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幕間 レイジSideその3(2)

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(エルサ・ナルマが、アリス・ワール様となっている、ですか。厄介かつ異様な状況ですね)

 レイジから説明を受けた従者・テオは、冷静に小声で反芻。いつもの如く平静を保ち、淡々と顎に右手をやった。

(ああ、荒唐無稽な状況になっている。そうなっている原因はともかく、アリスの身柄を確保できればヤツを捕らえられる。至急前日の彼女の足取りを調べ、協力者の存在を想定して警戒しつつそこを徹底的に探ってくれ。この手の無断捜査は様々な問題が発生してしまうが、僕が全責任を取る)
(承知いたしました。ですが、レイジ様)
(ちゃんと、分かっているさ。……上手くいく確率は、半分もないという事をね……)


 これから現地へと向かい、調べ回ってアリスを見つけ、ここに戻って報告する。
 城と屋敷の距離を考えると、行き来だけで8割以上の時を使ってしまう。そのため当然、むこうで動ける時間は少なくなってしまう。


(式に間に合わなければ、全ての儀をエルサ・ナルマと行わないといけなくなってしまう……。それは、アリスを愛する者として絶対に阻止しなければならない……)

 どんな事情があろうとも、他の女性と身体を重ねる訳にはいかない。
 結婚に至るまで数々の交際を経験した父親に話したら、一笑されるだろう。けれど自分は、『そういう行為』をするのは生涯に一人だけ。
 その約束をしたアリス・ワールだけと、決めているのだ。

(……今日もう少し早くエルサに会えていれば、確率は違っていた――と嘆いても、どうしようもないな。テオ、よろしく頼む)
(畏まりました。できる限りの努力をしてまいります)

 従順で正しき心を持つテオは恭しく腰を折り曲げ、足音を極力立てずに素早くその場を去った。

 残りは、約2時間。

 レイジは従者に希望を託し、同時に自身も別の打開策を見出すべく、更に必死の思案を開始したのだった――。
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