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混迷の遺跡編
episode176
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いつもの不敵な表情のベルトルドの後ろから、今にも倒れてしまいそうな面々を見て、出迎えたラーシュ=オロフ長官は頭上にクエスチョンマークを点滅させた。
「お疲れ様です、閣下」
「うむ、出迎えご苦労、ラーシュ=オロフ長官」
アルイールの港には、第二正規部隊の軍人たちが、濃紺の列を作って到着を出迎えてくれていた。
ラーシュ=オロフ長官は、ベルトルドの腕の中でぐったり眠るキュッリッキに目を向け、表情を曇らせる。
「だいぶ、お加減が悪ようですね」
「怪我のせいで熱を出していてな。無理に連れ帰るからだが…、あともう少しの辛抱だ」
眠っているとはいえ、相当辛いに違いない。
ベルトルドはキュッリッキの額に口づけ、そして歩き出した。ラーシュ=オロフ長官も続く。
「アルイールの制圧は終わったな?」
「はい。ですが、王族と軍を逃しました。申し訳ございません」
「ほう、守るべき民を見捨てて、雲隠れしたのか。呆れた王と軍だな」
嘲笑うように「フンッ」と鼻を鳴らす。ラーシュ=オロフ長官は苦笑した。ベルトルドがこういう輩を毛嫌いしていることを、ラーシュ=オロフ長官はよく知っている。ダエヴァはベルトルドの私兵と揶揄されるほど、親密な関係にあるからだ。
数日前にアルカネットから洗礼を受けた首都アルイールは、都市機能が低下し、火事や爆発が起こって家屋が崩壊、被災地のような光景が至るところに散っていた。挙句ハワドウレ皇国の軍隊に蹂躙され、アルイールを捨てたソレルの軍は何処かへ消え去り、残された国民は不安に包まれていた。華麗な王宮も占拠されたが、王族はすでに逃亡した後らしい。
「残された一般人全てが無害とは言えないが、抵抗してくる者は留置所送り、無抵抗者には手出し無用だ。ただ、武装蜂起や暴動が起きないよう、注意するようにしろ」
「はっ」
「アルカネットのやつが派手にやらかしたようだから、追い打ちをかける必要はない。今はまだ、このままでいい」
「はい」
「さて、エグザイル・システムに着くまでに、やっておかなければならないことがある。アークラ大将と共に、後のことは任せる」
「承りました!」
ラーシュ=オロフ長官は立ち止まり、ベルトルドに敬礼をして踵を返した。
エグザイル・システムまでの道程には、びっしりと第二正規部隊がガードレールのように列を作っていた。
その真ん中をゆっくりと歩きながら、ベルトルドはキュッリッキをじっと見つめ意識を凝らす。
細い毛糸ほどの太さの光の線が、キュッリッキの身体を包み込み始める。繭を編むような感じで、慎重なスピードで編まれていった。
それは常人の目に見えるものではなかったが、サイ《超能力》を使うルーファスの目には、はっきりと映っていた。
(すげえ……あんな繊細な作業、オレには無理)
キュッリッキは固定され、繭に守られ外部からの如何なる力の影響も受けない。サイ《超能力》による力は、使用者の精神力の大きさに影響される。
キュッリッキを傷つけない、絶対に守り抜く。そう強い意志が光の繭に反映される。ベルトルドの強固な意志が、キュッリッキを守るのだ。
エグザイル・システムの建物に到着する頃には、防御の繭を張り終えていた。
「さすがですね、ベルトルド様」
ベルトルドの横に並びながら、ルーファスが賛辞を述べる。精度といい早さといい完璧な力の使い方だ。
ベルトルドはちらりとルーファスを見ると、フンッと鼻を鳴らした。
「お前にも出来るはずだ。真面目に修行でもしておけ」
「マジっすか…」
「お疲れ様です、閣下」
「うむ、出迎えご苦労、ラーシュ=オロフ長官」
アルイールの港には、第二正規部隊の軍人たちが、濃紺の列を作って到着を出迎えてくれていた。
ラーシュ=オロフ長官は、ベルトルドの腕の中でぐったり眠るキュッリッキに目を向け、表情を曇らせる。
「だいぶ、お加減が悪ようですね」
「怪我のせいで熱を出していてな。無理に連れ帰るからだが…、あともう少しの辛抱だ」
眠っているとはいえ、相当辛いに違いない。
ベルトルドはキュッリッキの額に口づけ、そして歩き出した。ラーシュ=オロフ長官も続く。
「アルイールの制圧は終わったな?」
「はい。ですが、王族と軍を逃しました。申し訳ございません」
「ほう、守るべき民を見捨てて、雲隠れしたのか。呆れた王と軍だな」
嘲笑うように「フンッ」と鼻を鳴らす。ラーシュ=オロフ長官は苦笑した。ベルトルドがこういう輩を毛嫌いしていることを、ラーシュ=オロフ長官はよく知っている。ダエヴァはベルトルドの私兵と揶揄されるほど、親密な関係にあるからだ。
数日前にアルカネットから洗礼を受けた首都アルイールは、都市機能が低下し、火事や爆発が起こって家屋が崩壊、被災地のような光景が至るところに散っていた。挙句ハワドウレ皇国の軍隊に蹂躙され、アルイールを捨てたソレルの軍は何処かへ消え去り、残された国民は不安に包まれていた。華麗な王宮も占拠されたが、王族はすでに逃亡した後らしい。
「残された一般人全てが無害とは言えないが、抵抗してくる者は留置所送り、無抵抗者には手出し無用だ。ただ、武装蜂起や暴動が起きないよう、注意するようにしろ」
「はっ」
「アルカネットのやつが派手にやらかしたようだから、追い打ちをかける必要はない。今はまだ、このままでいい」
「はい」
「さて、エグザイル・システムに着くまでに、やっておかなければならないことがある。アークラ大将と共に、後のことは任せる」
「承りました!」
ラーシュ=オロフ長官は立ち止まり、ベルトルドに敬礼をして踵を返した。
エグザイル・システムまでの道程には、びっしりと第二正規部隊がガードレールのように列を作っていた。
その真ん中をゆっくりと歩きながら、ベルトルドはキュッリッキをじっと見つめ意識を凝らす。
細い毛糸ほどの太さの光の線が、キュッリッキの身体を包み込み始める。繭を編むような感じで、慎重なスピードで編まれていった。
それは常人の目に見えるものではなかったが、サイ《超能力》を使うルーファスの目には、はっきりと映っていた。
(すげえ……あんな繊細な作業、オレには無理)
キュッリッキは固定され、繭に守られ外部からの如何なる力の影響も受けない。サイ《超能力》による力は、使用者の精神力の大きさに影響される。
キュッリッキを傷つけない、絶対に守り抜く。そう強い意志が光の繭に反映される。ベルトルドの強固な意志が、キュッリッキを守るのだ。
エグザイル・システムの建物に到着する頃には、防御の繭を張り終えていた。
「さすがですね、ベルトルド様」
ベルトルドの横に並びながら、ルーファスが賛辞を述べる。精度といい早さといい完璧な力の使い方だ。
ベルトルドはちらりとルーファスを見ると、フンッと鼻を鳴らした。
「お前にも出来るはずだ。真面目に修行でもしておけ」
「マジっすか…」
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