36 / 41
第19話 身勝手な者の末路その3~佐々岡春奈の場合~ 俯瞰視点(4)
しおりを挟む
「…………どこ……? ここ、どこ……?」
突然拍手が止まり、笑顔が困惑に変わった理由。それは、知らない場所に立っていたから。
降り立ったのは魔法陣のある広く清らかな部屋ではなく、木漏れ日が差し込む森の中だったからです。
「森、よね……? 森ってことは、分かるけど……。ど、どこなのよ、ここ……?」
「「「「「チチチチチッ。チチチチっ」」」」」
「……鳥しかいないんだから、返事があるはずがないわね。………………分かった。降り立つ場所はランダムで、前回は偶々運が良かっただけなんだわ」
春奈はそう判断し、前後に伸びている道を前に進み始めました。
「そういうことなら、近くにある家か街に行かないといけないわね」
聖女の再来を知らせて、神殿から迎えに来させる。そうするべく内心面倒だと思いながらも、人に会うため進んでいきます。
「誰かの家の近くや街に降りられてたら、移動しなくて済んだのに。サイアク。これも全部アイツらのせいよ」
自分の運が悪くなったのは、周囲が自分を怒らせて運気を下げたから。
今日も今日とて春奈は責任転嫁をしながら歩いてゆき、そんな時間が30分ほど続いた頃でした――。愚痴ばかりが出ていた口から、今度は大きな舌打ち音が飛び出しました。
「サイテー。どこにも家どころか建物すらないじゃない」
森を抜けてみると、見渡す限り草原。あるには緑だけで、馬車が通った痕跡すらありませんでした。
「こんなところ知らないわよ。どこよ、ここ」
春奈が我が儘を言って訪れたのは、有名なお店や観光スポットだけでした。景色から想定できないためもう一度舌打ちを行い、しぶしぶ歩き始めました。
「……ここで文句を言っても仕方がないわ。文句を言うのは、神殿に戻ってからにしましょ」
どうして聖女の降臨を感知できないのよ!? どうにかしてそういう仕組みを作っておきなさいよ!!
そう叱責すると決め、人を求めて草原を縦断していきます。
「どのくらい歩いたら、出会えるのかしら……?」
「暗くなる前に誰かと会わないと、野宿……。ムリムリっ、有り得ない!」
「誰かいなさいよ!! 早く現れなさいよ!!」
「もう……!! ホント、どこまでこの景色が続くのよ……!!」
1時間歩いても2時間歩いても、3時間歩いても、誰にも出会えない。
「日が落ちて来てるし、そろそろ見つけられないとホントに野宿する羽目になっちゃう。いい加減にしなさいよ!! いいから早く見つかりなさ――……………………」
出発して5回目となる休憩をしていた時のことでした。茜色に染まり始めた空に怒声を飛ばしていた春奈は、まるで銅像のように固まりました。
「………………………………」
10秒経っても20秒経っても、ピクリともしない。
「………………………………な、んで……?」
30秒経ってようやく声が絞り出せるほど、激しく動揺した理由。それは、ついさっきまで怒鳴りつけていた『空』にありました。
「全然、気が付かなかった……。なんで……。月が、2つあるの……!?」
突然拍手が止まり、笑顔が困惑に変わった理由。それは、知らない場所に立っていたから。
降り立ったのは魔法陣のある広く清らかな部屋ではなく、木漏れ日が差し込む森の中だったからです。
「森、よね……? 森ってことは、分かるけど……。ど、どこなのよ、ここ……?」
「「「「「チチチチチッ。チチチチっ」」」」」
「……鳥しかいないんだから、返事があるはずがないわね。………………分かった。降り立つ場所はランダムで、前回は偶々運が良かっただけなんだわ」
春奈はそう判断し、前後に伸びている道を前に進み始めました。
「そういうことなら、近くにある家か街に行かないといけないわね」
聖女の再来を知らせて、神殿から迎えに来させる。そうするべく内心面倒だと思いながらも、人に会うため進んでいきます。
「誰かの家の近くや街に降りられてたら、移動しなくて済んだのに。サイアク。これも全部アイツらのせいよ」
自分の運が悪くなったのは、周囲が自分を怒らせて運気を下げたから。
今日も今日とて春奈は責任転嫁をしながら歩いてゆき、そんな時間が30分ほど続いた頃でした――。愚痴ばかりが出ていた口から、今度は大きな舌打ち音が飛び出しました。
「サイテー。どこにも家どころか建物すらないじゃない」
森を抜けてみると、見渡す限り草原。あるには緑だけで、馬車が通った痕跡すらありませんでした。
「こんなところ知らないわよ。どこよ、ここ」
春奈が我が儘を言って訪れたのは、有名なお店や観光スポットだけでした。景色から想定できないためもう一度舌打ちを行い、しぶしぶ歩き始めました。
「……ここで文句を言っても仕方がないわ。文句を言うのは、神殿に戻ってからにしましょ」
どうして聖女の降臨を感知できないのよ!? どうにかしてそういう仕組みを作っておきなさいよ!!
そう叱責すると決め、人を求めて草原を縦断していきます。
「どのくらい歩いたら、出会えるのかしら……?」
「暗くなる前に誰かと会わないと、野宿……。ムリムリっ、有り得ない!」
「誰かいなさいよ!! 早く現れなさいよ!!」
「もう……!! ホント、どこまでこの景色が続くのよ……!!」
1時間歩いても2時間歩いても、3時間歩いても、誰にも出会えない。
「日が落ちて来てるし、そろそろ見つけられないとホントに野宿する羽目になっちゃう。いい加減にしなさいよ!! いいから早く見つかりなさ――……………………」
出発して5回目となる休憩をしていた時のことでした。茜色に染まり始めた空に怒声を飛ばしていた春奈は、まるで銅像のように固まりました。
「………………………………」
10秒経っても20秒経っても、ピクリともしない。
「………………………………な、んで……?」
30秒経ってようやく声が絞り出せるほど、激しく動揺した理由。それは、ついさっきまで怒鳴りつけていた『空』にありました。
「全然、気が付かなかった……。なんで……。月が、2つあるの……!?」
671
あなたにおすすめの小説
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか
あーもんど
恋愛
聖女のオリアナが神に祈りを捧げている最中、ある女性が現れ、こう言う。
「貴方には、これから裁きを受けてもらうわ!」
突然の宣言に驚きつつも、オリアナはワケを聞く。
すると、出てくるのはただの言い掛かりに過ぎない言い分ばかり。
オリアナは何とか理解してもらおうとするものの、相手は聞く耳持たずで……?
最終的には「神のお告げよ!」とまで言われ、さすがのオリアナも反抗を決意!
「私を断罪するのが神のお告げですって?なら、本人を呼んでみましょうか」
さて、聖女オリアナを怒らせた彼らの末路は?
◆小説家になろう様でも掲載中◆
→短編形式で投稿したため、こちらなら一気に最後まで読めます
【完結】もう…我慢しなくても良いですよね?
アノマロカリス
ファンタジー
マーテルリア・フローレンス公爵令嬢は、幼い頃から自国の第一王子との婚約が決まっていて幼少の頃から厳しい教育を施されていた。
泣き言は許されず、笑みを浮かべる事も許されず、お茶会にすら参加させて貰えずに常に完璧な淑女を求められて教育をされて来た。
16歳の成人の義を過ぎてから王子との婚約発表の場で、事あろうことか王子は聖女に選ばれたという男爵令嬢を連れて来て私との婚約を破棄して、男爵令嬢と婚約する事を選んだ。
マーテルリアの幼少からの血の滲むような努力は、一瞬で崩壊してしまった。
あぁ、今迄の苦労は一体なんの為に…
もう…我慢しなくても良いですよね?
この物語は、「虐げられる生活を曽祖母の秘術でざまぁして差し上げますわ!」の続編です。
前作の登場人物達も多数登場する予定です。
マーテルリアのイラストを変更致しました。
【完結】さようなら。毒親と毒姉に利用され、虐げられる人生はもう御免です 〜復讐として隣国の王家に嫁いだら、婚約者に溺愛されました〜
ゆうき
恋愛
父の一夜の過ちによって生を受け、聖女の力を持って生まれてしまったことで、姉に聖女の力を持って生まれてくることを望んでいた家族に虐げられて生きてきた王女セリアは、隣国との戦争を再び引き起こした大罪人として、処刑されてしまった。
しかし、それは現実で起こったことではなく、聖女の力による予知の力で見た、自分の破滅の未来だった。
生まれて初めてみた、自分の予知。しかも、予知を見てしまうと、もうその人の不幸は、内容が変えられても、不幸が起こることは変えられない。
それでも、このまま何もしなければ、身に覚えのないことで処刑されてしまう。日頃から、戦争で亡くなった母の元に早く行きたいと思っていたセリアだが、いざ破滅の未来を見たら、そんなのはまっぴら御免だと強く感じた。
幼い頃は、白馬に乗った王子様が助けに来てくれると夢見ていたが、未来は自分で勝ち取るものだと考えたセリアは、一つの疑問を口にする。
「……そもそも、どうして私がこんな仕打ちを受けなくちゃいけないの?」
初めて前向きになったセリアに浮かんだのは、疑問と――恨み。その瞬間、セリアは心に誓った。自分を虐げてきた家族と、母を奪った戦争の元凶である、隣国に復讐をしようと。
そんな彼女にとある情報が舞い込む。長年戦争をしていた隣国の王家が、友好の証として、王子の婚約者を探していると。
これは復讐に使えると思ったセリアは、その婚約者に立候補しようとするが……この時のセリアはまだ知らない。復讐をしようとしている隣国の王子が、運命の相手だということを。そして、彼に溺愛される未来が待っていることも。
これは、復讐を決意した一人の少女が、復讐と運命の相手との出会いを経て、幸せに至るまでの物語。
☆既に全話執筆、予約投稿済みです☆
【完結】たぶん私本物の聖女じゃないと思うので王子もこの座もお任せしますね聖女様!
貝瀬汀
恋愛
ここ最近。教会に毎日のようにやってくる公爵令嬢に、いちゃもんをつけられて参っている聖女、フレイ・シャハレル。ついに彼女の我慢は限界に達し、それならばと一計を案じる……。ショートショート。※題名を少し変更いたしました。
聖女の私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
重田いの
ファンタジー
聖女である私が追放されたらお父さんも一緒についてきちゃいました。
あのお、私はともかくお父さんがいなくなるのは国としてマズイと思うのですが……。
よくある聖女追放ものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる