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第2話 逆監視1日目 監視前
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「おはようございますっス、ミウヴァ様! ゆうべ、バッチリ仕込んできましたっスよっ」
翌朝の8時過ぎ。ラズフ様が自室にいらっしゃって、昨夜のことを説明してくださいました。
映鏡の確認をしに行ったら『少なくとも初日は、心を入れ替えていたようだな』と殿下が言い、ラズフ様は内心激怒。とても腹が立ったので、各人の私室も含めて120も設置してくださったようです。
「いつもでも、どこでもチェックできますっスよ。祈りの前に、今の様子を確認してみますっスか?」
「件の変化は、時間を鑑みると今日の祈りの直後から発生します。それに今日はこんなものを御用意しましたので、よろしければ召し上がってくださいませんか?」
テーブルに置いてあった袋を取り、両手で差し出してみます。
この中に入っているのは、クッキー。あのように怒ってくださったことなどへの感謝を込めて、早起きして作ってみました。
「こちらはプレーンとチョコチップでして、チョコチップは今が一番おいしい時間帯のはずなのですよ。いかがでしょうか?」
「当然、喜んでいただくっスよっ。ありがとうございますっスっ!」
すぐさま同じく両手で受け取ってくれて、「失礼しますっス」。部屋に零さないよう床に座り、更に膝の上にはハンカチを敷いて、チョコチップクッキーを口へと運びます。
十年ぶりの、手作りクッキー。お気に召しますでしょうか?
「もぐもぐもぐもぐ…………。いや、これは美味っスねっ!」
目を閉じて味わっていたそのお顔に、笑顔の花が咲きました。
間に入った『いや』は、全く以て理解ができませんが。気に入っていただけたことは、分かります。
「生地の『しっとり』と『サクサク』加減が絶妙で、チョコも程よい柔らかさっスね。プレーンもシンプルイズベストで、最高っスよ!」
「お口に合って、一安心です。口内が乾燥しますから、こちらのお水もどうぞ」
「どうもっス。よかったら――って言い方はヘンなんスけど、ミウヴァ様も一緒に食べませんっスか? 美味しいものは、場にいる全員で食べないとっスよ」
「…………そう、ですね。ではお言葉に甘えて、一枚いただきますね」
「一枚と言わず、どんどん食べましょうっスよっ。俺も、その方がもっともっと美味しく食べれますっスからっ」
手に置いてもらったチョコチップクッキーを食べ、続いて彼ももう一枚口にします。そうすればラズフ様の笑顔はさっきより数割増しとなり、それを目にしていると私も更に美味しさが増したような気がしました。
「………………。気、ではありませんね」
勘違いなどでは、ありません。確かに、味見の時よりも美味しく感じています。
「これは……。…………気付きませんでしたが、聖女になってから『色々なこと』を忘れてしまっていたようです。この方は、本当に不思議な方ですね」
「? ミウヴァ様?」
「すみません、なんでもありませんよ。そろそろ時間になりますので、今日の祈りを行いますね」
別室で普段着のワンピースから清められたキトンに着替え、日課を始めます。
専用の大部屋の中心で両膝を付き、胸の前で両手を合わせて目を閉じる。その状態で国と民の平和を心から願い、これを午前9時~午後2時まで――聖女の力が最も強くなる時間帯に行えば、終わり。
聖女になったばかりの頃は大変で、祈りが済めば疲労で倒れていました。そのまま熱を出してしまった日も、少なくありませんでした。けれど経験を積んだ今は、疲れはしますがその後も日常生活を送れるようになっています。
ですので日課が済んだ後は、監視返しの始まり。私とラズフ様は大部屋を借りて椅子に座り、宙に展開された多数の映鏡を見上げたのでした。
翌朝の8時過ぎ。ラズフ様が自室にいらっしゃって、昨夜のことを説明してくださいました。
映鏡の確認をしに行ったら『少なくとも初日は、心を入れ替えていたようだな』と殿下が言い、ラズフ様は内心激怒。とても腹が立ったので、各人の私室も含めて120も設置してくださったようです。
「いつもでも、どこでもチェックできますっスよ。祈りの前に、今の様子を確認してみますっスか?」
「件の変化は、時間を鑑みると今日の祈りの直後から発生します。それに今日はこんなものを御用意しましたので、よろしければ召し上がってくださいませんか?」
テーブルに置いてあった袋を取り、両手で差し出してみます。
この中に入っているのは、クッキー。あのように怒ってくださったことなどへの感謝を込めて、早起きして作ってみました。
「こちらはプレーンとチョコチップでして、チョコチップは今が一番おいしい時間帯のはずなのですよ。いかがでしょうか?」
「当然、喜んでいただくっスよっ。ありがとうございますっスっ!」
すぐさま同じく両手で受け取ってくれて、「失礼しますっス」。部屋に零さないよう床に座り、更に膝の上にはハンカチを敷いて、チョコチップクッキーを口へと運びます。
十年ぶりの、手作りクッキー。お気に召しますでしょうか?
「もぐもぐもぐもぐ…………。いや、これは美味っスねっ!」
目を閉じて味わっていたそのお顔に、笑顔の花が咲きました。
間に入った『いや』は、全く以て理解ができませんが。気に入っていただけたことは、分かります。
「生地の『しっとり』と『サクサク』加減が絶妙で、チョコも程よい柔らかさっスね。プレーンもシンプルイズベストで、最高っスよ!」
「お口に合って、一安心です。口内が乾燥しますから、こちらのお水もどうぞ」
「どうもっス。よかったら――って言い方はヘンなんスけど、ミウヴァ様も一緒に食べませんっスか? 美味しいものは、場にいる全員で食べないとっスよ」
「…………そう、ですね。ではお言葉に甘えて、一枚いただきますね」
「一枚と言わず、どんどん食べましょうっスよっ。俺も、その方がもっともっと美味しく食べれますっスからっ」
手に置いてもらったチョコチップクッキーを食べ、続いて彼ももう一枚口にします。そうすればラズフ様の笑顔はさっきより数割増しとなり、それを目にしていると私も更に美味しさが増したような気がしました。
「………………。気、ではありませんね」
勘違いなどでは、ありません。確かに、味見の時よりも美味しく感じています。
「これは……。…………気付きませんでしたが、聖女になってから『色々なこと』を忘れてしまっていたようです。この方は、本当に不思議な方ですね」
「? ミウヴァ様?」
「すみません、なんでもありませんよ。そろそろ時間になりますので、今日の祈りを行いますね」
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