14 / 23
5話 必然のトラブル、発生(4)
しおりを挟む
「いよいよ終わりの時よっ! やあああああああああああああっっ!!」
「はあああああああああああああああっっ!!」
飛び上がった私達は、揃って右の前足を力強く振る。
疲労と痛みのせいで、やっぱり攻撃速度はあちらが上。私のよりも早く爪が近づいてきて――そのまま、私を引っ掻いた。
ただし。
彼女の爪は勢いよく、私の左前足を引っ掻いた。
「なっ!? 片方の足で止めたっ!?」
「今までは背中を攻撃されてる間に倒してきたから、『どこかを犠牲にすれば、その間に勝てる』って思ってたの。だから、貴方にも勝たせてもらうわっっ!!」
あちらと同時に振った右足はずっと動き続けていて、私はようやく遅れて攻撃を実行。その爪にスピードは、左程なかったけれど――。左足を攻撃している相手は防御する余裕も避ける余裕もなくって、こちらの攻撃は敵の弱点を的確に捉えた。
「ぎぁ……っ! かおが……っ! ウチも、かお、がぁ……っっ。いた、いぃぃ……!」
「ごめん、なさいね……っ。貴方達はそのまま、そこで苦しんでいて……っ」
どうにか三人を倒した私は、身体の向きを進路に戻す。
勝利を喜んだり安心したりしている暇は、ない。だってこの身体じゃ、今までのようには走れないから……。
「少なくとも式の開始三十分前にはお城に着かないといけなくて、その時まで残りは1時間でおよそ1キロ……。かなり厳しい、わね……」
走るのに大事な足が二か所大怪我をしていて、体力も随分減っている。しかも着いたあとは門番の人達を振り切って敷地に入らないといけないから、もっと大変になっちゃう。
「……でも……。やらなきゃ、いけない……」
大好きな人に、辛い思いをして欲しくはないから。私は進んで、何が何でも間に合わせる。
「…………アリス。ここからも今までみたいに、根性でどうにかしましょ……っ!」
私はいつものように、前足で頬をパチン。痛む足で強めに叩いて身体と心を奮起させ、お城へと続く道を再び走り始めたのでした。
「はあああああああああああああああっっ!!」
飛び上がった私達は、揃って右の前足を力強く振る。
疲労と痛みのせいで、やっぱり攻撃速度はあちらが上。私のよりも早く爪が近づいてきて――そのまま、私を引っ掻いた。
ただし。
彼女の爪は勢いよく、私の左前足を引っ掻いた。
「なっ!? 片方の足で止めたっ!?」
「今までは背中を攻撃されてる間に倒してきたから、『どこかを犠牲にすれば、その間に勝てる』って思ってたの。だから、貴方にも勝たせてもらうわっっ!!」
あちらと同時に振った右足はずっと動き続けていて、私はようやく遅れて攻撃を実行。その爪にスピードは、左程なかったけれど――。左足を攻撃している相手は防御する余裕も避ける余裕もなくって、こちらの攻撃は敵の弱点を的確に捉えた。
「ぎぁ……っ! かおが……っ! ウチも、かお、がぁ……っっ。いた、いぃぃ……!」
「ごめん、なさいね……っ。貴方達はそのまま、そこで苦しんでいて……っ」
どうにか三人を倒した私は、身体の向きを進路に戻す。
勝利を喜んだり安心したりしている暇は、ない。だってこの身体じゃ、今までのようには走れないから……。
「少なくとも式の開始三十分前にはお城に着かないといけなくて、その時まで残りは1時間でおよそ1キロ……。かなり厳しい、わね……」
走るのに大事な足が二か所大怪我をしていて、体力も随分減っている。しかも着いたあとは門番の人達を振り切って敷地に入らないといけないから、もっと大変になっちゃう。
「……でも……。やらなきゃ、いけない……」
大好きな人に、辛い思いをして欲しくはないから。私は進んで、何が何でも間に合わせる。
「…………アリス。ここからも今までみたいに、根性でどうにかしましょ……っ!」
私はいつものように、前足で頬をパチン。痛む足で強めに叩いて身体と心を奮起させ、お城へと続く道を再び走り始めたのでした。
15
あなたにおすすめの小説
後悔などありません。あなたのことは愛していないので。
あかぎ
恋愛
「お前とは婚約破棄する」
婚約者の突然の宣言に、レイラは言葉を失った。
理由は見知らぬ女ジェシカへのいじめ。
証拠と称される手紙も差し出されたが、筆跡は明らかに自分のものではない。
初対面の相手に嫉妬して傷つけただなど、理不尽にもほどがある。
だが、トールは疑いを信じ込み、ジェシカと共にレイラを糾弾する。
静かに溜息をついたレイラは、彼の目を見据えて言った。
「私、あなたのことなんて全然好きじゃないの」
仕事で疲れて会えないと、恋人に距離を置かれましたが、彼の上司に溺愛されているので幸せです!
ぽんちゃん
恋愛
――仕事で疲れて会えない。
十年付き合ってきた恋人を支えてきたけど、いつも後回しにされる日々。
記念日すら仕事を優先する彼に、十分だけでいいから会いたいとお願いすると、『距離を置こう』と言われてしまう。
そして、思い出の高級レストランで、予約した席に座る恋人が、他の女性と食事をしているところを目撃してしまい――!?
私を見下していた婚約者が破滅する未来が見えましたので、静かに離縁いたします
ほーみ
恋愛
その日、私は十六歳の誕生日を迎えた。
そして目を覚ました瞬間――未来の記憶を手に入れていた。
冷たい床に倒れ込んでいる私の姿。
誰にも手を差し伸べられることなく、泥水をすするように生きる未来。
それだけなら、まだ耐えられたかもしれない。
だが、彼の言葉は、決定的だった。
「――君のような役立たずが、僕の婚約者だったことが恥ずかしい」
ある辺境伯の後悔
だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。
父親似だが目元が妻によく似た長女と
目元は自分譲りだが母親似の長男。
愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。
愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。
私の事を婚約破棄した後、すぐに破滅してしまわれた元旦那様のお話
睡蓮
恋愛
サーシャとの婚約関係を、彼女の事を思っての事だと言って破棄することを宣言したクライン。うれしそうな雰囲気で婚約破棄を実現した彼であったものの、その先で結ばれた新たな婚約者との関係は全くうまく行かず、ある理由からすぐに破滅を迎えてしまう事に…。
「身分が違う」って言ったのはそっちでしょ?今さら泣いても遅いです
ほーみ
恋愛
「お前のような平民と、未来を共にできるわけがない」
その言葉を最後に、彼は私を冷たく突き放した。
──王都の学園で、私は彼と出会った。
彼の名はレオン・ハイゼル。王国の名門貴族家の嫡男であり、次期宰相候補とまで呼ばれる才子。
貧しい出自ながら奨学生として入学した私・リリアは、最初こそ彼に軽んじられていた。けれど成績で彼を追い抜き、共に課題をこなすうちに、いつしか惹かれ合うようになったのだ。
最後に一つだけ。あなたの未来を壊す方法を教えてあげる
椿谷あずる
恋愛
婚約者カインの口から、一方的に別れを告げられたルーミア。
その隣では、彼が庇う女、アメリが怯える素振りを見せながら、こっそりと勝者の微笑みを浮かべていた。
──ああ、なるほど。私は、最初から負ける役だったのね。
全てを悟ったルーミアは、静かに微笑み、淡々と婚約破棄を受け入れる。
だが、その背中を向ける間際、彼女はふと立ち止まり、振り返った。
「……ねえ、最後に一つだけ。教えてあげるわ」
その一言が、すべての運命を覆すとも知らずに。
裏切られた彼女は、微笑みながらすべてを奪い返す──これは、華麗なる逆転劇の始まり。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる