わたしはお払い箱なのですね? でしたら好きにさせていただきます

柚木ゆず

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第19話 身勝手な者の末路その3~佐々岡春奈の場合~ 俯瞰視点(4)

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「…………どこ……? ここ、どこ……?」

 突然拍手が止まり、笑顔が困惑に変わった理由。それは、知らない場所に立っていたから。
 降り立ったのは魔法陣のある広く清らかな部屋ではなく、木漏れ日が差し込む森の中だったからです。

「森、よね……? 森ってことは、分かるけど……。ど、どこなのよ、ここ……?」
「「「「「チチチチチッ。チチチチっ」」」」」
「……鳥しかいないんだから、返事があるはずがないわね。………………分かった。降り立つ場所はランダムで、前回は偶々運が良かっただけなんだわ」

 春奈はそう判断し、前後に伸びている道を前に進み始めました。

「そういうことなら、近くにある家か街に行かないといけないわね」

 聖女の再来を知らせて、神殿から迎えに来させる。そうするべく内心面倒だと思いながらも、人に会うため進んでいきます。

「誰かの家の近くや街に降りられてたら、移動しなくて済んだのに。サイアク。これも全部アイツらのせいよ」

 自分の運が悪くなったのは、周囲が自分を怒らせて運気を下げたから。
 今日も今日とて春奈は責任転嫁をしながら歩いてゆき、そんな時間が30分ほど続いた頃でした――。愚痴ばかりが出ていた口から、今度は大きな舌打ち音が飛び出しました。

「サイテー。どこにも家どころか建物すらないじゃない」

 森を抜けてみると、見渡す限り草原。あるには緑だけで、馬車が通った痕跡すらありませんでした。

「こんなところ知らないわよ。どこよ、ここ」

 春奈が我が儘を言って訪れたのは、有名なお店や観光スポットだけでした。景色から想定できないためもう一度舌打ちを行い、しぶしぶ歩き始めました。

「……ここで文句を言っても仕方がないわ。文句を言うのは、神殿に戻ってからにしましょ」

 どうして聖女の降臨を感知できないのよ!? どうにかしてそういう仕組みを作っておきなさいよ!!
 そう叱責すると決め、人を求めて草原を縦断していきます。


「どのくらい歩いたら、出会えるのかしら……?」

「暗くなる前に誰かと会わないと、野宿……。ムリムリっ、有り得ない!」

「誰かいなさいよ!! 早く現れなさいよ!!」

「もう……!! ホント、どこまでこの景色が続くのよ……!!」


 1時間歩いても2時間歩いても、3時間歩いても、誰にも出会えない。

「日が落ちて来てるし、そろそろ見つけられないとホントに野宿する羽目になっちゃう。いい加減にしなさいよ!! いいから早く見つかりなさ――……………………」

 出発して5回目となる休憩をしていた時のことでした。茜色に染まり始めた空に怒声を飛ばしていた春奈は、まるで銅像のように固まりました。

「………………………………」

 10秒経っても20秒経っても、ピクリともしない。

「………………………………な、んで……?」

 30秒経ってようやく声が絞り出せるほど、激しく動揺した理由。それは、ついさっきまで怒鳴りつけていた『空』にありました。


「全然、気が付かなかった……。なんで……。月が、2つあるの……!?」


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