私の嫁？はインキュバス

Things you have to tell 翼のターン

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仕事も終わり、定時に会社を出て山手線に乗り日暮里駅へ。
駅に着き改札口を出ると、『Eternal』の方角から何人かこちらに来た。
流石に全員『Eternal』の客ではないよなと思い、店に向かう足取りを少し早める。
やはりほぼすれ違った人は『Eternal』の客で、何故か皆半額券の話をしていた。
『痛い客が来て、店長と今話題の天使過ぎる店員に向かって何かわめている。関わりたくないから急いで食べて会計したら、店長さんが半額券をくれた』と。

痛い客か・・・まさか、愛・・・のわけないよね。私の居場所知るわけないし。
離婚成立で家を出る時に会った妹の侮蔑に見下すような目つきを思い出した。もし、愛だとしたら絶対私のトラウマの話をエイレンにするだろう。違う人だと思いたいけど、愛の予感しかしない。
意を決して歩き出そうとすると、いきなり空気が淀みだし周りの人々がどんどんと倒れ出す光景に立ち尽くしブルッと震え出す。
救急車を呼ぼうと119をかけるがうんともすんとも動かない。『Eternal』の磁場の範囲内に入ったのかもしれない。
磁場の範囲外に出ようと駅の方に向かおうとしたその時、動くはずないスマホに莉杏さんからの着信が来た。

「はい、南風成です」
「あっ、翼ちゃん。良かった無事かかった」とホッとした声の莉杏さんの声がスマホの向こう側から聞こえた。
「莉杏さんどうかしたんですか？こっちは空気が淀んで人がバダバタと倒れだして」
「ちっ、遅かったか。翼ちゃんは動ける？
かなりまずい事になったのよ。急いで愚弟の所に行って。早くしないと、あのバカが・・・」
電話の途中から私の足は『Eternal』に向かって駆け出した。近づくにつれ息苦しくなっていくが足を止めるわけはいかない。
店のドアを引くが動かなかったので裏口に回る。腐敗臭の中に微かに甘い香りがして、それをモロに嗅いでしまいクラッと立ちくらみがしたが気合いで立ち上がり裏口のドアをノブを引くと開いた。
音を立てずにゆっくりとドアを開き中に入るとエイレンの声がした。
でも、聞いたことのない冷たくて淀んだ声。

莉杏さんが言うには、淫魔は何かしら強いショックや怒りで闇堕ちしてしまう場合があるが、それの最終進化系が『大罪堕ち』
七つの大罪でもある『傲慢』『憤怒』『嫉妬』『怠惰』『強欲』『暴食』『色欲』
これに関する感情が最低でも3つ爆発すると闇を産ます破壊神堕ちするとの事。そして、莉杏さんが感じたのは『暴食』以外全て。
店内は外の50倍もの加重に吐き気のする匂い。倒れそうに何度もなったが、カウンターに寄りかかり一歩ずつ前に進む。
私の目に映ったのは前髪の一部が金髪になって、瞳が血のように赤く染まっているエイレンが”ニヤッ”と笑みを浮かべながら女性の首を掴み壁に押し倒しながらその首を絞めているのは狂気を逸してる姿だが、恐怖よりも何故だか『綺麗』と見惚れてしまってる自分がいた。