16 / 23
幕間 レイジSideその3(2)
しおりを挟む
(エルサ・ナルマが、アリス・ワール様となっている、ですか。厄介かつ異様な状況ですね)
レイジから説明を受けた従者・テオは、冷静に小声で反芻。いつもの如く平静を保ち、淡々と顎に右手をやった。
(ああ、荒唐無稽な状況になっている。そうなっている原因はともかく、アリスの身柄を確保できればヤツを捕らえられる。至急前日の彼女の足取りを調べ、協力者の存在を想定して警戒しつつそこを徹底的に探ってくれ。この手の無断捜査は様々な問題が発生してしまうが、僕が全責任を取る)
(承知いたしました。ですが、レイジ様)
(ちゃんと、分かっているさ。……上手くいく確率は、半分もないという事をね……)
これから現地へと向かい、調べ回ってアリスを見つけ、ここに戻って報告する。
城と屋敷の距離を考えると、行き来だけで8割以上の時を使ってしまう。そのため当然、むこうで動ける時間は少なくなってしまう。
(式に間に合わなければ、全ての儀をエルサ・ナルマと行わないといけなくなってしまう……。それは、アリスを愛する者として絶対に阻止しなければならない……)
どんな事情があろうとも、他の女性と身体を重ねる訳にはいかない。
結婚に至るまで数々の交際を経験した父親に話したら、一笑されるだろう。けれど自分は、『そういう行為』をするのは生涯に一人だけ。
その約束をしたアリス・ワールだけと、決めているのだ。
(……今日もう少し早くエルサに会えていれば、確率は違っていた――と嘆いても、どうしようもないな。テオ、よろしく頼む)
(畏まりました。できる限りの努力をしてまいります)
従順で正しき心を持つテオは恭しく腰を折り曲げ、足音を極力立てずに素早くその場を去った。
残りは、約2時間。
レイジは従者に希望を託し、同時に自身も別の打開策を見出すべく、更に必死の思案を開始したのだった――。
レイジから説明を受けた従者・テオは、冷静に小声で反芻。いつもの如く平静を保ち、淡々と顎に右手をやった。
(ああ、荒唐無稽な状況になっている。そうなっている原因はともかく、アリスの身柄を確保できればヤツを捕らえられる。至急前日の彼女の足取りを調べ、協力者の存在を想定して警戒しつつそこを徹底的に探ってくれ。この手の無断捜査は様々な問題が発生してしまうが、僕が全責任を取る)
(承知いたしました。ですが、レイジ様)
(ちゃんと、分かっているさ。……上手くいく確率は、半分もないという事をね……)
これから現地へと向かい、調べ回ってアリスを見つけ、ここに戻って報告する。
城と屋敷の距離を考えると、行き来だけで8割以上の時を使ってしまう。そのため当然、むこうで動ける時間は少なくなってしまう。
(式に間に合わなければ、全ての儀をエルサ・ナルマと行わないといけなくなってしまう……。それは、アリスを愛する者として絶対に阻止しなければならない……)
どんな事情があろうとも、他の女性と身体を重ねる訳にはいかない。
結婚に至るまで数々の交際を経験した父親に話したら、一笑されるだろう。けれど自分は、『そういう行為』をするのは生涯に一人だけ。
その約束をしたアリス・ワールだけと、決めているのだ。
(……今日もう少し早くエルサに会えていれば、確率は違っていた――と嘆いても、どうしようもないな。テオ、よろしく頼む)
(畏まりました。できる限りの努力をしてまいります)
従順で正しき心を持つテオは恭しく腰を折り曲げ、足音を極力立てずに素早くその場を去った。
残りは、約2時間。
レイジは従者に希望を託し、同時に自身も別の打開策を見出すべく、更に必死の思案を開始したのだった――。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
641
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる