Our place ~転生乙女のジュラーレ魔法学院の日常~

龍希

文字の大きさ
5 / 69
序章 ~終わって始まった~

はじめまして。

しおりを挟む
 ユサユサユサユサ。
 ちょっと強い感覚で揺さぶられる。

 ――――だぁれ?まだ眠っていたいのに……。

 バチーン!! と叩く音。
 途端、激痛によって、あたしは覚醒した。

おぎゃあ!いたい おぎゃあ!いたいよー おぎゃあああ!!なにすんのよ

 ん?
 声が出てない?
 言葉になってない?

 口から出たのは、赤ん坊の泣き声だけだ。

「一時はどうなるかと思いましたが、これで一安心ですね。マスター」
 そう言って布にあたしを包むのは、瞳と長い髪は瑠璃色の中性的な美人だった。

 でも、感情が一切入っていない感じだ。
 物凄く違和感がする。

「では、通常任務に戻ります。何かありましたらお呼び下さい」
「解っているわ。有り難うね、ラピス。外にいる二人を呼んでくれる?」
「はい。了解致しました」
 あたしをベッドに横たわる人に渡すと、その部屋から出て行ったようだ。

 どうして出て行ったようなのかって?
 だって、首が回らないから、目で見える範囲しかここがどんな所か解らない。
 視界は物凄く狭い。
 見えるのは目の前にあるものだけだ。
 左右には、あたしを包む布がもっさり(?)してる。

 目の前には疲労の濃い顔をした、美女。
 化粧はしてないのに、すっきりとした顔立ちと少しきつめの目元が印象的。
 瞳の色はエメラルド、肌は疲労のせいだろうか青白い、頬にさらりと流れるストレートの白金の髪。
 あたしを見詰めて。

「ああ、良かった」
 安堵の声を上げて、微笑みを浮かべていた。

「母様!」
 声変わりのして無い声がする。

「ユーナ! 大丈夫かい?」
 低いテノールの優しい声が、美女に掛かる。

貴方!レオン コウ!」
 美女が破顔した。とても嬉しそうな笑顔だった。

 声を掛けた二人が、どんな人なのか見たいな~と思っていたら、ふわりと体が浮いた。
 視界がぐるっと回る。
 目に飛び込むのは、真っ白い簡素な内装と、出っ張った壁らしき所にデスプレイ(モニタのようなもの)がはめ込まれ何かを映し出していた。
 その下に、動く机の様な物の上に、ノートパソコンみたいなものと、太いペンみたいな物が置かれていた。
 見たことも無い空間だった。

「父様! 僕にも抱かせてっ!」
「だぁめ! 俺が先だぞ、コウ」
 あたしの真下の方で、男の子の声がする。
 懇願をいとも容易く制するテノールの美声と共に、その声の主があたしを覗きこんで頬擦りした。

「逢いたかったぞ、俺の可愛い愛娘~っ」
 嬉しそうに言うと、あたしを高い高い~ってして、頬にちゅっと口付けをした。

 テノールの美声の主は、柔らかな金髪で、ちょっとタレ目の青い瞳で、肌は小麦色で、マッチョ過ぎない均整の取れた体格の美丈夫だった。
 美丈夫の足元で、不満げな表情で見上げる美少年が一人。

「父様! ずるいーーっ!」
「レオン、コウにも抱かせてあげて下さい」
「しょうがないなぁ」
 残念そうに言い、美丈夫ことレオンはあたしをそっと渡した。

 きらきらとした眼差しを向けるコウ少年は可愛い。
 瞳は青でサファイアの様、髪はサラサラした白金の糸の様、肌は白く、まるでお人形さんのようだった。

「僕は、君のお兄ちゃんだよ~。よろしくね~」

 幸せそうな笑顔で、あたしに言った。
 この3人があたしの家族なんだ……。
 こそばゆい感じだけど、胸の奥がじ~んとなってしまう。

「あ、あ、あ、泣いちゃう?」
 お兄コウちゃんの慌てた声に、はっとなったが抑え切れなかった。

 感情と意識と肉体とが同調しれてないから、泣きそうになったら止められない。
 涙と声が爆発する様に出ていった。

おぎゃああああうえぇぇん
「泣かないで、泣かないで」
「お兄ちゃんは怖くないよ~よしよし」
 兄のコウは必死に泣かないでと声を掛けて、父のレオンは、ぽんぽんぽんと背中を優しく叩いてくれる。

 でも。
 逆にその優しさが、一心に向けてくれる愛情が嬉しくて、涙が、感情が止まらない。

おぎゃああああああうれしいのありがとう

 あたしは泣き止む頃には泣き過ぎで疲れてしまい、いつの間にか眠りに落ちていった。



しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

弱いままの冒険者〜チートスキル持ちなのに使えるのはパーティーメンバーのみ?〜

秋元智也
ファンタジー
友人を庇った事からクラスではイジメの対象にされてしまう。 そんなある日、いきなり異世界へと召喚されてしまった。 クラス全員が一緒に召喚されるなんて悪夢としか思えなかった。 こんな嫌な連中と異世界なんて行きたく無い。 そう強く念じると、どこからか神の声が聞こえてきた。 そして、そこには自分とは全く別の姿の自分がいたのだった。 レベルは低いままだったが、あげればいい。 そう思っていたのに……。 一向に上がらない!? それどころか、見た目はどう見ても女の子? 果たして、この世界で生きていけるのだろうか?

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

悪役令嬢が処刑されたあとの世界で

重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。 魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。 案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

灼熱の連撃(ラッシュ)と絶対零度の神速剣:転生した双子のチート令嬢は、その異能で世界を救う

夜詩榮
ファンタジー
あらすじ 現代日本。活発な空手家の娘である姉・一条響と、冷静沈着な剣道部員である妹・一条奏は、突然の交通事故に遭う。意識が薄れる中、二人を迎え入れたのは光を纏う美しい女神・アステルギアだった。女神は二人に異世界での新たな生と、前世の武術を応用した規格外のチート能力を授ける。そして二人は、ヴァイスブルク家の双子の姉妹、リーゼロッテとアウローラとして転生を果たす。 登場人物 主人公 名前(異世界) 名前(前世) 特徴・能力 リーゼロッテ・ヴァイスブルク 一条いちじょう 響ひびき 双子の姉。前世は活発な空手家の娘で黒帯。負けず嫌い。転生後は長い赤みがかった金髪を持つ。チート能力は、空手を応用した炎の魔法(灼熱の拳)と風の魔法(超速の体術)。考えるより体が動くタイプ。 アウローラ・ヴァイスブルク 一条いちじょう 奏かなで 双子の妹。前世は冷静沈着な剣道部員。学業優秀。転生後は長い銀色の髪を持つ。チート能力は、剣術を応用した氷/水の魔法(絶対零度の剣)と土の魔法(鉄壁の防御・地形操作)。戦略家で頭脳明晰。

処理中です...