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Not Welcome

3話

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「遅くなって申し訳なかった。ようこそ、我がリンディパル王国へ異世界人の皆様方。此処からは我々緋炎の騎士団が王宮までご案内いたします。荷物をお持ちになってこちらで用意した馬車に乗り換えて下さい」
そう言い彼女がバスを降りようとすると何人かの乗客が「はいはい!」と挙手をしたので振り向き”キョトン”とした表情を浮かべた彼女に皆ときめく。

「あっ、あの・・・貴女のお名前は?」

「名乗りもせずに失礼した。我が名は『ユーリ・スレイプズ』スレイプズ公爵家次女にて『緋炎の騎士団』団長を担っている。異世界の方々お見知りおきを」
自己紹介しながら深々とお辞儀する姿も麗しく、私まで魅入ってしまった。
一部の乗客は『お姉様』と完全に惚れたっぽい。これはファンクラブとかあったらここの乗客達全員入るだろう。

乗客は順番にユーリ様に手を添えられながらバスを降りると近くに留めてあった馬車に乗り込む。馬車は6台で1台に乗れるのは5人。
そして、バスには係員と運転手含めて31人、1人多い。
どうしようと係員がアタフタしているのを見兼ねたもあるけど非常に興味津々と言うのが強い。
そう、乗馬に。
「係員さん、私馬に乗ってみたいので馬車大丈夫ですよ」
私の発言にホッとした係員さんは馬車に乗り込み馬車は出発した。
「窓から馬を見て可愛い仔が沢山いて乗ってみたかったんだよね」と私の呟きに残っていた何人かの甲冑の騎士達とユーリ様が子供を慈しむ目で私を見つめると代わる代わる頭を撫でた。
「姉御。シャグがこの子乗せたそうなんでこの子乗せて俺走りますわ」「姉御!俺のハルマンも乗せたそうな表情っす!!」「俺のローグも!!」「ワシのラリブも!!」
騎士達が馬からヒラリと降りてユーリ様に直訴している後で馬達が私に寄って『乗って』と言っているように鳴き出す。

「実は・・・私のクライシスも彼女の事乗せたそうにしているんだが皆の馬に乗せた方がいいだろう。クライシスに乗せると、他の馬が拗ねそうだからな」
騎士達の直訴の中、ユーリ様は愛馬の白馬と騎士達の馬をチラチラと見ながら話す。

「クライシス殿が乗せたがるのなら姉御乗せてあげてください」
「そうですよ。姉御と一緒ならたとえ火の中水の中森の中」
「クライシス殿は我々の荒くれた馬と違って血統のある馬ですから」
最後の一言で私の周りの馬は一瞬納得したがすぐに抗議の嘶きをし始めた。

『なんなんだ、この流れは。バラエティ番組でも見ているのか?ここ、異世界だよな』
頭の中がこんがらかったが、どこの世界もあるんだなと無理やり納得させた。

「さて、結果として姉御と一緒にお嬢ちゃんは乗って行くと言う結論で」
騎士の1人がスマホの様な物を取り出し、電源をつけると馬に乗った騎士の1人が浮かび上がった。
「良かった、馬車も王都にもうじき着くんですが馬車内の異世界人の何人かがそこのお嬢ちゃんが姉御と残っている事に気付いて不平不満を漏らして大変なんですよ」

通信先の騎士が馬車の方を見ながらため息をつくと、ユーリ様はその報告を待っていたかの様にニヤリと微笑み
「それならβを其方に向かわせたからすぐに着くはず」
「すぐって・・・あっ、見えました!流石βですね」
森から颯爽と白馬の王子様、もとい白馬のユーリ様(β)が登場した。
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