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第1章

女王陛下と母様と父様

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 ラグナリア星、唯一の大陸『アイフィロス大陸』北部にある王都そこでは、本日から3日間、街を挙げてのお祭り騒ぎであった。

 才媛の美姫と謳われ、女王となったセリティア・ラグナリア陛下の在位5年目(戴冠5周年)を記念にした式典&夜会が王宮では行われる。

 そのお祝いにかこつけたお祭りが、街中の公園などで市民主催で行われてもいた。

 女王陛下は意外とこの星の民には、人気の存在であった。
 民の声を聞きその声と取り入れたり出来る豪傑な人でもあり、人柄も民から慕われていた。
 その為か、彼女が王になって5年目なんだから、お祝いしようと言う事で街を挙げてのどんちゃん騒ぎに発展したとか何とか。

 公園内には出店が出たり、音楽の道を志している者や本職に至るまで園内で音楽を奏でたり、舞踏家ダンサーはその音楽に合わせ踊りを披露したり、夜には花火が打ち上げられたりと、かなりの盛り上がり具合である。

「……」
 そんな街の様子を馬車の中から見て、私は唖然とした。

 物凄い楽しそうな皆の姿に驚いた。
 今日は、驚きの連続でなんともいえない心境になっている。

 だってねぇ~。大陸の西部の宇宙港から、どんなエアカー(反重力で動く車)に乗ってどんな道を走るのかと思ったら……地下だった。

 碁盤の目の様に張り巡らされた地下道を走るエアカーに乗って、目的地に近い昇降口で下車し地上へと戻る。
 このエアカーなんと国民は皆タダだそうな。
 その代わり、地上にあるのは人力車や馬車や鉄道で見目の良い感じの作り、観光にも活用されている。こちらは国民も有料。

 多少の不便があっても、職業に就ける要素をと言う事でそう言った政策を取っているんだって。
 その甲斐あって、エアカーで遠方から働きに通えたりと国民にとっては物凄く重宝し、かつ恩恵を受けるという良い循環を作り出していた。

 宇宙港からここへ来るまで、女王様を讃える垂れ幕をみたり、詩を歌ったりしている人を見た。
 そんなワケで、女王様は超人気者だった。
 そんな人と母様が親友って、どんな経緯が合ったのか知りたくなった。

「ねぇ、母様? 女王様とおトモダチなんだよね?」
 向かい側に座る母に問い掛けた。

 今日の母様はの髪型は、綺麗な白金の髪をポニーテールにしている。
 瞳の色と同じエメラルドカラーのピアスとネックレスをして、服は生成り色の生地に華麗な刺繍を施したパンジャビ風ドレスを着ている。
 異国情緒溢れる衣装なのに、さらっと着こなしていた。

「ええ、そうよ」
「どんな人なの?」
「そうねぇ……強くて、人を見る目があって、自分が認めた人には優しい人だわ」

「強い人なんだ?」
「ええ、強いわよ~。何て言ったって私とレオンを取り合った人だもの」
「へ?」
 私の口から間抜けな声が出た。

 レオンって、父様のことよね!?
 女王様と取り合ったの!?
 それは、マジですか母様!

 恐る恐る聞き返してみる。
「母様、今、父様を取り合ったって聞こえたけど?」
「うん、そうよ。でも、セリティア……セリは最終的には諦めちゃったの」

「諦めたって?」
「女王になると決めてたから。私もセリも、レオンにとって、宇宙考古学が何よりも大好きなのを知ってるから、彼を星に縛り付ける事になるのを由としなかったの。だから、身を引いたのね」

「で、私が猛アタックして結婚したの。それこそなりふり構ってなかったわね。学院を卒業する前に何とかしなきゃって」
「母様、もしかして学生結婚だったの?」
「頑張ったのよ~。最後はコウのお陰で結婚出来たんだけどね」

「……」
 ニコニコ笑う母様に、私は呆然するしかない。
 これは、間違いなく、父様が罠にハマったんだろうなって思う。

 それでも、父様が母様の事を愛してるんだろうなって事はわかる。
 父様が帰って来る時は母様も凄く嬉そうだし、父様も母様に会えた時の表情とかで嬉しいんだろうなって分かる。

 愛妻家で、家族思いの父様だ。
 時々だけど、私に対してねちっこい。
 構わないと妙に拗ねて、うだうだと言うのよね。

 毎回「父様お帰り~大好き~!」ほっぺにチュー出来ません。
 我が家の儀式なんだけどね~。
 母様と私が、父様と兄様にお帰りってすると。
 父様と兄様が、私と母様にただいまってするの。
 逆もまた然り。
 ほっぺにチューは挨拶であり、神聖な儀式でもあった。

 でもね! でもね!!
 恥ずかしいのよ!!
 父様と兄様は、美形さんだから特に!

 実の父と兄にときめいてどーすんのさー! と、何度突っ込んだ事か。
 困るね本当に。
 人前でもやらされたりするし、この先なんとかしないといけないよね。
 ラブラブ家族恐るべし!!

 この王都にある、母様の実家『アマハ家』邸宅に馬車は着実に近付いていた。
 父様と兄様の待っている邸宅です。
 私が確実にやらされるであろう儀式に、小さく溜め息が零れたのは言うまでも無い。
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