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プロローグ シュザンヌ・モファクーナ視点

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「聖女シュザンヌ。本日を以て聖女の任を解く」

 それは、突然のことでした。
 1週間に1度必要な『平穏の祈り』の儀式を終え、自室で身体を休めていた時のこと。何の前触れもなく神殿にアントナン王太子殿下がいらっしゃり、その旨が記された書類をわたしに突きつけられたのでした。

「聖女を解任、ですか……!? 聖女の務めは今後、佐々岡春奈(ささおかはるな)様とわたしの二人態勢で行われる、となっていたはずのですが……?」
「そうだな、2か月前はそう決まった。だが春奈の意向で、その方針が変わったんだよ」

 この国『ラクリナルズ』には建国時から、災いから国を護るために『聖女』が存在していました。
 聖女は前任が亡くなられた際に『適性』が高く『真っすぐな心』を持つラクリナルズ人の女性が新たな聖女として覚醒する仕組みになっており、わたしは3年前に――14歳の頃に覚醒し、66人目であり第63代目となる聖女となりました。

 ――66人目なのに、63代目――。

 数字がおかしなことになっている理由は、例外があるからです。
 様々な世界にあると言われている『次元の狭間(はざま)』に迷い込み、この世界にやって来られた方がいらっしゃる――異世界の住人がこちらの世界に来ると、それによって体内で突然変異? が発生して非常に大きな聖女の力が宿るため、これまで3名の方が『2人目の聖女』として活動されていたからなのです。
 今し方言及した『佐々岡春奈』様はおよそ200年ぶりに降臨された、『日本』という異世界の島国からいらっしゃった18歳の『2人目の聖女』様。
 佐々岡様は高い聖女の適性があると知るや聖女就任を快諾してくださり、

『シュザンヌ・モファクーナちゃんって言うのね。あたしは佐々岡春奈、よろしく』

『知らない間に不思議な力が宿ってて、ビックリしちゃった。聖女、だったよね? 一緒に頑張ろっ』

 そんな風に、笑顔で仰られていたのに……。
 どうされたのしょうか……?

「『春奈の意向』、が気になっているんだろう? 春奈は、理由と『おまけ』を直接お前に告げたいと言っている。もう少ししたらココに来るから待っていろ」
「しょ、承知いたしました」

 お返事を行い、5分ほどが経った頃でしょうか。わたし達が現在いる応接室の扉が開き、白髪の女性と茶色の髪の女性が――神殿長マリアール様と、佐々岡様がいらっしゃりました。

「春奈、いらっしゃい。解任の件は伝えてあるよ」
「ありがとうございます、殿下。……じゃあ、お話を始めましょうか」

 やって来た佐々岡様は、アントナン殿下にカーテシーを行い微笑み合ったあと――……。え……?

「こんなことになったのは、全部自分の責任。シュザンヌ、アンタが悪いのよ」

 ゆっくりとこちらに向き直り、腕組みをして鼻で笑いました。
 わたしが、悪い……? それは、どういう……?



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