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幕間章 勇者の弟子、アイレウスの葛藤

勇者の弟子、アイレウスの葛藤④

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あの老人が国崩しの主人ならば、もう国崩しは作動しないだろう。
ゴーレムというものはそういうものだ、持ち主による譲渡の儀式を行わないとゴーレムは新しい主人を持たない。
国崩しの危機が去った。そう思うと安堵できた、先生のお墓にもいい報告が出来そうだ。
ゴートさんも同じ意見らしい。
セイーリアは少し不服そうだったが、旅の途中で国崩しの噂は嫌というほど聞いていた。
自身がどう思おうとも、あれが危険な存在であることは理解してくれている。
メルは表情も言葉も乏しいからよくわからない。
テイツォは・・・たぶん何も考えていないだろう。いいのか?こいつ聖職者だろ。
気が抜けていたんだと思う。村の近くまでミドガルズオムズの存在に気づけなかった。
あいつらはでかくても蛇だ。こちらが気づきにくいギリギリの範囲でこちらを狙っていたのだろう。

くそ、油断した。
自分達は村の白壁の内側まで逃げることにした。大型の魔物や魔獣が出るため、ここの村の結界はかなり強力らしい。
目前に馬車が見えた。まずい!巻き込んでしまう。

「仕方ない!防御重視で戦闘だ!馬車が村に入るまで足止めする!」
「「「「了解!」」」」

仲間達も賛同してくれた。半年近くだが、死線を幾度も切り抜けたメンバーだ。
頼もしい!
セイーリアとメルフィが魔法で進行速度を落としてくれた。
テイツォは肉体強化の魔法で自分とゴートさんを支援。
自分とゴートさんは切り込みだ。
鱗が硬い!聖剣があれば切り裂けるかもしれないが、あれは先生の死後行方知れずだ。
腕力と肉体強化の魔法だけでゴートさんがミドガルズオムズを切り裂く。
流石だった。
負けていられない!
大蛇の鱗には硬い部分と柔らかい部分がある。
先生に教わった。
自分の攻撃も十分に通用する!

「怯んだ!いける!」

仲間達もこのチャンスに全力で支援してくれる!
自分の仕事はこいつに致命傷を負わせることだ!
顔面を剣で貫く!
しまった!浅い!!
剣を握ったまま頭から吹き飛ばされた!
ミドガルズオムズが口を大きく構えて待っている!
食われる・・・ここまでか!みんな・・・逃げてくれ!
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