Our place ~転生乙女のジュラーレ魔法学院の日常~

龍希

文字の大きさ
34 / 69
第2章

内緒のお話2 SIDE BOYS

しおりを挟む
「カグラ殿は、今のところ、我が孫にはあまり興味はないという感じですかな?」
「ええ。今のところは……ですが。俺よりも気になっているとすれば、レーツェルでしょうね」
 一見すると穏やかな遣り取りだが、言葉に含まれる意味は際どい。

「うぇ!?」
 いきなり話を振られたレーツェルがぎょっとした。

「ほぅ。専属騎士殿がですか?」
 すーっと周囲の温度が下がった気がして、レーツェルは本気で焦る。

「あ、はいっ! 魔法で未分化の子としてますが、私としてはとても可愛らしくて守ってあげたいと思います!」
 レーツェルは実際に思った事を述べる。反応が可愛くてついついからかってしまった事だけを除いて。

「可愛い孫なので、お二人ともどうぞ気に掛けてやって下さい。問題なりそうな事などに巻き込まれていたら助けて頂けると有り難く思います」
 幾分和らいだ笑顔で、ルゥインが二人に告げた。

「はい。勿論です」
「なにより、俺達は女王陛下より厳命されておりますからご安心下さい。害する者は徹底的に排除していきますから……どうぞ、その時は理事長の権限をお使い頂きたい」
 レーツェルの言を継いで、カグラは交渉へと持ち込んでいく。

 この学院の中では、第二皇位継承者という立場も実際はさほど強力では無い。
 どんな権力を持っていても、学生と言う立場になれば基本平等に扱うのがこの学院の流儀なのだ。
 ちょっとした場面なら(こういった内密なお茶会参加などは可能)何とかなるのだが。
 表立って不正を暴いてみたりと言うのは難しい。
 学院の規律を守る自警組織的(風紀委員)などが、それを従事するのでそう言った所に所属していないといけない。
 王族に連なる者が、過去そう言った組織に入っていた例は少なからずあるのだが、カグラとしては正直面倒事を背負い込むのは避けたいので入るつもりはない。
 なので、一番の権力者と繋がりを最初から持ってしまえばいいと言う事で理事長自身に交渉と言う訳だ。
 自分の手に余る問題なら、丸投げOK状態にしておけば後々安心だ。
 保険は一つでも多ければいいのだから。

 隙の無い笑顔でカグラは、ルゥインの言葉を待った。

「カグラ殿、君はお父上以上の存在になりそうですな。陛下が次期王にと望む理由が解ります」
「……」
 ルゥインはクスクスと穏やかな笑いながらカグラを評価すると、不本意そうに眉間に皺を寄せて反応した。

「良いでしょう。ですが、こちらの提示する条件を呑んで頂きます」
「何を?」
「あの子は、他者と関わった事が殆どない。故に、本気であの子を好いてくれるのならば構いませんが……お遊びなどであの子の心を掻き乱すのだけは止めて頂きたい」
「……」
 ルゥインの言葉に、凍りつくレーツェルと対照的に平然とした態度でいるカグラを眺めながら、シエンが「ばかねぇ~」とぼそっと呟く。

「条件を呑んで頂けますかな?」
 ルゥインの否定を許さない圧力に。

「ええ。俺はそのつもりですよ」
 頷きながら、さらっと答えるカグラと。

「はい。肝に銘じておきます」
 深々と頭を下げて、返事をするレーツェルだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

弱いままの冒険者〜チートスキル持ちなのに使えるのはパーティーメンバーのみ?〜

秋元智也
ファンタジー
友人を庇った事からクラスではイジメの対象にされてしまう。 そんなある日、いきなり異世界へと召喚されてしまった。 クラス全員が一緒に召喚されるなんて悪夢としか思えなかった。 こんな嫌な連中と異世界なんて行きたく無い。 そう強く念じると、どこからか神の声が聞こえてきた。 そして、そこには自分とは全く別の姿の自分がいたのだった。 レベルは低いままだったが、あげればいい。 そう思っていたのに……。 一向に上がらない!? それどころか、見た目はどう見ても女の子? 果たして、この世界で生きていけるのだろうか?

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

悪役令嬢が処刑されたあとの世界で

重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。 魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。 案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。

灼熱の連撃(ラッシュ)と絶対零度の神速剣:転生した双子のチート令嬢は、その異能で世界を救う

夜詩榮
ファンタジー
あらすじ 現代日本。活発な空手家の娘である姉・一条響と、冷静沈着な剣道部員である妹・一条奏は、突然の交通事故に遭う。意識が薄れる中、二人を迎え入れたのは光を纏う美しい女神・アステルギアだった。女神は二人に異世界での新たな生と、前世の武術を応用した規格外のチート能力を授ける。そして二人は、ヴァイスブルク家の双子の姉妹、リーゼロッテとアウローラとして転生を果たす。 登場人物 主人公 名前(異世界) 名前(前世) 特徴・能力 リーゼロッテ・ヴァイスブルク 一条いちじょう 響ひびき 双子の姉。前世は活発な空手家の娘で黒帯。負けず嫌い。転生後は長い赤みがかった金髪を持つ。チート能力は、空手を応用した炎の魔法(灼熱の拳)と風の魔法(超速の体術)。考えるより体が動くタイプ。 アウローラ・ヴァイスブルク 一条いちじょう 奏かなで 双子の妹。前世は冷静沈着な剣道部員。学業優秀。転生後は長い銀色の髪を持つ。チート能力は、剣術を応用した氷/水の魔法(絶対零度の剣)と土の魔法(鉄壁の防御・地形操作)。戦略家で頭脳明晰。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...