Our place ~転生乙女のジュラーレ魔法学院の日常~

龍希

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第2章

初授業は大混乱!?

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 目の前の美しく幻想的な光景は、唐突に終わりを告げた。
 リョウが杖を下ろすと、水の文字は細かい霧の様に光りながら消えていく。

「ふぅ……」
 呼吸を整えるリョウは、手の甲で額の汗を拭う。その顔には少しだけ疲労の色が見えた。
 力を扱う上で重要なのは魔力の排出量の調整なので、それを無難に行えるリョウは凄いと思う。

「ね、ね、リョウが出した水、綺麗だったよ!」
 私は本音でリョウに賛辞を贈った。

「ありがとさん~。ナツキも頑張れや」
「うん!」
 リョウの言葉に素直に頷く。リョウが私に手を伸ばして、わしゃわしゃと頭を撫でる。

「……リョウは4、5歩以上は離れるように! でもって、ナツキはこっちに立ってね」
 レーツェルは私をリョウから引き剥がす様に、腕を掴んで自分の所へ引き寄せる。

「わわっ」
 微妙に後ろへと引かれたものだから、バランスがおかしくなってヨロヨロしてしまう。

 するりと、レーツェルの反対側から私の腰に手が回り、エスコートされる様なスマートさで力が加わり、私はカグラによってまともにしゃんと立って居る事が出来たのだった。
 覗き込む様に私を見下ろしているカグラ。

「……大丈夫か?」
「うん、ありがとう」
「ならいい」
 そっけない返答だが、労わる様に私の腰から手が離れていく。
 カグラの顔色を窺うと、無表情になっていた。

 その鉄仮面状態で、自分の専属騎士の名を抑揚のない声で呼ぶ。
「レーツェル」

 その瞬間、ぞわっと鳥肌が立つ。
――――ここここ、こわっ!!!

「う~~っ、ゴメン」
 ぱっと、私の腕を放して謝るレーツェルの姿に、しゅんと捨てられた子犬の様な姿がダブる。

――――何? なんなの? この主従関係!?
 躾け? 躾けなの? ワンコVS魔王子みたい! この妄想を掻き立てる主従コンビ凄いわぁ。
 うーん、BLだったら、レーツェルは受けだよね、うん。カグラの受けは想像出来ないわ。

 むふふ、な妄想をしていた私に、カグラの声が掛かる。
「……ナツキ?」
「え? あ、な、なに?」
「俺が、力の扱い方をレクチャーしながら実践していくが平気か?」
「色々ちょっと不安だけど、頑張るよ」
 私は素直に今の気持ちを言葉に乗せ、カグラに告げる。

 カグラとレーツェルは、一人分位の距離を空けて私の両側に立つ。
 手を伸ばせば届く距離に二人が、居る事にちょっとだけ色々な意味でドキドキする。

「まず、呼吸を整えて」
 カグラの言葉に従い、すーはーと数回深呼吸を繰り返す。

「身体の気……魔力、血の流れを感じろ。叡智は血であり、血は魔力なり、己の身体にある力を認識しろ。手を伸ばして胸の高さまで上げるんだ」
 身体を廻る血を意識したまま、私は言われるがままに両手を上げていく。

「そうだ、広げた掌に魔力を集める様に。周囲の風の元素に働きかける様に願え」

 すぅ……と、小さく深呼吸して、私は願いを口にする。
「風よ、この手に集まれ」

 頬を撫でる、心地よい空気。
 これが、風を操るって事なんだね。
 うん、何か超気持ちいいね。
 手の中でくるくるくるくると渦を巻く、小さな風。
 何か可愛い感じで、嬉しい。

 あ、でも、極大魔法的なの使える様になったらきっと面白いよねぇ~?
 バギクロスとか、エアロガとか、トルネードとか使えたら面白いけど、便利魔法じゃぁないよねー?
 タダの破壊魔法でしかないや……。

 手の中の風がふわっと広がって掌から消え、髪の毛を撫でていく。
「え?」

「うわっ!」
 リョウの叫び声が遠ざかる。いや、彼自身が飛んでいく。
 後方しかも、上空へと、吹っ飛んでいる。

「リョウ!!」
 血相を変えたレーツェルが剣を持って追っ駆ける。

「ちっ」
 カグラが舌打ちしたかと思うと銃を抜き、ガン! ガン! ガン! ガン! と四方へ撃ち込む。
 撃ち込まれた箇所の虚空に、黒の魔方陣が展開されていく。
 瞬きする間には、閉ざされた真っ黒い壁の中に私とカグラが居た。

「え? ええ?」
「ナツキ、魔力の放出を止めろ」
 びくっとしてしまう位には、カグラの表情が真剣で何を言われたのか一瞬理解が出来なかった。

「……も、もしかして、リョウが吹っ飛んだのって私のせい?」
「ああ、だから、止めろ」
「止めるって……あれ?」
 手の中にあった感触が消えている。風の流れ、魔力の流れが感じられない。
 ぐーぱーぐーぱーと手を閉じたり開いたりして確かめるけど、さっきまであった風とのリンク(例えるなら凧の凧糸の様な感じなもの)がブッツリと切れて無くなっていた。

 ザーッと血の気が引き、軽くパニックを起こす。
「嘘っ!? どどどどど、どうしよ~~っ」

 アワアワしてる最中、一瞬目の前が真っ白になる。
 貧血みたいな感じで、気持ちが悪い。
 ふらりと体が傾ぐ。

「ナツキ」
 強い力で、ぐいっと引き寄せられたかと思うとぎゅっとそのまま抱き締められる。
 カグラが小声で何かを言ったが聞き取れなかった。
 後頭部にカグラの手が回り、私の顔が胸板に押しつけられる様な形になる。

「くぇrtyhじゅきぉ;p:@!?」
 焦りと混乱と羞恥で何を言っているのか自分でも解らなくなる。

「まずは落ち着け。魔力の使い過ぎで倒れるぞ」
 カグラによって、あやす様にぽんぽんと背中が優しく叩かれる。

「魔力がどんどん吸い上げられてるのが解るか? 介入して流出を抑えるからこのままでいろ」
 カグラの助言で自分の意志とは関係なく、魔力が流れ出ていくのが解る。そのせいで、貧血一歩手前な状態になりつつあるのだと理解する。
 そして、さっきの聞き取れなかった言葉は、カグラが私の状態に無理矢理介入してぶっ倒れない状態にしてくれたのだろうと何と無く理解した。

「……うん」
「解呪してみろ」

 抱き締められながら、私は解呪の呪文を口にする。
強制解除ディスペル

 パリンと何かが壊れ弾ける様な、音がした気がした。
 そして。
 ズシンと、一気に身体が重くなった。

「っ!」
 私の変化に気付き、カグラが身体を支えてくれる。
「寄りかかっていろ」
「~~っ」
 身体が重くて、歯を食いしばるのに手一杯な私。

 実際、されるがままになるのは必然だった。
 ゆっくりと、腰を地面に下ろされる。
 動悸、息切れ、眩暈、虚脱感、貧血、吐き気、のオンパレードに襲われつつ、私はカグラにがっつりと凭れ掛かっていた。
 恋人がやる様な、男性の膝を立てた間に体を入れて向かい合うと、言うバカップル的な構図!のあの姿で。

 私の頬をカグラの手が撫でるが、力の入らない今、ぐてっとしていた。カグラは私の両頬を少しだけ持ち上げて、そっと顔を寄せて来る。

「……回復の息吹グワリジョーネ
 ちゅ……とリップ音が額に落ちる。

 すーーっと、キスをされた額の所から虚脱感とかが抜けていく。
 身体が軽くなったのは良いが、自分の状況を把握して血の気がマジで引いた。

「ぇ……と」
「今のでは足りないか?」
 じっと見つめて来る紫の瞳に、どうしていいのか混乱しそうだ。
 少し心配そうな表情で問われると更に困るが、それ以上に何だその妙な言い回し方は!!!!
 違う誤解を招きそうな表現やーめーてーーーーぇぇぇ。

「めめめめめ、滅相も御座いません! 大丈夫です!」
 何時の間にやら腰に回ったのか分からないカグラの腕が、弾かれる様に離れ様とする私を押し留める。

「少しこのままでいろ」
「でも」
「なら、立てるか?」
「腕を放し……」
「力はいれていないから、押し退けてみろ」
「……」

 淡々と言うカグラに、ちょっとムカついて腕を押しのけて立とうとするが。
 ひいいい、何で足に力が入んないのよ~~。
 まるで生まれたてのバンビか子牛じゃないのさー。
 いやあああああああああああ!!! ぷるぷるしてるううううう。
 うんともすんとも体がいう事を聞かなかった。

「ダメか」
 そう言うとカグラは私の右手を取って、自分の顔の方へ引き寄せる。
 指輪が嵌っている箇所へ、唇を寄せる。横顔が色っぽくて見惚れてしまう。

「我が魔力の欠片を与える」
 そして……彼は、私の魔法具に口づけを落とす。

 ぽわっとした温かい、気の流れが指輪を介して全身を満たしていく。
「っ……ぁ……」
 それと同時に身体を撫でられているような気分になって、ぞくりとしてしまう。


 何よコレ!?
 何なのよ!!!
 ちょーーー恥ずかしいんですけどおおおおおお!!!!

――――私が暫くの間、俯いてしまったのは言うまでもない。
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