わたしはお払い箱なのですね? でしたら好きにさせていただきます

柚木ゆず

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第8話 一致 シュザンヌ視点(2)

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「初めて恋をした人が――初めて好きになった人が、僕の中であまりにも大きな存在になっていたからなのだろうね。他の女性に惹かれることはなく、アロンソに家督の継承権を譲ろうと思っていたんだよ」

 いくら『嫡男が愛した人を婚約者と当主夫人に』と言っても、ある程度年齢が経つまでに婚約結婚をしておかなければ、色々な面で問題が出てきてしまいます。ですので20までという制限が設けられていて、ご両親の要望でお相手を探してはいたものの、そうなる未来が訪れるだろうと確信されていたそうです。

「だからね、シュザンヌが気にすることはなにもない。シュザンヌが心身共に安心して過ごせる環境を用意できるから、僕はこうしてお願いをさせてもらっているんだよ」
「クロヴィスさん……!」
「ということで、改めてお願いをさせてもらいます。……シュザンヌ」
「…………は、はい」
「僕は貴方という人に惹かれ、恋をしています。もしよろしければ結婚を前提として、交際をしてはいただけないでしょうか?」

 真摯な眼差しと共に、右の手がわたしへと差し出されます。

 そのような瞳と手を向けてくださっているのは、初恋の人。世界で一番大好きな方。

 ですので、お返事は一つしかありません。

「わたしも、貴方様に恋をしています。……はい、お願いします。こちらこそ、交際をさせてください」

 わたしはその手を取り、そうするとクロヴィスさんが両国共通である成就の証を――わたしの手の甲に、そっと口づけを落してくださったのでした。

「ありがとう。こんなに幸せで、光栄なことはないよ」
「わたしもです。こんなにも幸せな気持ちは、初めて感じます」

 ずっと大好きだった方、そういった関係にはなれないと諦めていた方と、このような言葉を交わせる。願いが叶ったのですから、当たり前ですよね。
 おもわず両方の瞳からは、ポロポロと嬉し涙が零れ落ちます。

「この先君が涙を流す時は、喜びだけが理由となる。それを誓います。シュザンヌ、これからは二人並んで同じ道を進んでいこうね」
「はいっ。はいっ! 同じ道を一緒に進んでいきましょうっ!」


 まさかこんなことが起こるなんて、思ってもみませんでした――。
 再会して楽しい時間を過ごした後に、それ以上の幸せが待っているとは思いませんでした――。

 4月7日。
 わたしは諦めていた夢が叶い、クロヴィスさんと新たな一歩を踏み出したのでした。


 ○○


 そして――。
 まさかその後、あんなことが起きるとは思ってもみませんでした。
 それは3か月後、7月7日の正午過ぎのこと――
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