Our place ~転生乙女のジュラーレ魔法学院の日常~

龍希

文字の大きさ
25 / 69
第2章

仕込みはばっちり?

しおりを挟む
 豪華な廊下をてくてくと歩く。
 私の足元では、黒猫にみえる黒豹のソードがトテトテトテと付いて回る。

 あぅ~~。可愛いな~。
 思わず顔が綻ぶ。

「にゃぁぁ」
 目が合うと、ソードが鳴く。

 何だよって返事をされた気になる。
 たぶん、間違ってはいないだろう。
 外では猫として振舞うと言っていたので、その通りの反応だけどね。

 二人(今は一匹だけど)して、階段を使って一階へ移動する。
 建物は10階建てで、各階への移動手段はエレベーターと階段の2つだけど、この階段は音声認識でエスカレーターとなる。
 基本的には稼働していないので、上に乗った後『3階へ』と言えばその階まで移動してくれるという優れもの。
 自力で行くのを好む人は、そのまま上がって行けばいいと言う寸法だ。

 ちなみに私の部屋は2階にある。
 ソードの出入りは、窓からでも楽々な位置の部屋でもある。
 まぁ、家族の誰かが手を回してこの部屋に決めたのかもしれないけど。
 職権乱用はどこまでいくのかを考えたら、ちょっと頭が痛くなるわ、ホント。

 まず一番に散策する場所は、各寮で区切られた中庭だ。
 窓から見えた庭が、凄かった。
 イングリッシュガーデンぽい感じの作りだったので、お茶会したら映えそうと思ったのでじっくり覗いてみたいと素直に思った。
 事前情報で、それぞれの寮の区切り毎に庭も違うらしいとの事を聞いていたので興味が湧いていた。
 あと、お祖父様から「入寮したら中庭を必ず見においで」と言われていたのもあるので、最初は中庭に探索するのを決めていた。

 当初の予定と違うのは、黒豹のソードがナイト役を務めてくれることかな。
 勝手知ったる我が家っぽい足取りのニャンコ風な彼。
 てとてとてと……と歩いていても、寮内にいるすれ違う生徒の殆どは気にしていない様子が見てとれた。
 どうやら、箱に入ったのは仕込みみたいなものだったようだ。
 兄様からのメッセンジャーとして態々箱に入って、自己紹介したってワケみたい。

 中庭へと続くドアは、木製風の扉ではないが不思議な文様で細工されている。
 取っ手らしき箇所に手を触れると、シュインと自動にドアがスライドして開いた。
 外に出ると、石畳と緑の絨毯で出来た小道と植えられている花々が出迎えてくれた。

「わぁっ……」
 私は思わず感嘆の声を上げる。

 今の私は、本物の植物に触れる機会は少ない。
 だからかな、前世で見た時よりも何故か物凄く感動した。
 花や草木の匂い。
 さわさわと音を立てる植物たち。

 なんか、良いな。こういうの。
 晴れた日はのんびりここで、1日ぼーっとしていたい。
 和む。
 癒されそうだわ。

「うにゃあああん」
 前を歩いていたソードが振り返り、私を見て鳴いた。
 そして、てててと軽い足取りで先を進む。

「ん?」
 私は早足でソードの後を追う。

 薔薇のアーチを抜けると白い東屋が建っていて、そこの近くに座り花の植え替えをしている作業着を着た庭師らしい人が一人いた。
 ソードはその人に寄って行き。

「にゃー」
 と挨拶をする。

「おお、ソードかい。元気か?」
 背中しか見えないけど、老齢な男性の声が耳に届く。

「うにゃ!」
 元気だ! と宣言するかの如く答え、私の方へと駆け寄って来る。

「にゃ、にゃー、にゃあー」
 何かを告げる様な、鳴き声を上げる。

 作業をしていた人が立ち上って、こちらを向いた。
 好々爺した老人が。
 茶色い髪と翡翠色した瞳を持った、見知った人が穏やかに笑っていた。

 おおおおおお、お祖父様!!!
 なななななななななな、なんで!!
 こんなトコロで庭いじりなんてしてるのぉーーーー!
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

弱いままの冒険者〜チートスキル持ちなのに使えるのはパーティーメンバーのみ?〜

秋元智也
ファンタジー
友人を庇った事からクラスではイジメの対象にされてしまう。 そんなある日、いきなり異世界へと召喚されてしまった。 クラス全員が一緒に召喚されるなんて悪夢としか思えなかった。 こんな嫌な連中と異世界なんて行きたく無い。 そう強く念じると、どこからか神の声が聞こえてきた。 そして、そこには自分とは全く別の姿の自分がいたのだった。 レベルは低いままだったが、あげればいい。 そう思っていたのに……。 一向に上がらない!? それどころか、見た目はどう見ても女の子? 果たして、この世界で生きていけるのだろうか?

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

悪役令嬢が処刑されたあとの世界で

重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。 魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。 案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。

灼熱の連撃(ラッシュ)と絶対零度の神速剣:転生した双子のチート令嬢は、その異能で世界を救う

夜詩榮
ファンタジー
あらすじ 現代日本。活発な空手家の娘である姉・一条響と、冷静沈着な剣道部員である妹・一条奏は、突然の交通事故に遭う。意識が薄れる中、二人を迎え入れたのは光を纏う美しい女神・アステルギアだった。女神は二人に異世界での新たな生と、前世の武術を応用した規格外のチート能力を授ける。そして二人は、ヴァイスブルク家の双子の姉妹、リーゼロッテとアウローラとして転生を果たす。 登場人物 主人公 名前(異世界) 名前(前世) 特徴・能力 リーゼロッテ・ヴァイスブルク 一条いちじょう 響ひびき 双子の姉。前世は活発な空手家の娘で黒帯。負けず嫌い。転生後は長い赤みがかった金髪を持つ。チート能力は、空手を応用した炎の魔法(灼熱の拳)と風の魔法(超速の体術)。考えるより体が動くタイプ。 アウローラ・ヴァイスブルク 一条いちじょう 奏かなで 双子の妹。前世は冷静沈着な剣道部員。学業優秀。転生後は長い銀色の髪を持つ。チート能力は、剣術を応用した氷/水の魔法(絶対零度の剣)と土の魔法(鉄壁の防御・地形操作)。戦略家で頭脳明晰。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...