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第2章
対抗戦を切り抜けろ!8
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「チェックメイトだ」
カグラの美声が、私の真後ろから聞こえてきた。
「え?」
振り返ろうとした瞬間、腰辺りを抱き込まれフワリと体が浮き上がる。
そして、そのまま引き寄せられて、一気にトランポリンの様に高く上がり、視界がクルリンと一回転して流れた。
生き残った(?)騎士見習い達と、距離がある程度離れると緩やかに降り立った。
不思議な事に浮き上がった際も重力に引っ張られる様な感覚が一切無くて、足元が覚束ない様なふわんふわんと重力に逆らう感じがしたままなのでゆっくりと頭を下げて下を見る。
――――わぉ~。ふわふわと、浮いているではないか! 無重力状態ってヤツ!? 凄いなぁ、他人の重力無効化に出来るんだ。なんて便利な魔法だろうか。高い所からも飛び降り放題だね!
と、私はアホな感想を脳内で繰り広げました。
「おかえり。ナツキ、カグラ」
レーツェルがニッコリと微笑んで、私達に告げた。
「ああ。これでやっとバカバカしい試合が終わるな」
カグラの声が私の背後から聞こえて、ゆっくりとした動作で私の腰に回っていた腕が外れる。
軽くすとんと、両足が地面に着地する。カグラの重力操作魔術が解けたのが解る。
「……」
――――えーと、この魔法、無詠唱だったよね?
意識だけで魔法を行使するには属性の相性が良いか、小さい頃からの英才教育プラス術者のセンスや技量が要るらしいのだけど、この王子様さらっとやりやがりましたよねぇ。
次期王様ってのは、こういう事もさらっと出来ないといけないのかな……。
うーん。私、この人と婚約者をしていて大丈夫かな? と、正直不安になる。
ハイスペック過ぎる人と自分のノーコン気味プラスヘタレっぷりに、傷心しちゃうよ。
「ん? どうした、ナツキ?」
私の頭上から声が落ちる。見上げると、カグラが少し心配そうに見詰めて来る。
「カグラが強引に引っ張って来たから目を回しちゃったんじゃ!?」
レーツェルがはっとして、カグラに詰め寄る勢いで騒ぐ。
「え!? あ、ちょっとぼんやりしていただけだよ。大丈夫だよ?」
慌てて私が言うと、数秒間私をじっと見詰めて確認してから口を開いた。
「目の焦点も合っているから、目を回している訳じゃないね。大丈夫ならいいけど、気分が悪くなったら言ってね。時々カグラは無茶するから、心配になっちゃうんだよね~」
訳知り顔でつらつらとレーツェルは言葉を連ねるのを、横で聞いていたカグラは眉間に皺が寄せた。
微妙な漫才を拝見しながらぼへっとしていると、パリンと軽い破壊音がして周囲の方陣を形成していた結界が粉々になって消えた。
「勝者ジュラーレ!!」
シエン先生が、してやったりな顔付きで高らかに宣言をしていた。
学院側の生徒の歓声が響いた……。
カグラの美声が、私の真後ろから聞こえてきた。
「え?」
振り返ろうとした瞬間、腰辺りを抱き込まれフワリと体が浮き上がる。
そして、そのまま引き寄せられて、一気にトランポリンの様に高く上がり、視界がクルリンと一回転して流れた。
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不思議な事に浮き上がった際も重力に引っ張られる様な感覚が一切無くて、足元が覚束ない様なふわんふわんと重力に逆らう感じがしたままなのでゆっくりと頭を下げて下を見る。
――――わぉ~。ふわふわと、浮いているではないか! 無重力状態ってヤツ!? 凄いなぁ、他人の重力無効化に出来るんだ。なんて便利な魔法だろうか。高い所からも飛び降り放題だね!
と、私はアホな感想を脳内で繰り広げました。
「おかえり。ナツキ、カグラ」
レーツェルがニッコリと微笑んで、私達に告げた。
「ああ。これでやっとバカバカしい試合が終わるな」
カグラの声が私の背後から聞こえて、ゆっくりとした動作で私の腰に回っていた腕が外れる。
軽くすとんと、両足が地面に着地する。カグラの重力操作魔術が解けたのが解る。
「……」
――――えーと、この魔法、無詠唱だったよね?
意識だけで魔法を行使するには属性の相性が良いか、小さい頃からの英才教育プラス術者のセンスや技量が要るらしいのだけど、この王子様さらっとやりやがりましたよねぇ。
次期王様ってのは、こういう事もさらっと出来ないといけないのかな……。
うーん。私、この人と婚約者をしていて大丈夫かな? と、正直不安になる。
ハイスペック過ぎる人と自分のノーコン気味プラスヘタレっぷりに、傷心しちゃうよ。
「ん? どうした、ナツキ?」
私の頭上から声が落ちる。見上げると、カグラが少し心配そうに見詰めて来る。
「カグラが強引に引っ張って来たから目を回しちゃったんじゃ!?」
レーツェルがはっとして、カグラに詰め寄る勢いで騒ぐ。
「え!? あ、ちょっとぼんやりしていただけだよ。大丈夫だよ?」
慌てて私が言うと、数秒間私をじっと見詰めて確認してから口を開いた。
「目の焦点も合っているから、目を回している訳じゃないね。大丈夫ならいいけど、気分が悪くなったら言ってね。時々カグラは無茶するから、心配になっちゃうんだよね~」
訳知り顔でつらつらとレーツェルは言葉を連ねるのを、横で聞いていたカグラは眉間に皺が寄せた。
微妙な漫才を拝見しながらぼへっとしていると、パリンと軽い破壊音がして周囲の方陣を形成していた結界が粉々になって消えた。
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学院側の生徒の歓声が響いた……。
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