片翼の召喚士-Rework-

ユズキ

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エルアーラ遺跡編

episode435

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「いってぇ……」

「大丈夫、ヴァルト」

 ランドンに助け起こされ、ヴァルトは鼻をさすりながら立ち上がった。

 そんな2人の横をみんな通りながら、中の様子に目を見開いた。

 とても奇妙な空間だった。

 辺は漆黒のように塗りつぶしたほど黒い。暗いんじゃなく、黒いのだ。その黒い空間の中に、真っ白で柔らかい光を発する真四角の床が浮いている。そして足元はその真四角な床へ続く、真っ白な階段が続いていた。

 闇のような真っ黒な空間のはずなのに、全員の姿はくっきりと明るく見えている。

「ヘンな場所……」

 キュッリッキはフェンリルの背からするりと降りると、階段を駆け下りた。

「あ、リッキーさん危ないですよ!」

 メルヴィンが慌ててキュッリッキを追い掛け階段を下りる。皆もそれにつられるように、次々と階段を下りていく。

 キュッリッキは床の端まで駆け寄ると、そっと下を覗き込んだ。

「底が全然見えない……。落ちたらどうなっちゃうんだろう」

「危ないですよ」

 追いついたメルヴィンはキュッリッキの両腕を掴むと、そっと自分のほうへ引き寄せた。その突然の行為に、キュッリッキはドキンと心臓が跳ね上がって顔を赤らめる。

「う、うん、ごめん…」

 まともに顔を見上げることができないので、視線をあさっての方向へ泳がせながら謝った。鼓動はどんどん早まり、顔から蒸気でも噴出しそうだ。

「2人の世界に浸るなら、もうちょっと真ん中でしろ!」

 ギャリーが真顔で怒鳴ると、メルヴィンが困ったように頷いた。

 10組ほどが踊れるダンスフロアくらいの広さで、フェンスも壁もなく、通路のような材質の真っ平らな床だ。他には何もなく、奇妙な空間と白い床と階段、ということが確認できただけだった。

「見て回るモンもないようだし、次いこーぜ、次」

 キュッリッキとメルヴィンの、睦まじい様子が面白くないザカリーが、突っ慳貪に言い放つ。

「んだな。ほらキューリ、フェンリルの上に戻れ」

 ギャリーに促されて、まだ赤面のキュッリッキが頷いた時だった。

「きゃっ」

 突然鼻先を凄いスピードで掠めていったものがいて、キュッリッキは思わず尻餅をついてしまった。

「大丈夫ですか!?」

 メルヴィンに助け起こされながら、キュッリッキはハテ?と不可解そうに首をかしげた。

「うきゃっ」

「ひゃっ」

 今度はシビルとハーマンが小さな悲鳴をあげて、フェンリルの背から転がり落ちた。

「痛いっ! なんなんだよもー!!」

 ハーマンが両手を挙げて怒り出し、シビルも帽子をかぶり直しながら眉間を寄せる。

「何かスピードのあるものが、身体を掠めていって落ちたんですが、今度は何の幻覚でしょうか」

「ツっ……」

 ザカリーが歯を食いしばって右手の甲をおさえた。ギュッと握り締め、じんわりと痛みが引いていって手を離すと、右手の甲には擦り傷が出来ていた。

「ちっ、今度は幻覚なんかじゃねーぞ、実体がある」

 右手の甲を示すと、皆軽く目を見開き身構えた。

 ランドンはすぐさまザカリーに駆け寄ると、回復魔法をかける。

「毒の類はないみたいだね。摩擦による擦り傷みたいだ」

「実体はあるが、オレの目で追いきれない何かか」

 動体視力もずば抜けているザカリーだが、さっきから一向に姿を捉えられない。

「目で追うより気配を感じろってか?」

 うんざりしたようにギャリーは頭を掻いた。
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