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番外編1
写真・2
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正規部隊の人事部署へ掛け合いに行き、その足でグローイ宮殿の中にある楽士隊の詰所へ、毎日のように嘆願に行っては追い返される。それを根性で、粘りに粘って繰り返していたあの日。
詰所前の柱の一つにもたれかかり、面白そうにその様子を見ている男がいた。面白そうに黙って見ていたが、楽士隊の職員がマリオンを跳ね除けたところで、おもむろに柱から離れた。
「毎日根気だけは筋金入りの娘が、懲りずに押しかけてくるとの噂が、俺のところにも聞こえてきてな」
尚も楽士隊の職員に食い下がっているところに、そう男が声をかけてきた。
「これは……副宰相閣下!」
職員が慌てて姿勢を正し、敬礼をする。
「お前がその娘だな。名前は?」
偉そうに見下ろされて、マリオンは上目遣いで名乗った。見かけは若くハンサムなのだが、妙に身をすくませる威圧感が滲み出ていた。
「正規部隊所属だったな。サイ《超能力》が使えるそうだが、何故スキル〈才能〉とは無関係の楽士隊に入りたいんだ?」
「ここの制服が着たいから!」
マリオンは大真面目に、きっぱりと断言する。
職員も副宰相と言われた男も一瞬唖然としていたが、同時に思いっきり吹き出して、大笑いされてしまった。
男はいつまでも腹を抱えて面白そうに笑っていたが、そのまま手を振って去っていってしまった。
しかし翌日、マリオンは楽士隊の詰所に呼び出され、そこで楽士隊の長から正式に入隊を命じられる。
「ただし、入隊条件として、特殊部隊ダエヴァの隊員も兼任してもらう。それが副宰相様からのご指示だ」
楽士隊の長はそう言って、マリオンの入隊を認めたのだった。
「特殊部隊ダエヴァってなあに?」
「そうねえ、アタシたちのようなレアスキル〈才能〉持ちとか、ちょっとした技術に優れた人間ばかりが集められて、主に裏仕事をさせられる、あんまり良い印象のないようなところなのよねぇ。まあ、時には正規部隊の中に混ぜて、派兵されることもあるけども」
「ふうん…」
「まあ、アタシの場合、楽士隊の仕事よりも、ダエヴァでの仕事のほうが多かったんだけど、それはしょうがないよねえ。でも、時々はちゃんと楽士隊の一員として、仕事はさせてもらえたし、おっさんには感謝してるわ」
にっこり笑うマリオンを見て、キュッリッキも笑顔を返した。
見つめる写真の中には、今より少し若いマリオンが、楽士隊の仲間たちとじゃれ合いながら写っている。マリオンが憧れたという楽士隊の制服は、キュッリッキから見てもカッコイイと思った。
ページをめくっていくと、最後には一枚の大きな写真が貼り付けてあった。
キュッリッキはその写真が、一番のお気に入りだ。
5年前に結成された、ライオン傭兵団のメンバーが揃って写っている。そこにはベルトルドとアルカネットも写っていた。
まだちょっと若い感じの、キュッリッキが知らない頃の仲間たちがいる。
キュッリッキは自分が写っている写真は一枚も持っていない。これまで写真が欲しいと思ったことはなかったし、撮られる機会もなかった。
でも今は、自分もこうして仲間たちと一緒に写真を撮って欲しいと思うようになっていた。だからマリオンの部屋にきては、アルバムを見せてくれるようねだる。
自分も一緒に写っている姿を想像して眺めていると、楽しかったから。
詰所前の柱の一つにもたれかかり、面白そうにその様子を見ている男がいた。面白そうに黙って見ていたが、楽士隊の職員がマリオンを跳ね除けたところで、おもむろに柱から離れた。
「毎日根気だけは筋金入りの娘が、懲りずに押しかけてくるとの噂が、俺のところにも聞こえてきてな」
尚も楽士隊の職員に食い下がっているところに、そう男が声をかけてきた。
「これは……副宰相閣下!」
職員が慌てて姿勢を正し、敬礼をする。
「お前がその娘だな。名前は?」
偉そうに見下ろされて、マリオンは上目遣いで名乗った。見かけは若くハンサムなのだが、妙に身をすくませる威圧感が滲み出ていた。
「正規部隊所属だったな。サイ《超能力》が使えるそうだが、何故スキル〈才能〉とは無関係の楽士隊に入りたいんだ?」
「ここの制服が着たいから!」
マリオンは大真面目に、きっぱりと断言する。
職員も副宰相と言われた男も一瞬唖然としていたが、同時に思いっきり吹き出して、大笑いされてしまった。
男はいつまでも腹を抱えて面白そうに笑っていたが、そのまま手を振って去っていってしまった。
しかし翌日、マリオンは楽士隊の詰所に呼び出され、そこで楽士隊の長から正式に入隊を命じられる。
「ただし、入隊条件として、特殊部隊ダエヴァの隊員も兼任してもらう。それが副宰相様からのご指示だ」
楽士隊の長はそう言って、マリオンの入隊を認めたのだった。
「特殊部隊ダエヴァってなあに?」
「そうねえ、アタシたちのようなレアスキル〈才能〉持ちとか、ちょっとした技術に優れた人間ばかりが集められて、主に裏仕事をさせられる、あんまり良い印象のないようなところなのよねぇ。まあ、時には正規部隊の中に混ぜて、派兵されることもあるけども」
「ふうん…」
「まあ、アタシの場合、楽士隊の仕事よりも、ダエヴァでの仕事のほうが多かったんだけど、それはしょうがないよねえ。でも、時々はちゃんと楽士隊の一員として、仕事はさせてもらえたし、おっさんには感謝してるわ」
にっこり笑うマリオンを見て、キュッリッキも笑顔を返した。
見つめる写真の中には、今より少し若いマリオンが、楽士隊の仲間たちとじゃれ合いながら写っている。マリオンが憧れたという楽士隊の制服は、キュッリッキから見てもカッコイイと思った。
ページをめくっていくと、最後には一枚の大きな写真が貼り付けてあった。
キュッリッキはその写真が、一番のお気に入りだ。
5年前に結成された、ライオン傭兵団のメンバーが揃って写っている。そこにはベルトルドとアルカネットも写っていた。
まだちょっと若い感じの、キュッリッキが知らない頃の仲間たちがいる。
キュッリッキは自分が写っている写真は一枚も持っていない。これまで写真が欲しいと思ったことはなかったし、撮られる機会もなかった。
でも今は、自分もこうして仲間たちと一緒に写真を撮って欲しいと思うようになっていた。だからマリオンの部屋にきては、アルバムを見せてくれるようねだる。
自分も一緒に写っている姿を想像して眺めていると、楽しかったから。
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