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07. 眠りの前のおしゃべり

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 ガシュウがフレアのことであれやこれや考えを巡らせて頭の中でパニックを起こしていると、ポフがふんわりと寝床に入ってきた。ガシュウの頬にポフのやわらかいブラウンの髪が触れ、寄り添ってくる。

「ポフ、もう寝るの?」

「もう寝る時間だよ」

「本当だ。いつの間にこんな時間」

 掛け時計に目を向ける。この家の時計は古い。正確な時刻は刻んでいないので曖昧な時刻のまま曖昧に過ごしているが、意外と生活のリズムは整っている。

「お弁当おいしかったよ。ありがとう。ごちそうさま」

「うん。騎士さまに伝えておくね」

「ガシュウ、帰ってきてからずっとシーツに潜り込んじゃって、難しい事でも考えているの?」

「え。あの。ううん。なんでもないよ」

 キスされた事を考えていたなんてとても言えない。とっさに上手い嘘もつけずに挙動不審になる。ポフは気にせずに続けた。

「お弁当、本当においしかったんだよ。ガシュウと一緒に食べたかったな。そうしたらもっとおいしかったと思うよ」

 ポフの幼い瞳には寂しさが滲んでいた。ガシュウはハッとしてポフを抱きしめた。

「ああ。ポフごめんね。ガシュウってば自分のことばかり考えてしまって、ポフに寂しい思いをさせちゃったね」

 ガシュウの白く長い指はポフの後頭部をなでた。

「ガシュウはね、騎士さまと食事をして楽しい思いをしたというのに、ポフにはひとりで食事をさせてしまったね。こんなガシュウは悪いガシュウだ。ごめんねポフ」

 ポフはガシュウの懐に潜り込んでギュッと抱きつくと目線だけをあげてガシュウと目を合わせた。

「もうガシュウ。そんなに謝らないで。半分残してあるから、あしたは一緒に食べようよ。それにガシュウの分のお弁当は手付かずでしょう?」

「ガシュウの分もポフがお食べよ」

「ダメ。ガシュウも一緒に食べるんだよ。ねえ、ガシュウ。ところで今日は騎士さまと食事に行ったの?」

「そうなの!みすぼらしいガシュウを見かねてね、騎士さまが食事に連れていってくださったの」

「ふうん。親切な騎士さまだね」

「うん。でも、ガシュウはポフのことばかり考えていたよ。ポフも連れてきてあげたい。ポフにもいっぱい食べさせてあげたい。そしたらガシュウは幸せ」

「フフッ、ガシュウってば。僕のことばかり気にしてないで、ガシュウも楽しんでよ。今日は楽しかったの?」

「楽しかった。食事もおいしかったけど、騎士さまとお喋りするのは楽しい」

「どんなこと話したの?」

 ぽつりぽつりと今日の出来事を話して、ポフは相槌を打って聴いてくれて、ポフも今日の出来事を話してくれて、何でもない日常を二人で話しながら、シーツにもぐり込んでその内うつらうつらしてきて、どちらともなく眠りにおちていった。

 深い眠りにいざなわれながら、心が溶けるような幸せを感じていた。
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