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番外編・2
コッコラ王国の悲劇・1
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地上への階段を上がりきると、アルカネットは手にしていたメモ紙を改めて覗き込んだ。
「住所はこの近くであっているようですね」
確認するように独り言つと、歩道を目的地に向かって歩き始めた。
ハワドウレ皇国の皇都イララクスの中にある、大きな街ハーメンリンナ。
街全体は高さ12mもある城壁に囲まれ、皇王一族、貴族、上流階級に属する人々、そして、行政に携わる者、軍に所属する者、機密性の高い研究に属する者などが暮らしている。
そのため無関係な一般人が自由に入ることは許されておらず、住人たちの招きがない限り、一生この街に入ることはない。
今歩いているのは、北区と呼ばれる区域で、主に行政関係の建物や研究施設、それに関係する人々の宿舎や屋敷が立つ場所だ。
アルカネットは今年35歳になる独身で、軍に所属している。特殊部隊と呼ばれる特別な部署の一つ、尋問・拷問部隊の長官職に就いていた。
スラリと長身で、見た目はまだ20代半ばくらいにしか見えず、その名が示すとおり、明るい紫色の髪の毛と瞳が印象的だ。整った顔立ちは温和で優しげな美人で、本人にその気は全くないが、社交界のご婦人たちを虜にしている。
やがて北区の最奥にたどり着いたアルカネットは、門の奥を仰ぎ見た。
東区に居並ぶ貴族たちの屋敷ほど大きくはないが、この北区にある屋敷と比べれば一番大きい。
アルカネットは門に手をかけると、そっと力を込めた。
「おや?」
門はすんなりと内側に開かれる。
住人が居れば、門は必ず開かれるようになっている。誰も住んでいない屋敷の場合、門は固く閉じられ管理されているのだ。
アルカネットは門を通って、きちんと閉じる。そして、再度屋敷を見上げた。
外はもう薄暗くなっており、誰か住んでいれば火が灯っているだろう。しかし、灯りは見えなかった。
どう見ても空家だ。
やや首をかしげながら、中庭に通じる路を歩いていく。そこへ、
「おーい、アルカネット」
頭上から自分を呼ぶ声が降り注いで、アルカネットは上を見た。しかしその位置からは見えない。
「こっちだー」
どうやら屋根の上から呼びかけられていると判り、アルカネットは肩を軽くすくめ、浮上の魔法を使ってゆっくりと身体を浮かび上がらせた。アルカネットが授かったスキル〈才能〉は魔法である。
「よっ」
屋根の上に目的の人物を見つけ、アルカネットは大仰なため息をついてみせた。
「なにが”よっ”ですか。副宰相ともあろう人が、そんなところでなにをしているのです?」
「今夜は満月だからな、お月見だ、お月見。灯りは邪魔だから全部消してやった」
どこか得意そうに微笑むこの男は、皇国副宰相ベルトルドという。
アルカネットと同い年で、やや濃いめの亜麻色の髪の毛と、灰青色の瞳の嵌った切れ長の目をしている。そしてベルトルドも20代半ばくらいにしか見えず、どこかヤンチャな印象を与える美丈夫で、これまた社交界の貴婦人たちを虜にしてやまなかった。
長い両腕を頭の後ろで組んで、青い屋根瓦の上に寝そべっている。
「お前も隣に座れ。こっから見る月は、なかなか綺麗なんだぞ」
ベルトルドの顔を見ていてもしょうがないと思ったアルカネットは、小さく息をついて、なんだか嬉しそうなベルトルドの隣に腰を下ろした。
「それにしても、空家でしょうここ? 勝手によろしいのですか?」
「もう空家じゃなくなった。今日から俺の家になったからな」
「え?」
「住所はこの近くであっているようですね」
確認するように独り言つと、歩道を目的地に向かって歩き始めた。
ハワドウレ皇国の皇都イララクスの中にある、大きな街ハーメンリンナ。
街全体は高さ12mもある城壁に囲まれ、皇王一族、貴族、上流階級に属する人々、そして、行政に携わる者、軍に所属する者、機密性の高い研究に属する者などが暮らしている。
そのため無関係な一般人が自由に入ることは許されておらず、住人たちの招きがない限り、一生この街に入ることはない。
今歩いているのは、北区と呼ばれる区域で、主に行政関係の建物や研究施設、それに関係する人々の宿舎や屋敷が立つ場所だ。
アルカネットは今年35歳になる独身で、軍に所属している。特殊部隊と呼ばれる特別な部署の一つ、尋問・拷問部隊の長官職に就いていた。
スラリと長身で、見た目はまだ20代半ばくらいにしか見えず、その名が示すとおり、明るい紫色の髪の毛と瞳が印象的だ。整った顔立ちは温和で優しげな美人で、本人にその気は全くないが、社交界のご婦人たちを虜にしている。
やがて北区の最奥にたどり着いたアルカネットは、門の奥を仰ぎ見た。
東区に居並ぶ貴族たちの屋敷ほど大きくはないが、この北区にある屋敷と比べれば一番大きい。
アルカネットは門に手をかけると、そっと力を込めた。
「おや?」
門はすんなりと内側に開かれる。
住人が居れば、門は必ず開かれるようになっている。誰も住んでいない屋敷の場合、門は固く閉じられ管理されているのだ。
アルカネットは門を通って、きちんと閉じる。そして、再度屋敷を見上げた。
外はもう薄暗くなっており、誰か住んでいれば火が灯っているだろう。しかし、灯りは見えなかった。
どう見ても空家だ。
やや首をかしげながら、中庭に通じる路を歩いていく。そこへ、
「おーい、アルカネット」
頭上から自分を呼ぶ声が降り注いで、アルカネットは上を見た。しかしその位置からは見えない。
「こっちだー」
どうやら屋根の上から呼びかけられていると判り、アルカネットは肩を軽くすくめ、浮上の魔法を使ってゆっくりと身体を浮かび上がらせた。アルカネットが授かったスキル〈才能〉は魔法である。
「よっ」
屋根の上に目的の人物を見つけ、アルカネットは大仰なため息をついてみせた。
「なにが”よっ”ですか。副宰相ともあろう人が、そんなところでなにをしているのです?」
「今夜は満月だからな、お月見だ、お月見。灯りは邪魔だから全部消してやった」
どこか得意そうに微笑むこの男は、皇国副宰相ベルトルドという。
アルカネットと同い年で、やや濃いめの亜麻色の髪の毛と、灰青色の瞳の嵌った切れ長の目をしている。そしてベルトルドも20代半ばくらいにしか見えず、どこかヤンチャな印象を与える美丈夫で、これまた社交界の貴婦人たちを虜にしてやまなかった。
長い両腕を頭の後ろで組んで、青い屋根瓦の上に寝そべっている。
「お前も隣に座れ。こっから見る月は、なかなか綺麗なんだぞ」
ベルトルドの顔を見ていてもしょうがないと思ったアルカネットは、小さく息をついて、なんだか嬉しそうなベルトルドの隣に腰を下ろした。
「それにしても、空家でしょうここ? 勝手によろしいのですか?」
「もう空家じゃなくなった。今日から俺の家になったからな」
「え?」
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