片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

文字の大きさ
293 / 882
番外編1

写真・2

しおりを挟む
 正規部隊の人事部署へ掛け合いに行き、その足でグローイ宮殿の中にある楽士隊の詰所へ、毎日のように嘆願に行っては追い返される。それを根性で、粘りに粘って繰り返していたあの日。

 詰所前の柱の一つにもたれかかり、面白そうにその様子を見ている男がいた。面白そうに黙って見ていたが、楽士隊の職員がマリオンを跳ね除けたところで、おもむろに柱から離れた。

「毎日根気だけは筋金入りの娘が、懲りずに押しかけてくるとの噂が、俺のところにも聞こえてきてな」

 尚も楽士隊の職員に食い下がっているところに、そう男が声をかけてきた。

「これは……副宰相閣下!」

 職員が慌てて姿勢を正し、敬礼をする。

「お前がその娘だな。名前は?」

 偉そうに見下ろされて、マリオンは上目遣いで名乗った。見かけは若くハンサムなのだが、妙に身をすくませる威圧感が滲み出ていた。

「正規部隊所属だったな。サイ《超能力》が使えるそうだが、何故スキル〈才能〉とは無関係の楽士隊に入りたいんだ?」

「ここの制服が着たいから!」

 マリオンは大真面目に、きっぱりと断言する。

 職員も副宰相と言われた男も一瞬唖然としていたが、同時に思いっきり吹き出して、大笑いされてしまった。

 男はいつまでも腹を抱えて面白そうに笑っていたが、そのまま手を振って去っていってしまった。

 しかし翌日、マリオンは楽士隊の詰所に呼び出され、そこで楽士隊の長から正式に入隊を命じられる。

「ただし、入隊条件として、特殊部隊ダエヴァの隊員も兼任してもらう。それが副宰相様からのご指示だ」

 楽士隊の長はそう言って、マリオンの入隊を認めたのだった。



「特殊部隊ダエヴァってなあに?」

「そうねえ、アタシたちのようなレアスキル〈才能〉持ちとか、ちょっとした技術に優れた人間ばかりが集められて、主に裏仕事をさせられる、あんまり良い印象のないようなところなのよねぇ。まあ、時には正規部隊の中に混ぜて、派兵されることもあるけども」

「ふうん…」

「まあ、アタシの場合、楽士隊の仕事よりも、ダエヴァでの仕事のほうが多かったんだけど、それはしょうがないよねえ。でも、時々はちゃんと楽士隊の一員として、仕事はさせてもらえたし、おっさんには感謝してるわ」

 にっこり笑うマリオンを見て、キュッリッキも笑顔を返した。

 見つめる写真の中には、今より少し若いマリオンが、楽士隊の仲間たちとじゃれ合いながら写っている。マリオンが憧れたという楽士隊の制服は、キュッリッキから見てもカッコイイと思った。

 ページをめくっていくと、最後には一枚の大きな写真が貼り付けてあった。

 キュッリッキはその写真が、一番のお気に入りだ。

 5年前に結成された、ライオン傭兵団のメンバーが揃って写っている。そこにはベルトルドとアルカネットも写っていた。

 まだちょっと若い感じの、キュッリッキが知らない頃の仲間たちがいる。

 キュッリッキは自分が写っている写真は一枚も持っていない。これまで写真が欲しいと思ったことはなかったし、撮られる機会もなかった。

 でも今は、自分もこうして仲間たちと一緒に写真を撮って欲しいと思うようになっていた。だからマリオンの部屋にきては、アルバムを見せてくれるようねだる。

 自分も一緒に写っている姿を想像して眺めていると、楽しかったから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

新人メイド桃ちゃんのお仕事

さわみりん
恋愛
黒髪ボブのメイドの桃ちゃんが、働き先のお屋敷で、旦那様とその息子との親子丼。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

Millennium226 【軍神マルスの娘と呼ばれた女 6】 ― 皇帝のいない如月 ―

kei
歴史・時代
周囲の外敵をことごとく鎮定し、向かうところ敵なし! 盤石に見えた帝国の政(まつりごと)。 しかし、その政体を覆す計画が密かに進行していた。 帝国の生きた守り神「軍神マルスの娘」に厳命が下る。 帝都を襲うクーデター計画を粉砕せよ!

屋上の合鍵

守 秀斗
恋愛
夫と家庭内離婚状態の進藤理央。二十五才。ある日、満たされない肉体を職場のビルの地下倉庫で慰めていると、それを同僚の鈴木哲也に見られてしまうのだが……。

処理中です...