己が声を封じた彼(オレ)は、覚悟を決めて彼女(わたし)になった

てぃー☆ちゃー

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第一章 光、入学する

第十三話

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・・・・こくり。

首を上下におろし、肯定の意志を示した。

「まあ緊張する必要はないぞ、オレはその辺も理解した上でお前さんの入学を認めたんだからな」

―はい―
光は英単語帳を開いて答えることにした。

「ここでは声を出して大丈夫だ。周りには何も封印されてる代物は無いし、声もこの滝の轟音がかき消してくれる」
「・・・・」

光は少しだけ困ったように表情を歪めたが、覚悟を決めて英単語帳をスカートのポケットにしまった。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい、ありがとうございます。学園長先生」

見た目と同様に静かに、それでいて儚げな声を光は出した。

「見た目もそうだけど、声もなかなか可愛い声じゃないか。ますます疑っちゃうね・・・どれ」
「ってちょっと!うわっ」

言いながらクラウドは光のスカートをまさぐって股間に手を伸ばしてきた。

「・・・ついてるな」
「あ、当たり前です!」
「ウチの学園じゃ当たり前じゃないんだよ。男子は英国人しか入学出来ないのが決まりだからね」
「・・・その面倒な決まりのせいでこんな格好をしてここに来ているんです」

顔を赤くしながら恨みがましく光はつぶやいた。

「決めたのはオレじゃなくて英国側だけどな。もっとも貴重な男子の魔道能力者を国外に放出したがる国も滅多にないか」

魔道士は女性社会である。魔力という才能を開花させることの出来る人間は限られているが、その大半は女性でありそれが常識である。
男性は魔力を持って生まれてくることがほとんどなく、稀に魔力を持って生まれたとしても自在に操れるようになるには人生の大半を費やさなければならないことが多い。
故に魔力を持って自在に操作出来る才能を持った男性は貴重であり異端な存在とされる。

「しかしお前さんは小さいな。年齢も偽ってるんじゃないのか?」
「・・・いえ、きちんと十六歳です」
「とてもそうは見えない」
「・・・学園長先生は、私の声の事もご存知なんですよね?」
「おう、だからこんなところまで足を運んでおしゃべりしてるんじゃないか」

かっかっかっ、と声を上げて笑う。

「この声の呪いを解く為にさまざまな魔法薬、解呪の儀式。有名無名関係なしに古今東西のものを試しました」
「知っている。間接的にだがオレも協力をしていた」

光は目を丸くした。初耳である。

「真由美の奴から相談を受けててな、薬の手配をしてやったり儀式のアドバイスをしたっけかな。あと専門家も紹介してやったしな」
「そうだったんですか・・・ありがとうございます」

光はしっかりと礼をいい頭を下げた。

「まあ呪いの内容を聞いたのはついこの間だ、お前さんの入学を認めるには理由を聞かねーことには納得は出来ないからな」

ニヤリと口元に笑みを浮かべながらクラウドはさらに言葉を紡ぐ。

「それに、呪いかどうか知らんが、とりえず力は見させて貰えた」

そういうと一冊の本を懐から取り出した。本の表紙に白い紙が貼ってあるのが見える。

「この本自体はただの文庫本だけどな、試しに誰にも読めないように思いっきり封印をかけてみたんだ」

パラパラパラ、と本を軽くめくる。普通の本にしか見えない。

「お前の声でこの本の封印は解かれた・・・って事で良いんだよな?」
「・・・はい」

光は視線を落としながら悲しそうに返事をした。

「この本はオレが全力で封をしたものだ、解けるのはオレ自身かオレ以上の『魔法使い』以外にはありえないんだがなぁ」

ぽいっ、滝つぼに本を投げ込みながらクラウドはため息をついた。
光自身が呪いと言っているモノ。幼少のころ、生まれたときから発症した特異な力である。
古来より封じられていた幻獣や魔獣、魔人に宝玉などとりあえず封印と呼ばれる類のものをその『声』ですべて解除出来てしまう能力である。
まだ自分自身に意思もなく、泣き声をあげることしか出来ないほどの幼い頃からこの力は光の声に宿っていた。そしてこの声は見境なくあらゆる封じられたモノを開放してしまう。
封じられているモノには封じられているだけの理由が存在する。そして現代社会においてそれは単純に危険に直結するものが多かった。

「薬も儀式も私の力を消すことは出来ませんでした。抑えることすらも・・・」

この言葉は光がしゃべればそれだけでこの効果は発揮されてしまい制御できないことを意味していた。
声自体を封印しようとしてもしゃべろうとしただけで封印は解けてしまう。自分自身を傷つけて喉を潰した事もあったが父に殴られてしまった為、それ以降やっていない。結局光は、極力しゃべらないように日々を過ごす事にしたのである。
少しの間が空いて、二人の間に沈黙が生まれる。クラウドは光の顔をまっすぐ見つめた。
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