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第8話 切っ掛けは部室で(2)
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「『涼子より』って書いてあるのに、ユリの鞄から落ちた……。これ、どういうこと……?」
「おかしい、よね……。どうなってるの……?」
「橋本さんの手紙を、加藤さんが持ってるって……。なんなの……?」
部長の声を聞きつけ、現在室内に居た9人の部員全員が集まってきました。
計10人のテニス部員は戸惑いを露にしており、視線の先にいる百合もまた、酷く戸惑っていました。
((ど、どうして……!? どうして床に落ちているの……!?))
鞄はちゃんと閉めた。移動中に、一度も開けていないのに、そこにある。
((なんで……!? なんで……っ!? どうなってるの――っっ!!))
たまらず学校指定の鞄に目をやり、そうして気付いてしまいます。
鞄に、穴が開いていると。大した傷がついていなかった鞄に、なぜか、封筒が通るくらいの穴が開いていると。
((全然痛んでなかったのに……!? なっ、なにこれ!? なにこの穴!? なにが原因でこんな事に――))
「ねえ、ユリ。どういうこと?」
((――原因を考えてる場合じゃない。言い訳を考えないと!!))
チームメイトかつ同級生とはいえ、涼子と百合は他人。そんな者の手紙を持っているはずはありません。
このままでは偽装を疑われるため、百合は高速度で思考回路を働かせます。
((わたしが橋本の手紙を鞄に入れていても、おかしくはない理由……。それは……。それは…………))
「「「「「………………:」」」」」
((早く答えないと、誤魔化せない……っっ。おかしくない理由は……。理由は……っ。理由は…………………………そうだっ!!))
それはもはや、執念。百合はなんと僅か6秒で策が閃き、即座に解説が始まりました。
「これは、先ほど拾ったんです。登校中に校門の傍で見つけて、橋本さんの名前があったから拾って鞄に入れていたのですよ。会ったらお渡ししようと思って」
「…………リョウコは、今日来てないのに? 落ちてて、拾ったの?」
「それに加藤は橋本にイジワルとかをされてて、被害者と加害者じゃん。なのにそんな相手のを、わざわざ拾ったの?」
「きっとどこかで手紙の紛失に気付いて、これを見つけられずに来た道を引き返しているんだと思います。そして橋本さんは怖くて嫌な相手、ですけど……。お手紙は渡す相手が居て、届かないとその方が困ると思いまして。そのお相手の為に、そうしました」
百合はこれまで猫をかぶり、容姿と同じ性格――思い遣りのある大和撫子、と周囲に印象付けていました。
故に、誤魔化せる。部長と先輩部員に答えた彼女は、心の中でニヤリとしました。
今朝の出来事――。因果の応報――。
それによって、異変が起きているとも知らずに。
「おかしい、よね……。どうなってるの……?」
「橋本さんの手紙を、加藤さんが持ってるって……。なんなの……?」
部長の声を聞きつけ、現在室内に居た9人の部員全員が集まってきました。
計10人のテニス部員は戸惑いを露にしており、視線の先にいる百合もまた、酷く戸惑っていました。
((ど、どうして……!? どうして床に落ちているの……!?))
鞄はちゃんと閉めた。移動中に、一度も開けていないのに、そこにある。
((なんで……!? なんで……っ!? どうなってるの――っっ!!))
たまらず学校指定の鞄に目をやり、そうして気付いてしまいます。
鞄に、穴が開いていると。大した傷がついていなかった鞄に、なぜか、封筒が通るくらいの穴が開いていると。
((全然痛んでなかったのに……!? なっ、なにこれ!? なにこの穴!? なにが原因でこんな事に――))
「ねえ、ユリ。どういうこと?」
((――原因を考えてる場合じゃない。言い訳を考えないと!!))
チームメイトかつ同級生とはいえ、涼子と百合は他人。そんな者の手紙を持っているはずはありません。
このままでは偽装を疑われるため、百合は高速度で思考回路を働かせます。
((わたしが橋本の手紙を鞄に入れていても、おかしくはない理由……。それは……。それは…………))
「「「「「………………:」」」」」
((早く答えないと、誤魔化せない……っっ。おかしくない理由は……。理由は……っ。理由は…………………………そうだっ!!))
それはもはや、執念。百合はなんと僅か6秒で策が閃き、即座に解説が始まりました。
「これは、先ほど拾ったんです。登校中に校門の傍で見つけて、橋本さんの名前があったから拾って鞄に入れていたのですよ。会ったらお渡ししようと思って」
「…………リョウコは、今日来てないのに? 落ちてて、拾ったの?」
「それに加藤は橋本にイジワルとかをされてて、被害者と加害者じゃん。なのにそんな相手のを、わざわざ拾ったの?」
「きっとどこかで手紙の紛失に気付いて、これを見つけられずに来た道を引き返しているんだと思います。そして橋本さんは怖くて嫌な相手、ですけど……。お手紙は渡す相手が居て、届かないとその方が困ると思いまして。そのお相手の為に、そうしました」
百合はこれまで猫をかぶり、容姿と同じ性格――思い遣りのある大和撫子、と周囲に印象付けていました。
故に、誤魔化せる。部長と先輩部員に答えた彼女は、心の中でニヤリとしました。
今朝の出来事――。因果の応報――。
それによって、異変が起きているとも知らずに。
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