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<7>abandoned child〜居場所探し〜
<7>abandoned child〜居場所探し①〜
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目が覚めるとそこは見慣れた天井ではなかった。
「どこ? ここ……」
ベッドから降りようとするも、まず身体が重くて動かせない。
ベッドに手をつくと手首にピリッとした痛みが走る。それで意識を手放す前の出来事を思い出した。
(蓮が手当してくれたの?)
包帯の巻かれた手首を指でなぞる。
かゆくて引っ掻きたいが、また血まみれになってしまうと手を握る。
蓮のやさしさに付け込んでしまったと酷く後悔した。
(やめてよ。やさしさなんて見せないで。あたしだって女の子だもん)
どうせならこの傷が消えなければいいのに。
傷を見るたびにあたしは蓮を思い出す。
これは執着だろう。
愛と呼ぶにはいささか狂っている。
好きな人を泥のなかに引きずり込むゾンビのような女だ。
この傷があたしの価値を示してくれる。
そんなバカな幻想に笑って、腕を抱きしめた。
「ふっ……うぅ……!」
違うと心が悲鳴をあげた。
そんな風に好きになったのではないと涙が訴えた。
蓮のそばにいて幸福感に浸った。その甘さが好きだった。
蓮が笑ってくれるとあたしも嬉しくなってはにかんだ。
そんなささいなことが一等に好きだった。
過去を知ってから笑顔を見ていない。
そんな顔をさせたかったわけじゃない。
蓮が満足してくれるならそれでいいと、あたしは幸せを手放した。
あたしも蓮も、ちっとも幸せな顔をしなかった。
どんどん不幸面が濃くなって、心が軋んだ。
「捨てられちゃったんだぁ……。そうだよね。蓮はそうするよ」
あたしはもう用済みだ。
それで復讐心が満たされたかはわからないが、少なくとも蓮にとっては不要となった。
虚しさだけが残って、布団を抱き寄せた。
「……好き。蓮が好き」
でもこの気持ちは正しくない。
好きになってはいけない人を好きになった。
あたしの想いは好きな人を苦しめるだけ。存在が呪わしい。
「傍にいられればそれでよかった? 憎まれてもよかった……んだ」
自分に言い聞かせようとする。だけど言葉は詰まるばかり。
(うそつき。本音はいつも終わってから口にする)
拒絶されることを望んでいたわけじゃない。
本当はこの傷さえも受け入れて、傍においてほしかった。
いつか蓮が幸せだと言ってくれるまで頑張りたかった。
……道具にさえなれなかった。
自分を叩き割っても何も変わらない。
視界にうつるのは白黒の世界だ。
墜ちるだけ堕ちて、はい上がることを許されない状況に爪を立てた。
「優里、起きたのー?」
部屋の扉が開き、現れた人物に目を丸くするも、すぐに感情は引っ込んだ。
冷めた目をして相手を見据えると、赤フチの眼鏡をくいっと耳にかけ直す。
「こういう形で再会するのは意外だった」
「どの口が言ってんのよ。美弥ねぇ」
ニヤッと八重歯を見せて笑う美弥を睨むだけ。
それしかうっぷんを晴らす方法がない。
美弥は手に持っていたタオルをあたしに投げる。
受け取っても何かもする気も湧かない。
ふてくされるあたしに美弥はわざとらしくため息をつき、タオルを奪い取るとあたしの顔を乱雑に拭った。
「まったく……顔がぐしゃぐしゃだよ。かぁわいいお顔が台無し」
「誰のせいよ」
「なーに? 私のせいって言いたいの?」
鋭い美弥の言葉に口をつぐむ。
唇を尖らせていると額を指ではじかれた。
じんじん痛むオデコをさすってじろりと美弥を睨む。
「蓮から引き取ったよー。しばらくはここでゆっくりしていいから」
淡々と口にする美弥の顔を見れない。
あたしにとってはデリケートな問題で、日の下で顔をあげられるほど悲しみをさらす気もない。
悲劇のヒロインにはならないと美弥からタオルを奪い取って涙をぬぐった。
美弥は安堵し肩の力を抜く。
いったい美弥は何者だろうとタオルの隙間から覗き込んだ。
「美弥ねぇは、蓮とどういう関係?」
「おぉー。そう聞きます?」
美弥はおどけたピエロのように笑って腕を組む。
不安に表情を歪めると、美弥は「大丈夫だよ」と口にして、言葉を選んだ。
目が覚めるとそこは見慣れた天井ではなかった。
「どこ? ここ……」
ベッドから降りようとするも、まず身体が重くて動かせない。
ベッドに手をつくと手首にピリッとした痛みが走る。それで意識を手放す前の出来事を思い出した。
(蓮が手当してくれたの?)
包帯の巻かれた手首を指でなぞる。
かゆくて引っ掻きたいが、また血まみれになってしまうと手を握る。
蓮のやさしさに付け込んでしまったと酷く後悔した。
(やめてよ。やさしさなんて見せないで。あたしだって女の子だもん)
どうせならこの傷が消えなければいいのに。
傷を見るたびにあたしは蓮を思い出す。
これは執着だろう。
愛と呼ぶにはいささか狂っている。
好きな人を泥のなかに引きずり込むゾンビのような女だ。
この傷があたしの価値を示してくれる。
そんなバカな幻想に笑って、腕を抱きしめた。
「ふっ……うぅ……!」
違うと心が悲鳴をあげた。
そんな風に好きになったのではないと涙が訴えた。
蓮のそばにいて幸福感に浸った。その甘さが好きだった。
蓮が笑ってくれるとあたしも嬉しくなってはにかんだ。
そんなささいなことが一等に好きだった。
過去を知ってから笑顔を見ていない。
そんな顔をさせたかったわけじゃない。
蓮が満足してくれるならそれでいいと、あたしは幸せを手放した。
あたしも蓮も、ちっとも幸せな顔をしなかった。
どんどん不幸面が濃くなって、心が軋んだ。
「捨てられちゃったんだぁ……。そうだよね。蓮はそうするよ」
あたしはもう用済みだ。
それで復讐心が満たされたかはわからないが、少なくとも蓮にとっては不要となった。
虚しさだけが残って、布団を抱き寄せた。
「……好き。蓮が好き」
でもこの気持ちは正しくない。
好きになってはいけない人を好きになった。
あたしの想いは好きな人を苦しめるだけ。存在が呪わしい。
「傍にいられればそれでよかった? 憎まれてもよかった……んだ」
自分に言い聞かせようとする。だけど言葉は詰まるばかり。
(うそつき。本音はいつも終わってから口にする)
拒絶されることを望んでいたわけじゃない。
本当はこの傷さえも受け入れて、傍においてほしかった。
いつか蓮が幸せだと言ってくれるまで頑張りたかった。
……道具にさえなれなかった。
自分を叩き割っても何も変わらない。
視界にうつるのは白黒の世界だ。
墜ちるだけ堕ちて、はい上がることを許されない状況に爪を立てた。
「優里、起きたのー?」
部屋の扉が開き、現れた人物に目を丸くするも、すぐに感情は引っ込んだ。
冷めた目をして相手を見据えると、赤フチの眼鏡をくいっと耳にかけ直す。
「こういう形で再会するのは意外だった」
「どの口が言ってんのよ。美弥ねぇ」
ニヤッと八重歯を見せて笑う美弥を睨むだけ。
それしかうっぷんを晴らす方法がない。
美弥は手に持っていたタオルをあたしに投げる。
受け取っても何かもする気も湧かない。
ふてくされるあたしに美弥はわざとらしくため息をつき、タオルを奪い取るとあたしの顔を乱雑に拭った。
「まったく……顔がぐしゃぐしゃだよ。かぁわいいお顔が台無し」
「誰のせいよ」
「なーに? 私のせいって言いたいの?」
鋭い美弥の言葉に口をつぐむ。
唇を尖らせていると額を指ではじかれた。
じんじん痛むオデコをさすってじろりと美弥を睨む。
「蓮から引き取ったよー。しばらくはここでゆっくりしていいから」
淡々と口にする美弥の顔を見れない。
あたしにとってはデリケートな問題で、日の下で顔をあげられるほど悲しみをさらす気もない。
悲劇のヒロインにはならないと美弥からタオルを奪い取って涙をぬぐった。
美弥は安堵し肩の力を抜く。
いったい美弥は何者だろうとタオルの隙間から覗き込んだ。
「美弥ねぇは、蓮とどういう関係?」
「おぉー。そう聞きます?」
美弥はおどけたピエロのように笑って腕を組む。
不安に表情を歪めると、美弥は「大丈夫だよ」と口にして、言葉を選んだ。
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