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初恋の予感編
episode244
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「ベル、ベルッ!」
いつになく取り乱したリュリュは、悲痛な声で呼びかけた。ベルトルドは血の気を失った顔色で、ピクリとも動かない。それに負けないくらい、リュリュの顔も蒼白になっていた。
この頃顔色が悪く、寝不足続きだと言っていた。それ以外は特に不調を訴えていなかったので、まさかこうして倒れることになるとは思っていなかったのだ。
「無理するからよ! 見かけは若いけど、もうアラフォーのオッサンなんだから。若いつもりでも、無理が効かなくなってくるお年頃なのよ、もぉ。――あんまりにも目を覚まさないと、覚ますまで暴れん棒をしゃぶりつくすわよ!」
(それはヤメてあげてっ!)
そうエクルース大将とアークラ大将は、心の中で搾り出すように叫んだ。
リュリュのお仕置きシーンは、過去何度か目撃している。その時のことを思い出すと、同じ男として悲劇としか思えない。お仕置きにさらされているベルトルドには、同情しか湧いてこないのだった。
「さしあたって深刻な病気を患っているというわけではなさそうですし、とにかく病院へお運びしましょう」
ブルーベル将軍は軽々と、ベルトルドを両腕に抱き抱える。その言葉に、2人の大将はハッとなった。
「至急、こちらに車を回せ!」
エクルース大将は慌てて副官に命じる。
「演習の指揮は小官とエクルース大将で引き継ぎます。将軍とリュリュ殿は、閣下と病院へお急ぎください」
「お願いしますよ」
アークラ大将に頷いて、ブルーベル将軍はベルトルドを抱え、車に乗り込んだ。
「あとは任せるわ」
リュリュも続いて乗り込むと、運転手の士官がドアを閉めた。
電力を使って動かす車である。皇王一族、宰相、副宰相のみが使用を許される、特別公用車だ。
超古代文明の遺産なので、数がとても少なく、公用のものが数台あるだけだ。ハーメンリンナに住む貴族たちですら、車は所有していない。
シュイーンというエンジン音を響かせながら、車は演習場をあとにした。
キュッリッキの寝ているベッドの傍らに座り、メルヴィンは不機嫌を露骨に貼り付けた顔で、己の膝を睨みつけていた。
規則正しい寝息をたて寝ているキュッリッキの顔には、明らかな疲労感が漂っている。目元も腫れているし、今日もまたこの様子だ。
ベルトルドの屋敷にきてから、今日で2週間になる。キュッリッキの怪我も、順調に快方に向かっていた。この数日で、半身を起こして過ごすことも出来るようになっている。それなのに、いつまでもこの様子なのだ。
こんな風になる原因を、いまだベルトルドたちから聞き出すことも出来ず、キュッリッキも話そうとしない。
仲間になって日も浅いが、少しでもなにか話してほしいと思う。愚痴でもいいし、話せばすっきりすることならいくらでも聞く。そのために自分はここにいるのだから。
毎日それとなく言うのだが、キュッリッキは困ったように小さく笑むだけで、口を閉ざしたままだ。
彼女は一体、何に苦しんでいるんだろう。それも判らないし、頼ってもらえない寂しさもあって、メルヴィンの機嫌を損ねていた。
「メルヴィン…」
名を呼ばれ、メルヴィンは弾かれたように顔を上げた。
ベッドに顔を向けると、不安そうに見つめてくるキュッリッキの視線とぶつかる。
「起きたんですね。気分はどうですか」
「……うん、大丈夫だよ」
おっかなびっくりといった声音に、メルヴィンが首を傾げた。
いつになく取り乱したリュリュは、悲痛な声で呼びかけた。ベルトルドは血の気を失った顔色で、ピクリとも動かない。それに負けないくらい、リュリュの顔も蒼白になっていた。
この頃顔色が悪く、寝不足続きだと言っていた。それ以外は特に不調を訴えていなかったので、まさかこうして倒れることになるとは思っていなかったのだ。
「無理するからよ! 見かけは若いけど、もうアラフォーのオッサンなんだから。若いつもりでも、無理が効かなくなってくるお年頃なのよ、もぉ。――あんまりにも目を覚まさないと、覚ますまで暴れん棒をしゃぶりつくすわよ!」
(それはヤメてあげてっ!)
そうエクルース大将とアークラ大将は、心の中で搾り出すように叫んだ。
リュリュのお仕置きシーンは、過去何度か目撃している。その時のことを思い出すと、同じ男として悲劇としか思えない。お仕置きにさらされているベルトルドには、同情しか湧いてこないのだった。
「さしあたって深刻な病気を患っているというわけではなさそうですし、とにかく病院へお運びしましょう」
ブルーベル将軍は軽々と、ベルトルドを両腕に抱き抱える。その言葉に、2人の大将はハッとなった。
「至急、こちらに車を回せ!」
エクルース大将は慌てて副官に命じる。
「演習の指揮は小官とエクルース大将で引き継ぎます。将軍とリュリュ殿は、閣下と病院へお急ぎください」
「お願いしますよ」
アークラ大将に頷いて、ブルーベル将軍はベルトルドを抱え、車に乗り込んだ。
「あとは任せるわ」
リュリュも続いて乗り込むと、運転手の士官がドアを閉めた。
電力を使って動かす車である。皇王一族、宰相、副宰相のみが使用を許される、特別公用車だ。
超古代文明の遺産なので、数がとても少なく、公用のものが数台あるだけだ。ハーメンリンナに住む貴族たちですら、車は所有していない。
シュイーンというエンジン音を響かせながら、車は演習場をあとにした。
キュッリッキの寝ているベッドの傍らに座り、メルヴィンは不機嫌を露骨に貼り付けた顔で、己の膝を睨みつけていた。
規則正しい寝息をたて寝ているキュッリッキの顔には、明らかな疲労感が漂っている。目元も腫れているし、今日もまたこの様子だ。
ベルトルドの屋敷にきてから、今日で2週間になる。キュッリッキの怪我も、順調に快方に向かっていた。この数日で、半身を起こして過ごすことも出来るようになっている。それなのに、いつまでもこの様子なのだ。
こんな風になる原因を、いまだベルトルドたちから聞き出すことも出来ず、キュッリッキも話そうとしない。
仲間になって日も浅いが、少しでもなにか話してほしいと思う。愚痴でもいいし、話せばすっきりすることならいくらでも聞く。そのために自分はここにいるのだから。
毎日それとなく言うのだが、キュッリッキは困ったように小さく笑むだけで、口を閉ざしたままだ。
彼女は一体、何に苦しんでいるんだろう。それも判らないし、頼ってもらえない寂しさもあって、メルヴィンの機嫌を損ねていた。
「メルヴィン…」
名を呼ばれ、メルヴィンは弾かれたように顔を上げた。
ベッドに顔を向けると、不安そうに見つめてくるキュッリッキの視線とぶつかる。
「起きたんですね。気分はどうですか」
「……うん、大丈夫だよ」
おっかなびっくりといった声音に、メルヴィンが首を傾げた。
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