51 / 51
エピローグ 結婚式と、ピアニストと調律師 ステラ視点(3)
しおりを挟む
((……ぁ)
久し振りにリュミエールを引いた私は、すぐに良い違和感を覚えました。
((……あの時よりも……。更に、良い音が出せるようになっていますね))
何年も練習を行い、場数も踏んで、多くの経験値を得たから。確かにそれも理由なのですが、そちらは小さなものに過ぎません。
そうなっている一番の理由は、レオナード様です。
調律師レオナード様が、私に最適な状態にセッティングしてくださったこと。旦那様レオナード様が、私の心を豊かにしてくださったこと。
それらによって、自分でも驚いてしまうくらいに。素敵な音色を響かせ、やがて演奏が終わると――大きな拍手がやって来ました。
「澄んでいて温かく、とても優しい音だった。あの頃と変わらない、でも、その上を行く。そんな音色だったよ」
「私がそういった音を出せるのは、公私ともに最高のパートナーが居てくださるからです。……レオナード様。いつまでも、お傍に居てください。居させてください」
「もちろんだよ。僕も、そう強く思っているからね。この先もずっと、ステラと共に歩んでゆく。共に歩ませてもらうよ」
そう仰りながら手を取ってくださり、温かくて力強い瞳が真っすぐ私を見つめてくださいました。
「君自身がもっと驚いてしまうほどの良い音を出せるように、専属調律師として、夫として、貴方を支えていく。幸せを届けていく。だからいつまでも、よろしくお願いします」
「レオナード様……っ。はいっ、はい……っ。末永く、よろしくお願い致します」
こういった表情とお言葉をいただけたのですから、そうなるのは必然です。嬉し涙が零れるようになって、それを優しく指で拭ってもらって。どちらも幸せに満ち満ちた様子で、微笑み合って。
なので――。それもまた、必然でした――。
「……ステラ」
「……レオナード様」
繋いでいた指は自然と絡み合って、私達の唇も自然と近づいていきます。そして、
「いつまでも愛してるよ」「いつまでも愛しております」
同じタイミングで想いを声にし、キス――。
言葉に乗った、それぞれの感情。それが大切な人に全てが届くように、ほんの少しでも零れ落ちてしまわないように。
お互いが唇でそっと、口に蓋をしたのでした――。
久し振りにリュミエールを引いた私は、すぐに良い違和感を覚えました。
((……あの時よりも……。更に、良い音が出せるようになっていますね))
何年も練習を行い、場数も踏んで、多くの経験値を得たから。確かにそれも理由なのですが、そちらは小さなものに過ぎません。
そうなっている一番の理由は、レオナード様です。
調律師レオナード様が、私に最適な状態にセッティングしてくださったこと。旦那様レオナード様が、私の心を豊かにしてくださったこと。
それらによって、自分でも驚いてしまうくらいに。素敵な音色を響かせ、やがて演奏が終わると――大きな拍手がやって来ました。
「澄んでいて温かく、とても優しい音だった。あの頃と変わらない、でも、その上を行く。そんな音色だったよ」
「私がそういった音を出せるのは、公私ともに最高のパートナーが居てくださるからです。……レオナード様。いつまでも、お傍に居てください。居させてください」
「もちろんだよ。僕も、そう強く思っているからね。この先もずっと、ステラと共に歩んでゆく。共に歩ませてもらうよ」
そう仰りながら手を取ってくださり、温かくて力強い瞳が真っすぐ私を見つめてくださいました。
「君自身がもっと驚いてしまうほどの良い音を出せるように、専属調律師として、夫として、貴方を支えていく。幸せを届けていく。だからいつまでも、よろしくお願いします」
「レオナード様……っ。はいっ、はい……っ。末永く、よろしくお願い致します」
こういった表情とお言葉をいただけたのですから、そうなるのは必然です。嬉し涙が零れるようになって、それを優しく指で拭ってもらって。どちらも幸せに満ち満ちた様子で、微笑み合って。
なので――。それもまた、必然でした――。
「……ステラ」
「……レオナード様」
繋いでいた指は自然と絡み合って、私達の唇も自然と近づいていきます。そして、
「いつまでも愛してるよ」「いつまでも愛しております」
同じタイミングで想いを声にし、キス――。
言葉に乗った、それぞれの感情。それが大切な人に全てが届くように、ほんの少しでも零れ落ちてしまわないように。
お互いが唇でそっと、口に蓋をしたのでした――。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
834
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(74件)
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
丸山 令様。お返事が遅くなってしまい、申し訳ございません。わざわざ感想をくださり、ありがとうございます。
彼女は過去に、ああいったことがあって。彼は過去に、あのようなことがあって。
それらが、こういった未来を生み出して。二人は、公私ともに、手を取りあって歩いてゆくこととなりました……っ。
そして、大賞に関することなのですが。
本当に、ありがとうございます……っ。
一つだけでも、ありがたいのに。二つも気に入っていただけて、とても幸せです。
今後も引き続き、ですね。
気に入っていただけるように(喜んでいただけるように)。精一杯の努力を重ねてまいります。
弓はあと様。わざわざ感想をくださり、ありがとうございます(いただいたものへのお返事が遅くなってしまったこと、お許しくださいませ)。
お互いにとても大きなことがあって。そちらによって、想いが生まれて。
こうして、もう一つ、新たな関係が生まれることとなりました。
二人はこれからも、パートナーとして。家族として。
明るく、幸せな毎日を過ごしてゆくのだと思います。
そして。
彼女を気に入ってくださり、ありがとうございます……っ。
筋肉は正義様。わざわざ感想をくださり、ありがとうございます。お返事が遅くなってしまい、申し訳ございません。
これまで色々なことがあって。それらを経験し、乗り越えた結果。二人には、同じ感情が芽生えておりまして。
そちらが、こういったことを、生みました。
そして二人はさらに、お互いを愛するようになって。
これからもずっと、ですね。よい関係は、続いてまいります……っ。