クローンだった私と、兄

柚木ゆず

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「『今学校から帰ってきて、途中にも家の中にも不審な人はいませんでした。美味しい夕ご飯を作って待ってるから、バイト頑張ってね夏樹お兄ちゃん』」

 夕方の4時半過ぎ。うがいと手洗いをしてリビングに入った私は、着替える前にスマホでメッセージを送る。
 これは、私の平日の日課。ウチは2年前にお父さんとお母さんが蒸発して、お兄ちゃんと二人暮らし。夏樹お兄ちゃんが帰ってくるまでは中学生1年生がマンションで1人きりなので、安心してもらうために送ってるの。

「…………これで、よしっと。それじゃあ服を着替えて、洗濯を取り込んで、ご飯の支度をしよう」

 セーラー服姿からTシャツとスカート姿になって、ベランダで洗濯物を回収して綺麗に畳む。
 2年前までは洗うのも干すのも未経験で、畳むのも全然だったんだけど――。夏樹お兄ちゃんが教えてくれて、今ではバッチリ。
 シャツもズボンも靴下もお手本みたいにきちっと畳んで、自分のものは私(わたし)用のボックスに、お兄ちゃんのものはお兄ちゃん用のボックスに収納。今日はちょっぴりいつもよりも量があって、三十分くらいで洗濯関係の作業は終わった。

「さてっと、次はお料理の時間。今晩は何にしようかな……?」

 リビングと続きになっているキッチンへと動いて、冷蔵庫の中をチェックする。
 栄養バランスと、食材の賞味期限などを考えると……。今日は……。

「昨日の肉じゃがを使ったカレーと、トマトとセロリとレタスのフレンチ風野菜サラダ。にしよう」

 献立、決まりっ。まずは目の前にある肉じゃが入りのお皿を取り出し、それから――

「ひゃあっっ!?」

 ――間抜けな悲鳴を上げる。
 私がこうなってしまったのは、家の中で大きな音がしたから。大音の発生源は向かって左の方向で、お父さんとお母さんの部屋で何かがあったみたい。

「もう、ビックリしたぁ。誰かが忍び込んでる感じはなかったから、置いてるあるものが落ちたっぽいね」

 お兄ちゃんの指示で玄関には色々と細工をしていて、怪しい人が入ってきてたらすぐ分かるようになってる。よってこの推理は間違いなしで、とりあえず私は安堵の息を吐いた。

「さっきの、かなり大きかったなあ。……確認しといた方が、いいよね」


『父さんと母さんの部屋には、入らないようにしよう。なかには二人の私物が沢山あって、春香は会いたくなっちゃうと思うから』


 お兄ちゃんはそう言ってくれているし、実際そうなっちゃうと思うんだけど……。これが原因で、火事とかになったら大変だもんね。
 やろうとしていた調理を一旦止めて、お父さんとお母さんの部屋を目指したのでした。

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