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第2章
錬金術と魔法と究極な取引
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世界は何時も閉じられた、閉鎖空間。
沢山の管を身体に付けて、ベッドに横たわったまま。
何の為に生きているのだろう?
何でこんなに苦しんで生きているのだろう?
何よりも自分を思ってくれている人達に負担を掛けているのだろう。
厄介者の自分を慈しんでくれる家族にすまないと毎日思う。
ただ、自分に出来る事は酷く少ない。
毎日笑顔を見せる事も出来ず。
か細い呼吸をして、命を繋ぐだけ。
この厭わしい身体を捨てて、バイオロイド化出来ればいいのにと思う。
バイオロイドは人間の脳とその人間の使える一部の細胞や臓器などを生体と機械を融合させて、半アンドロイド化させるようなものである。
成人のバイオロイドを作るだけで、小さな国の国家予算並みの莫大な金が必要になるのも事実だが。
とは言え、今の自分では、生きている部分が脳と皮膚だけになってしまうが、この19年間ベッドだけの閉鎖空間に比べたらそんな事些細なことだ。
動けずただひたすら苦しいのを我慢する毎日と、動けて物を触ったり出来る日々は途方もない幸福だ。
家族達もまたそれを望んでいるが、この死にかけた身体を維持するだけが精一杯だ。
そう、それだけの貯えが家には無いのだ。
疲弊し掛けた家族達に苦労はもう掛けたくない。
死を待つだけの毎日ならば、いっそ殺してくれと思う。
そんな日々の中、家族と病院関係者以外の来訪者が訪れた。
「初めまして。ソード=ケー・ミィーヤァ」
にっこりと笑う青年に驚き、正直戸惑った。
この部屋以外の外を真の意味で知らないので、美醜の基準は良く分からないが、恐ろしく整った顔立ちの青年だった。
ベッドの脇に置かれた椅子に座って彼は切り出して来た。
「俺の名は、コウ・ルウィン・アマハ。単刀直入に言うが、君に取り引きを持ち掛けに来た」
「取り引き?」
「ああ。君にとっては悪い話じゃ無いと思うが、君の両親は君の気持ちを尊重すると言う事だったので直接話に来た」
「どんな内容ですか?」
「君は、バイオロイド化を望んでいると言う話だが、それに間違いはないかな?」
「ええ、望んではいますが……夢物語でしかないですけどね」
僕が自嘲気味に笑うと、彼はじっと僕を見詰めていた。
そして、一拍置いて、彼は口を開いた。
「夢物語でないとしたら、君はその話を聞きたい?」
「えっ?」
「但し、それ相応の条件があるがどうする?」
「そんな話有る訳がっ!」
「そうだね。そんな話、普通は無いね」
「実験台って事ですか?」
咄嗟に思い浮かんだのは、テスト的な被験者を探しているとかだった。
「いいや、違う。ある人物の護衛と言うか、監視とでも言うのかな……その人に危険が及ばない様に気を付けて貰いたい」
「でも、僕の体は見ての通りの状態ですよ?」
「護衛に就いて貰う期間は数年間、大体5年ほどになると思う。その間は動物の形をした身体のバイオロイドに入って貰う」
「ええっ!? 人型じゃないって、人型のバイオロイドを作るのだって相当なお金がいるのに、それ以外も用意するって事ですか?!」
「ああ、君が望むバイオロイドの身体が出来上がるまでは違う身体に入って貰い、且つ対象を護衛監視して貰うのが条件だ。これを遂行してくれるのならば、君が望む年齢から普通に年をある程度経て相当する年齢の外見のバイオロイドをその都度用意しても構わない」
「なっ……それは、大国の国家予算並みになるんじゃ……」
ぎょっとしている僕に、コウは平然と答える。
「そうだね、その位はいくだろうね。でも、それよりも守らなければならないんだ。なんとしてでもね。だから、必ず護衛をしてくれる者が必要なんだ。君はそれに適う存在だと思うから……」
強い意志を宿した瞳の彼に一切の偽りが無い様に思えた。
「貴方は一体どういう人なんですか? 国家予算並みの大金を動かせるなんて常軌を逸していると思えますが……」
「まぁ、普通にバイオロイドを発注したら国家予算はいくだろうけど、バイオロイドやアンドロイドを作成しているグループ企業があるからその辺は安心していい。ちなみに、俺の祖父は宇宙に1つしかない魔法学院の理事をしているよ。名前、聞いた事はないかな?」
にっこりと笑って言うコウに、僕は更に彼を凝視してしまった。
「ジュラーレ学院ですか?魔法適性が無い者は入れないと有名な?」
「ん~、実際は魔法適性なくても宇宙工学科には入れるんだけどね。巷では魔法適性の方で知られているのか……」
「ええ、魔法は限られた者しか使えない秘法とも言われてますし、魔法使いの乗った宇宙船は加護あるって言われてます」
「とは言え、魔法は万能じゃないよ。守りたい者を確実に守れる訳じゃない。だからこそ、君の助けが必要なんだ。この依頼受けてくれるかな?もし受けてくれるなら、君の望みを叶えるよ」
「その言い方ですと、危険はあるかもしれないって事ですか?」
含みを持った言葉に、そんな気がして問い掛けた。
「多少はね、あると思う。だけど、それを回避する術を仮の身体に組み込むし、あくまで君は護衛対象を監視し、もしも危険が及んだ時には知らせてくれるだけでいい」
「……」
黙り込む僕に、コウは小さく苦笑する。
「1ヶ月後に答えを聞かせて欲しい」
そう言って彼は去って行った。
僕にとって、18年という歳月は長かったのか、はたまた短かったのかは分らない。
分るのは、狭い世界で生きて来たと言う事実だけだった。
そして、苦しんでいた日々と別れると言う事は、僕の為に苦労をしてきた家族を解放出来る事。
この先、生身の身体が惜しかったと思える日が来るのかは分らないが、先が無い未来を選ぶつもりは無い。
そうして――――僕は、未来を選んだ。
沢山の管を身体に付けて、ベッドに横たわったまま。
何の為に生きているのだろう?
何でこんなに苦しんで生きているのだろう?
何よりも自分を思ってくれている人達に負担を掛けているのだろう。
厄介者の自分を慈しんでくれる家族にすまないと毎日思う。
ただ、自分に出来る事は酷く少ない。
毎日笑顔を見せる事も出来ず。
か細い呼吸をして、命を繋ぐだけ。
この厭わしい身体を捨てて、バイオロイド化出来ればいいのにと思う。
バイオロイドは人間の脳とその人間の使える一部の細胞や臓器などを生体と機械を融合させて、半アンドロイド化させるようなものである。
成人のバイオロイドを作るだけで、小さな国の国家予算並みの莫大な金が必要になるのも事実だが。
とは言え、今の自分では、生きている部分が脳と皮膚だけになってしまうが、この19年間ベッドだけの閉鎖空間に比べたらそんな事些細なことだ。
動けずただひたすら苦しいのを我慢する毎日と、動けて物を触ったり出来る日々は途方もない幸福だ。
家族達もまたそれを望んでいるが、この死にかけた身体を維持するだけが精一杯だ。
そう、それだけの貯えが家には無いのだ。
疲弊し掛けた家族達に苦労はもう掛けたくない。
死を待つだけの毎日ならば、いっそ殺してくれと思う。
そんな日々の中、家族と病院関係者以外の来訪者が訪れた。
「初めまして。ソード=ケー・ミィーヤァ」
にっこりと笑う青年に驚き、正直戸惑った。
この部屋以外の外を真の意味で知らないので、美醜の基準は良く分からないが、恐ろしく整った顔立ちの青年だった。
ベッドの脇に置かれた椅子に座って彼は切り出して来た。
「俺の名は、コウ・ルウィン・アマハ。単刀直入に言うが、君に取り引きを持ち掛けに来た」
「取り引き?」
「ああ。君にとっては悪い話じゃ無いと思うが、君の両親は君の気持ちを尊重すると言う事だったので直接話に来た」
「どんな内容ですか?」
「君は、バイオロイド化を望んでいると言う話だが、それに間違いはないかな?」
「ええ、望んではいますが……夢物語でしかないですけどね」
僕が自嘲気味に笑うと、彼はじっと僕を見詰めていた。
そして、一拍置いて、彼は口を開いた。
「夢物語でないとしたら、君はその話を聞きたい?」
「えっ?」
「但し、それ相応の条件があるがどうする?」
「そんな話有る訳がっ!」
「そうだね。そんな話、普通は無いね」
「実験台って事ですか?」
咄嗟に思い浮かんだのは、テスト的な被験者を探しているとかだった。
「いいや、違う。ある人物の護衛と言うか、監視とでも言うのかな……その人に危険が及ばない様に気を付けて貰いたい」
「でも、僕の体は見ての通りの状態ですよ?」
「護衛に就いて貰う期間は数年間、大体5年ほどになると思う。その間は動物の形をした身体のバイオロイドに入って貰う」
「ええっ!? 人型じゃないって、人型のバイオロイドを作るのだって相当なお金がいるのに、それ以外も用意するって事ですか?!」
「ああ、君が望むバイオロイドの身体が出来上がるまでは違う身体に入って貰い、且つ対象を護衛監視して貰うのが条件だ。これを遂行してくれるのならば、君が望む年齢から普通に年をある程度経て相当する年齢の外見のバイオロイドをその都度用意しても構わない」
「なっ……それは、大国の国家予算並みになるんじゃ……」
ぎょっとしている僕に、コウは平然と答える。
「そうだね、その位はいくだろうね。でも、それよりも守らなければならないんだ。なんとしてでもね。だから、必ず護衛をしてくれる者が必要なんだ。君はそれに適う存在だと思うから……」
強い意志を宿した瞳の彼に一切の偽りが無い様に思えた。
「貴方は一体どういう人なんですか? 国家予算並みの大金を動かせるなんて常軌を逸していると思えますが……」
「まぁ、普通にバイオロイドを発注したら国家予算はいくだろうけど、バイオロイドやアンドロイドを作成しているグループ企業があるからその辺は安心していい。ちなみに、俺の祖父は宇宙に1つしかない魔法学院の理事をしているよ。名前、聞いた事はないかな?」
にっこりと笑って言うコウに、僕は更に彼を凝視してしまった。
「ジュラーレ学院ですか?魔法適性が無い者は入れないと有名な?」
「ん~、実際は魔法適性なくても宇宙工学科には入れるんだけどね。巷では魔法適性の方で知られているのか……」
「ええ、魔法は限られた者しか使えない秘法とも言われてますし、魔法使いの乗った宇宙船は加護あるって言われてます」
「とは言え、魔法は万能じゃないよ。守りたい者を確実に守れる訳じゃない。だからこそ、君の助けが必要なんだ。この依頼受けてくれるかな?もし受けてくれるなら、君の望みを叶えるよ」
「その言い方ですと、危険はあるかもしれないって事ですか?」
含みを持った言葉に、そんな気がして問い掛けた。
「多少はね、あると思う。だけど、それを回避する術を仮の身体に組み込むし、あくまで君は護衛対象を監視し、もしも危険が及んだ時には知らせてくれるだけでいい」
「……」
黙り込む僕に、コウは小さく苦笑する。
「1ヶ月後に答えを聞かせて欲しい」
そう言って彼は去って行った。
僕にとって、18年という歳月は長かったのか、はたまた短かったのかは分らない。
分るのは、狭い世界で生きて来たと言う事実だけだった。
そして、苦しんでいた日々と別れると言う事は、僕の為に苦労をしてきた家族を解放出来る事。
この先、生身の身体が惜しかったと思える日が来るのかは分らないが、先が無い未来を選ぶつもりは無い。
そうして――――僕は、未来を選んだ。
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