Our place ~転生乙女のジュラーレ魔法学院の日常~

龍希

文字の大きさ
37 / 69
第2章

初恋は実らないものと、いうけれど……。 SIDE BOYS

しおりを挟む
 思い当って、厄介過ぎる……と、カグラは思う。
 そう言えば、今までレーツェルは本気になった相手がいない。特定の相手や友達以上恋人未満の関係すらもいない。
 そんなレーツェルは、なんだかんだと言ってもモテる
 王家と縁続きと言うバックグラウンドがあると言うのも一つの要因だが、美貌の女傑副騎士団長(叔母)似の容姿で、それなりの長身だから騎士団の制服を纏えばかなり目を惹く存在になる。
 舞踏会など開かれた時に護衛として付いて来た事を理由に、ダンスの誘いを片っ端から断った実績がある。
 令嬢達には、にこやかに対応し、しかしやんわり後腐れ無く、お誘いは断るという高度な技だなぁと感心した時もある。
 レーツェルに想いを寄せる令嬢達が多いのも知っているけれど、誰一人として彼の目に留まった者はいない。

 そう、今まで、あんな風に誰かを構った事がない。
 理由にかこつけて、接点を持とうとする事は一度も無かったのだ。
 
 ナツキに見せた笑顔と同じに、令嬢達を扱ってはいたが瞳の奥では少しも楽しくないいうのが見て取れた。
 今回ばかりは違う。
 あの瞳は楽しいといっていた。

 そして、エスパーダ家に伝わる伝説が頭を過る。
 直系の者は、一目惚れ……『初恋』をする。
 初恋は必ず実る。
 と、言う眉唾物だが……実際は、真実でもある。
 カグラの母もまた一目惚れをして、ゴールインした内の一人だ。
 直系の者総てが、初恋を実らせていると言う奇跡的な家系なのである。

――――自覚したら、面倒だなこれは。

 現時点では、自分が一目惚れをしたのに気付いていない。
 今までのエスパーダ家直系の話を聞いた限りでは、10歳位には好きな人=結婚相手を見付けているのが定石だったそうだ。
 しかし、レーツェルは今までそんな相手に出会えていなかった。

――――なんでよりによって、ナツキなんだ!? この事が陛下にバレたら間違いなく、利用されかねないな。

 恋敵として焚き付けるのは当たり前だろうと思い、カグラは頭が痛くなって来る。
 理事長には「あまり興味はない」と言ったが、裏を返せば少しは興味があると言う事で……。
 幼い時の彼女は、とても気丈だったのを記憶している。
 殺されそうになったのに、冷静だった。
 泣き叫びもしない。
 震えて立てなくなってもいない。
 怪我していても、平気な姿でいた。

 女性を冷めた風にしか見れなかった自分の眼に、彼女は面白い存在だと映った。
 今もその想いはある。
 もしかしたら、彼女の側なら『自分』として居られるのではないか? そんな期待を少し抱いていた。

 一方的な想いは、ただの重荷になる。
 あからさまに好意をぶつけて来る令嬢達を見て、体験しているからこそ、自分の気持ちは面倒だと思ってしまう。
 自分が少しでも誰かに想い入れがあれば、それに気付いた誰かが面倒事を起こすのが目に見えている。
 それに気が付いた時から、冷めて物事をみる事にした。
 そうすれば、浅はかな行動はしなくなる。

――――その代わり、誰かに心を動かされなくなった。
 我ながら冷め過ぎて氷の様だと思う事もある。
 彼女ならば、レーツェルの様に心を動かされるのだろうか?

 自問自答しながら、カグラはもやもやした気持ちを胸に押し込んだ。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

弱いままの冒険者〜チートスキル持ちなのに使えるのはパーティーメンバーのみ?〜

秋元智也
ファンタジー
友人を庇った事からクラスではイジメの対象にされてしまう。 そんなある日、いきなり異世界へと召喚されてしまった。 クラス全員が一緒に召喚されるなんて悪夢としか思えなかった。 こんな嫌な連中と異世界なんて行きたく無い。 そう強く念じると、どこからか神の声が聞こえてきた。 そして、そこには自分とは全く別の姿の自分がいたのだった。 レベルは低いままだったが、あげればいい。 そう思っていたのに……。 一向に上がらない!? それどころか、見た目はどう見ても女の子? 果たして、この世界で生きていけるのだろうか?

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

悪役令嬢が処刑されたあとの世界で

重田いの
ファンタジー
悪役令嬢が処刑されたあとの世界で、人々の間に静かな困惑が広がる。 魔術師は事態を把握するため使用人に聞き取りを始める。 案外、普段踏まれている側の人々の方が真実を理解しているものである。

灼熱の連撃(ラッシュ)と絶対零度の神速剣:転生した双子のチート令嬢は、その異能で世界を救う

夜詩榮
ファンタジー
あらすじ 現代日本。活発な空手家の娘である姉・一条響と、冷静沈着な剣道部員である妹・一条奏は、突然の交通事故に遭う。意識が薄れる中、二人を迎え入れたのは光を纏う美しい女神・アステルギアだった。女神は二人に異世界での新たな生と、前世の武術を応用した規格外のチート能力を授ける。そして二人は、ヴァイスブルク家の双子の姉妹、リーゼロッテとアウローラとして転生を果たす。 登場人物 主人公 名前(異世界) 名前(前世) 特徴・能力 リーゼロッテ・ヴァイスブルク 一条いちじょう 響ひびき 双子の姉。前世は活発な空手家の娘で黒帯。負けず嫌い。転生後は長い赤みがかった金髪を持つ。チート能力は、空手を応用した炎の魔法(灼熱の拳)と風の魔法(超速の体術)。考えるより体が動くタイプ。 アウローラ・ヴァイスブルク 一条いちじょう 奏かなで 双子の妹。前世は冷静沈着な剣道部員。学業優秀。転生後は長い銀色の髪を持つ。チート能力は、剣術を応用した氷/水の魔法(絶対零度の剣)と土の魔法(鉄壁の防御・地形操作)。戦略家で頭脳明晰。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

処理中です...