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第2章
好感のもてる女性でいましょう。
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危うく叫びそうになった私は、自分の手で唇を抑えた。
そんな私の苦労を知ってか知らずか、お祖父様はにこやか~~に好々爺然と話しかけて来る。
「やぁ、初めまして、お嬢さん。新入生かな?」
「は、はは、はい……」
「この庭は気に入ってくれたかな?」
ホクホク顔で話しかけて来るお祖父様に、私は僅かに顔を引き攣らせつつ答えを選んでいく。
「え、あ、はい。素敵なお庭ですね」
「そうかい? この中庭は儂が丹精込めて手入れをしているのでな、そう言って貰えると嬉しいねぇ」
「あの……お爺さんが全てお一人で行っているのですか?」
「そうだよ。理事長に一任されていてね、自慢出来る庭にしているんだよ」
心底楽しそうに笑いながら、そうのたまう現理事長《おじいさま》。
自分で自分に任命してるって事?
要は自分の趣味って事ですね、お祖父様……。
……って事は。
知らぬは生徒ばかりなりってコトかな?
知っていたら、理事長が丹精込めて作った庭を荒らすような輩《おばかさん》の為にも一応告知はされている筈だ。
その告知がされていないのは、何か思惑があってって事だろう。
知らないで荒らしたら、即退学とか?
でも何かしらのペナルティーはあるかもしれない。
うわー。あらゆる意味で気をつけないと、大変かも。
どこにトラップ紛いのモノが仕掛けられてるか解ったものではない。
キレて何かに当たるのは、危険かもしれない。
気を付けなきゃ。
「気に入ってくれたなら、ゆっくりして行くと良い」
にっこりと笑う、お祖父様。
「あ、ありがとうございます。凄く和みそうな庭なのでビックリしました。何時来ても良いですか?」
「ああ、どうぞ。お嬢さんに褒められるのは嬉しいものだね。儂にも孫娘がいるのでな、孫に言われてるようでとても嬉しいよ」
「そ、そうですか……それは光栄です。えっと、あの、良ければお仕事見ていても良いでしょうか?」
他人を装いつつ会話するのは、大変なので取り敢えず話題を強引に振ってみる。
お祖父様は一瞬不満気な瞳になるが、何か思い付いたのか笑顔に変わる。
「おお、お嬢さんが良ければ花の種類とかもお教えしますよ。あ、土に触るのは苦手かい?」
「あ、いえ、大丈夫です。殆ど触った事が無いのですが、興味はあります!」
厳密に言えば「前世では沢山あるが」と前置きがつくけれど。
のほほのーんとした雰囲気になりかけたところに。
「ちょっと! そこの庭師っ!」
金切り声の女の子の声が、雰囲気を切り裂いて現れた。
上等な服に身を包んだ少女は、こちらをじろりと睨みつけている。
「儂に用かな?」
不機嫌感びしばしな彼女の視線を物ともせず、お祖父様は平然と訊き返す。
「この庭に虫がいるわ! 全て駆除しなさい!」
「はぃ?」
私は思わず、声を漏らす。
虫、普通にいるのが当たり前だよね?
何を言ってるんだ、この人は。
「ここは、有機農薬でやっていてな、化学薬品を使わない事が決められているんだよ。出来るだけ自然な状態でと理事長からの通達なので虫がいるのは当たり前ですよ」
にこにこ笑顔で、お祖父様が答える。
「そんなの関係無いわ! 私を誰だと思っているの!? 庭師が逆らえる身分ではないわよ!」
自分が偉い、自分が有利なんだと言う迷惑極まりないジャイアニストは、叫んで宣言する。
もしも~~し、暴言止めてぇー!
アナタ、即退学になっちゃうよ?
生徒の運命をかる~く扱える人を相手にしてますよー。
「ちょっと、それは横暴じゃないかな? 理事長の言葉より、貴方の言葉が重いっておかしくない?」
「何よ! あなた、私を誰だと思っているの!? 私はこの星の財務大臣補佐の娘よ! あなたなんかよりも偉いのよ!」
「……」
説明しよう!
この星の大臣は独身(子供がいない人)が、なれるという独特の規定がある。
なので、子供を認知していようがいまいが関係なしに対象外になる。
子供がいる者は、出世をしても補佐止まりと言う訳である。
権力を集中させない為の措置で、且つ国民誰でもが大臣になり自分の国を良くしようと努力が出来るのを目的としている。
だからと言って誰も彼もが大臣職に就けるわけでもないのだけどね。
それでも、一部だが、勘違いした特権階級を重視する者もいるのは事実で、彼女はその部類だと思う。
けれど、ここでは――ジュラーレ学院では、通用しない。
身分は関係無しの実力主義でもあるのだから。
規則を破る者には、かなりキツイ罰則などもあるらしいと兄様から聞いている。
身内とて容赦しないのに、マズイでしょ。それは。
「あの~、勘違いしているのではないですか? この学院の入学試験の時に、生徒に権力はなく、身分は平等な生徒だと言われましたよね? 真っ向否定は不味いと思いますよ」
のんびり口調で、とりあえずは警告をしてみた。
きつく言うと、逆撫でしそうだしねぇ……。
「あなた、私がさっき言った事解らなかったの!? 私のパパは偉いのよ!」
顔を怒気で染めて私を睨む。
「……」
私は、呆然とするしかない。
大丈夫か?この人。
一体どういう経緯で入れたんだろうか、この学院に。
頭の弱過ぎる子が入れるトコロじゃないんだろうけど、たまに混じるのかな。
心の中でため息を吐く。
「そこの庭師にもう一度言うわ! この庭の虫を全て駆除して、完璧な庭になさい!」
お祖父様を指差して、傲慢にも命令をする彼女に私は血の気が引いた。
「それは出来ません。それでもそうしたいと言うのでしたら、学院長や理事長を通して申請して下さい。あの方々がそれをお認めになるとは思いませんけれど」
笑顔で応対するお祖父様。
うひいいいいい。
え、え、笑顔が怖いーーっ。
目が笑っていないよ~~~~。
「庭師風情が私に口答えしてっ!」
つかつかつかと、こちらに歩いて来る。
あ、ヤバい感じだ。
頭に血が上ってるわ。
「……」
すっと、お祖父様と迫り来る彼女の間に私は移動した。
「何よ、あなた。どきなさいよ!」
顔を真っ赤に染めて睨みつける彼女に。
「考え無しの行動は止めた方が良いです」
最後通告をする。
「平民のくせに、口答えするんじゃないわよ!」
冷静さの欠片もなく、罵倒する彼女に辟易しそうだ。
平民って……貴方の尺度でいくと、私の方が上ってコトじゃない?
一応、時期王太子の婚約者よ、私は。
控えるのはアンタよ! って、言ったら面白そうだけどなー。
ま、口が裂けても言わないけどね。
いずれにしても、この場でお祖父様に何かしたらもう洒落にならない。
どんなに頭がヨワヨワでも、お祖父様を敵に回すとどこまで波及するか解らないもの。
こんな子の親戚ってだけで、巻き込まれる方は可哀そうだ。
「どきなさいよ!」
「いやです」
「~~~~っ」
ぶるぶるぶると震えて、彼女は私に掴みかかろうとする。
ザンッ!
目の前に、ぎらりと光る物が割って入る。
「ひっ!」
真っ赤な顔が一瞬の内に真っ青に変わって、彼女はぺたりと地面に座り込んだ。
「ぇ……!?」
眼前にあるのは、銀色に光る刀身。
切れ味抜群そうな、剣の刃。
その先を目を追っていくと……柄を持っているのは、風に柔らかく靡く銀髪、陽光に煌めく銀蒼色の瞳の少年だった。
そんな私の苦労を知ってか知らずか、お祖父様はにこやか~~に好々爺然と話しかけて来る。
「やぁ、初めまして、お嬢さん。新入生かな?」
「は、はは、はい……」
「この庭は気に入ってくれたかな?」
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「え、あ、はい。素敵なお庭ですね」
「そうかい? この中庭は儂が丹精込めて手入れをしているのでな、そう言って貰えると嬉しいねぇ」
「あの……お爺さんが全てお一人で行っているのですか?」
「そうだよ。理事長に一任されていてね、自慢出来る庭にしているんだよ」
心底楽しそうに笑いながら、そうのたまう現理事長《おじいさま》。
自分で自分に任命してるって事?
要は自分の趣味って事ですね、お祖父様……。
……って事は。
知らぬは生徒ばかりなりってコトかな?
知っていたら、理事長が丹精込めて作った庭を荒らすような輩《おばかさん》の為にも一応告知はされている筈だ。
その告知がされていないのは、何か思惑があってって事だろう。
知らないで荒らしたら、即退学とか?
でも何かしらのペナルティーはあるかもしれない。
うわー。あらゆる意味で気をつけないと、大変かも。
どこにトラップ紛いのモノが仕掛けられてるか解ったものではない。
キレて何かに当たるのは、危険かもしれない。
気を付けなきゃ。
「気に入ってくれたなら、ゆっくりして行くと良い」
にっこりと笑う、お祖父様。
「あ、ありがとうございます。凄く和みそうな庭なのでビックリしました。何時来ても良いですか?」
「ああ、どうぞ。お嬢さんに褒められるのは嬉しいものだね。儂にも孫娘がいるのでな、孫に言われてるようでとても嬉しいよ」
「そ、そうですか……それは光栄です。えっと、あの、良ければお仕事見ていても良いでしょうか?」
他人を装いつつ会話するのは、大変なので取り敢えず話題を強引に振ってみる。
お祖父様は一瞬不満気な瞳になるが、何か思い付いたのか笑顔に変わる。
「おお、お嬢さんが良ければ花の種類とかもお教えしますよ。あ、土に触るのは苦手かい?」
「あ、いえ、大丈夫です。殆ど触った事が無いのですが、興味はあります!」
厳密に言えば「前世では沢山あるが」と前置きがつくけれど。
のほほのーんとした雰囲気になりかけたところに。
「ちょっと! そこの庭師っ!」
金切り声の女の子の声が、雰囲気を切り裂いて現れた。
上等な服に身を包んだ少女は、こちらをじろりと睨みつけている。
「儂に用かな?」
不機嫌感びしばしな彼女の視線を物ともせず、お祖父様は平然と訊き返す。
「この庭に虫がいるわ! 全て駆除しなさい!」
「はぃ?」
私は思わず、声を漏らす。
虫、普通にいるのが当たり前だよね?
何を言ってるんだ、この人は。
「ここは、有機農薬でやっていてな、化学薬品を使わない事が決められているんだよ。出来るだけ自然な状態でと理事長からの通達なので虫がいるのは当たり前ですよ」
にこにこ笑顔で、お祖父様が答える。
「そんなの関係無いわ! 私を誰だと思っているの!? 庭師が逆らえる身分ではないわよ!」
自分が偉い、自分が有利なんだと言う迷惑極まりないジャイアニストは、叫んで宣言する。
もしも~~し、暴言止めてぇー!
アナタ、即退学になっちゃうよ?
生徒の運命をかる~く扱える人を相手にしてますよー。
「ちょっと、それは横暴じゃないかな? 理事長の言葉より、貴方の言葉が重いっておかしくない?」
「何よ! あなた、私を誰だと思っているの!? 私はこの星の財務大臣補佐の娘よ! あなたなんかよりも偉いのよ!」
「……」
説明しよう!
この星の大臣は独身(子供がいない人)が、なれるという独特の規定がある。
なので、子供を認知していようがいまいが関係なしに対象外になる。
子供がいる者は、出世をしても補佐止まりと言う訳である。
権力を集中させない為の措置で、且つ国民誰でもが大臣になり自分の国を良くしようと努力が出来るのを目的としている。
だからと言って誰も彼もが大臣職に就けるわけでもないのだけどね。
それでも、一部だが、勘違いした特権階級を重視する者もいるのは事実で、彼女はその部類だと思う。
けれど、ここでは――ジュラーレ学院では、通用しない。
身分は関係無しの実力主義でもあるのだから。
規則を破る者には、かなりキツイ罰則などもあるらしいと兄様から聞いている。
身内とて容赦しないのに、マズイでしょ。それは。
「あの~、勘違いしているのではないですか? この学院の入学試験の時に、生徒に権力はなく、身分は平等な生徒だと言われましたよね? 真っ向否定は不味いと思いますよ」
のんびり口調で、とりあえずは警告をしてみた。
きつく言うと、逆撫でしそうだしねぇ……。
「あなた、私がさっき言った事解らなかったの!? 私のパパは偉いのよ!」
顔を怒気で染めて私を睨む。
「……」
私は、呆然とするしかない。
大丈夫か?この人。
一体どういう経緯で入れたんだろうか、この学院に。
頭の弱過ぎる子が入れるトコロじゃないんだろうけど、たまに混じるのかな。
心の中でため息を吐く。
「そこの庭師にもう一度言うわ! この庭の虫を全て駆除して、完璧な庭になさい!」
お祖父様を指差して、傲慢にも命令をする彼女に私は血の気が引いた。
「それは出来ません。それでもそうしたいと言うのでしたら、学院長や理事長を通して申請して下さい。あの方々がそれをお認めになるとは思いませんけれど」
笑顔で応対するお祖父様。
うひいいいいい。
え、え、笑顔が怖いーーっ。
目が笑っていないよ~~~~。
「庭師風情が私に口答えしてっ!」
つかつかつかと、こちらに歩いて来る。
あ、ヤバい感じだ。
頭に血が上ってるわ。
「……」
すっと、お祖父様と迫り来る彼女の間に私は移動した。
「何よ、あなた。どきなさいよ!」
顔を真っ赤に染めて睨みつける彼女に。
「考え無しの行動は止めた方が良いです」
最後通告をする。
「平民のくせに、口答えするんじゃないわよ!」
冷静さの欠片もなく、罵倒する彼女に辟易しそうだ。
平民って……貴方の尺度でいくと、私の方が上ってコトじゃない?
一応、時期王太子の婚約者よ、私は。
控えるのはアンタよ! って、言ったら面白そうだけどなー。
ま、口が裂けても言わないけどね。
いずれにしても、この場でお祖父様に何かしたらもう洒落にならない。
どんなに頭がヨワヨワでも、お祖父様を敵に回すとどこまで波及するか解らないもの。
こんな子の親戚ってだけで、巻き込まれる方は可哀そうだ。
「どきなさいよ!」
「いやです」
「~~~~っ」
ぶるぶるぶると震えて、彼女は私に掴みかかろうとする。
ザンッ!
目の前に、ぎらりと光る物が割って入る。
「ひっ!」
真っ赤な顔が一瞬の内に真っ青に変わって、彼女はぺたりと地面に座り込んだ。
「ぇ……!?」
眼前にあるのは、銀色に光る刀身。
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