゃないか。……合わせて5100万ゲルオルと、最高の舞台。これらが、簡単なお芝居をするだけで手に入るんだ。良い取引だとは思わないかい?」
「…………ま、マーティン様。本当に、どちらもいただけるのですか……?」
「もちろんだとも。予想外を防ぐために契約書などは用意できないが、約束しよう。こうして俺が自ら出向いていることが、反故にしない、本気だという証だよ」

 というのも、嘘。
 ここまでしていれば、約束を破った場合は言い広められてしまう――。なら破るはずがない――。契約書がなくても安心だ――。
 こいつはセリアに、そう思わせるためのものだ。

「どうかな? 信じてもらえたかな? とても魅力的な交換条件と思うのだけど、引き受けてもらえるかな?」
「はいっ! 喜んでっ! やらせていただきます!!」

 臣下の調査によると、コイツは比較的バカ。『表面上の安心安全をチラつかせれば、簡単に頷く』――。そう報告があったのだが、その通りだったな。

「感謝する。ではこれから改めて、一から詳しく説明をさせてもらう。しっかりと頭に叩き込んで欲しい」
「はっ、はいっ!! 頑張りますっ! 完璧に演じて見せますっ!!」

 そうしてヤツは前のめりで嬉々として俺の話を聞き、1時間ほどで『詰め』の作業は終了。かくして、最高の捨て駒が誕生したのだった。

「優秀なピアニストは、物分かりも早いのだね。……セリア。明後日は頼んだよ」
「お任せください!! お役に立って見せます!!」
「ははは、頼もしい。俺は公務のため先に出るが、君はゆっくりしていってくれ。しっかり覚えてくれたお礼に、特別なランチをオーダーしているからね」

 2日後の今頃は旅立っているのだから、こいつは俺からの最後の晩餐。そうとは知らず満面の笑みを浮かべているセリアに小さく手を振り、俺は含み笑いながらリストランテを後にしたのだった――。


 色々あったが、やっと仕込みが終わった。
 これでステラは、俺のものになるぞ……!!

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