悪役にされた令嬢は、阿呆共に報復する

龍希

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断罪の六重奏 7

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 チャプン……と、広々とした湯船に浸かりはぁ~~とエルーシャは息を吐く。
「あぁ、気持ちいい……」
 両腕を思い切り広げ、ぽそりと呟きを溢す。水面に浮かべてある薔薇の花と花びらが時折、エルーシャの身体に当たる。拳の大きさ程の薔薇の花をそっと手のひらで救い上げ、鼻先近くへと持っていく。
「……ん、良い香り」
 赤、白、黄、ピンク、グラデーションや、マーブルの色とりどりの花びらと馥郁な芳香が、ささくれ疲れた身体と心を癒してくれる。

 正直な所、エルーシャにとって彼等の断罪は当たり前に予想していた。出来てしまったが故に、腹立たしい気持ちと、溜飲が下がったけれど実際には、モヤモヤした何とも形容しがたい思いが胸中に残った。

ーー何故、とどまらなかったのか?
ーー何故、考えなかったのか?
ーー何故、周りを無視したのか?
ーー何故、何故、どうして?

「ざまあしても、あまりスッキリしないわねぇ。殴られても痛いけど、殴り返しても痛いって事よね。まったくもぅ、善良さを意識して、令嬢を演じると気持ちがそっちへ引っ張られるからイヤよ……」
 温かい湯に身体を浸し、エルーシャは愚痴りながら顔を天井に向ける。
「ニートやテロリストの自己中心的な思考で自爆した者に、遠慮する必要はないって分かってはいるけど……なまじ平和な前世の記憶なんてあると引っ張られるのには、本当に困るわ。この世界の法律とか本当に微妙だし……トップが色々考えないといけないって面倒臭いし……一歩間違えば戦争し放題になるって最悪ぅ。平和な日本の憲法ってとても良く出来ていたものなんだよね。この世界じゃ絶対に作れないわ。他国の標的になるだけだもの」
 ずるずると口元まで沈み込み、エルーシャは眉間にしわを寄せる。
 実はエルーシャが、通常の属性(元素)魔法を使えない理由は前世持ちが原因である。前世の記憶が何故かこの世界の各元素である、全ての属性の魔法を阻害するのである。前世の小説とかでイメージで無詠唱や魔法習得のイニシアチブを取れる話が多いが、この世界ではそれが出来ない。真逆のパターンで、固有魔法を自分自身で確立するまでエルーシャは苦戦させられた。
 また、前世の倫理観を持ち合わせていたので、平民で生まれたのであればそんなに苦労しなかったのだが、何の因果か帝国の第一子で生まれてきてしまった。エルーシャも初めの頃は記憶チートで何か出来るかもとわくわくしていたが、現実は出来ない現状を嘆きながら何もかも一から築き上げてきた。故に、王子と愉快でおバカな仲間達が魔法を使えないと自分を馬鹿にする事に、エルーシャの胸はかなり傷ついた。何度、お前達は親の地位に胡坐をかき努力を怠ってる癖に人を罵倒するしか能がないのか! と説教してやりたかったと思った事だろうか。言いたい事を言えば後悔しなくて済んだかと言えば、そうでもないのはエルーシャは前世で経験済みである。
「淡々と仕事としてやれる人が羨ましいわ……まぁ、無い物ねだりなのかもしれないけど。っよし!」
 パチン! と両手で頬を叩き、エルーシャは気合を入れる。
「頑張ろう」
 ざばっと、湯船から立ち上がった。
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